つれづれぶらぶら

5月の反射炉ビヤ行きますよー!酔い蛍グループの皆さんにまた会えるかな?

劇場版『ゴールデンカムイ』

遅ればせながら『ゴールデンカムイ』の映画を観てきました。


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もちろん映画化の話はずいぶん前から聞いていたんだけど、あの漫画を実写化するのは困難だろうと思っていたもんですから、かなり不安があったんですよね。好きな漫画のイメージを壊されたらファンは悲しいじゃないですか、ねぇ(過去のあれやこれやを思い出しながら遠い目をする)

それでも、公開後の原作ファンの声は総じて高評価。意外と良かった、面白かった、キャストが神ってた、アシパさんの変顔も良かったぞ、などなどの声を聞いて、ほほう、それじゃいっちょ観に行ってくるかね、と岡谷スカラ座に向かったのでした。

 

そんでもって、総評としては、確かに面白かった、キャストが神ってた、原作のイメージどおりだった、アクションもVFXも素晴らしかった、とはいえ原作はさすがに越えられなかったかな、という感じ。

 

先にマイナス面の感想から言っておくと、やっぱりどうしても原作の持つギャグの要素はあまり表現できてませんでしたね。ギャグ要素はほとんど白石の登場場面に限られていた感じです。アシパさんの変顔とかも頑張ってたんだけどね。とはいえ、原作は、死ぬか生きるかという極限状態のシーンに大胆にギャグを放り込まれてたり、下ネタや不謹慎ネタも躊躇なく出てくるし、元ネタを知らないと「?」ってなるパロディも多かったりするんで、それをそのまんま実写で表現したらかなりお寒いノリになっちゃうと思います。

そもそも、漫画と実写では、画面から受ける印象もずいぶん変わりますしね。例えば、今回の映画だと、みたらし団子の串を頬に突き刺すシーン。あれは原作だと「鶴見さんマジやっべーwww」って感じの引き笑いを誘発されたんだけれど、それをそのまんま実写でやっちゃうとただただ痛々しい。思わず頬っぺたの筋肉がキュッッて引きつっちゃったぐらい、ちょいグロでした。そのあとの二階堂兄弟による拷問シーンも実写だとグロ味が増し増し。

というわけで、この点に関しては、まぁしゃーないという感じです。とはいえ、ギャグ要素のない金カムは金カムじゃないので、今後のWOWOW版に期待しておきましょうかね。例の「ラッコ鍋」やるのかしら観たいわ観たいわwww

 

ここからは良い評価。

やっぱ、キャストが、評判どおり良かったですね。

山﨑賢人くんは杉元を演るにしては線が細すぎるし顔が幼すぎるだろう、と思っていたのですが、観ているうちに気にならなくなってましたね。お風呂場のシーンでの鍛え上げられた筋肉にも、おお、しっかり身体を作ってきているな、と。

アシパさんは原作では12歳ぐらいの設定なので、山田杏奈さんだと大人すぎるじゃんと懸念していたのですが、これもまた観ているうちにさほど気にならなくなってました。山田杏奈さんは童顔だし、アシパさんは年齢の割に大人びている設定なので、こんな感じかなと。っていうか、ちゃんと変顔をやってくれたのが嬉しかったです。

漫画からそのまんま飛び出してきたのかと思うレベルでイメージどおりだったのは鶴見中尉と土方歳三。今回の映画は、予想以上に「鶴見VS土方」の構図をどーんと前面に押し出してきています。そして、鶴見中尉を演じた玉木宏さんも、土方歳三を演じた舘ひろしさんも、圧倒的な存在感でスクリーンを支配していました。もう今回の映画はこの2人が主役と言っても過言じゃないんじゃないかな。もちろんお2人とも大ベテランなので上手いのは当たり前なんだけど、なんつーかね、もう纏っているカリスマ性がキャラクターそのまんまで、ほんまヤバかっこいいっす。声もいいんだよねぇ。


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そのほかのキャストだと、白石を演じた矢本悠馬さんも良かったね。今回の映画のコメディ要素を一人で担っていた印象ですが、本当に飄々としたお調子者の感じがめっちゃ白石でした。格子戸からにゅるんと出てきた勢いのままでズザーッと滑ってくるのとか、もうめっちゃ楽しかった(笑)


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それはそうと、WOWOW版では例の「白石のゴールデンシャワー」やるんだろうか(笑)

 

言及している人が少ないから私が言うけど、私が「お!これこれ!」と思ったのは、マキタスポーツさんが演じた後藤竹千代ですよ。最初に金塊の話を杉元に教えた酔っ払いのおっさんね。マキタさんはこの手の「ついうっかり余計なコトをしちゃうおじさん」の役どころを演じるとめちゃくちゃハマるよね。もう初っ端から酔っぱらってて、ぼやーっとしながらベラベラ喋っちゃう。んで、目が覚めてから自分のしでかしたことの重大さに気づいて慌てて対処しようとするも、既にその時点では死亡フラグががっちり立ってしまっている。こういうキャラクターにマキタさんを抜擢したキャスティングが素晴らしいですよ、うんうん。

 

映画全体の話。

序盤にけっこうしっかり長めに二百三高地の描写があったのに驚き。アクションが得意な監督さんとは聞いていたけど、こういった「戦争」をガチめに描くのは難しかったろうと思います。誰かが「英雄」に見えてもいけないし、死は死として誤魔化さずに描かなきゃいけないし。初っ端でこういった重めの描写が長めにあったことで、全体がよりシリアスな空気をまとった気がしますね。ま、杉元の背景を描くにはどうしても二百三高地のエピソードが必要になりますし、今後のWOWOW版でもしばしば振り返ることになるであろうシーンですから、あらかじめスクリーンでしっかり見せておこうという判断だったのでしょうかね。

今回の映画は漫画の序盤部分(3巻ぐらいまでかな)なので、尾形とか谷垣とかのメインキャラクターはまだその実像を明らかにしていない段階。っていうか、序盤の尾形ってこんな感じだったっけねー。もうすっかり尾形には「病んデレヒロイン」のイメージがついちゃってるもんで、こんな普通の鶴見さんの部下だった時代があったことを忘れかけておりましたよ。谷垣も、今はまだ普通に兵隊さんだけど、この先に「ムチムチセクシー担当(主に胸毛)」になる日が来るわけで、大谷亮平さんがこの先ますます牝牛のようにムッチムチになるのかと思うと、むっふー(セクハラ的な視線を送る)

あとは、チンポ先生こと牛山辰馬も非常に原作のイメージどおりだったので、今後のアシパさんとの関係性が楽しみです。「お嬢」って呼ぶとこが好きー。牛山はぶっ飛んだ性格のキャラが多い金カムの中で数少ない常識人だし、スーツが似合うカッコイイおじさんなので、さらなる活躍を期待します。

VFXは、さすが白組が参加しているだけのことはあって、全体的に素晴らしいクオリティでしたね。レタの純白の毛が月の光を浴びているところなんか、うっとりするぐらい綺麗。


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というわけで、事前に「原作クラッシュされたらどうしよう」と考えていたのが懸念に終わったぐらい、安心して観ていられる映画でした。とはいえ、物語の本編はこれからなので、このクオリティのままWOWOW版を完走できるのかという次なる懸念もあります。ま、期待して待っていましょうかね。

……とか何とか言っているけど、私はWOWOWには加入していないのだよ(;^ω^)ま、おそらくは『殺意の道程』のときのように劇場公開版も編集してくれることと思うので、その日を楽しみにしておくことにします。とりあえずラッコ鍋は必ず見たいので、飛ばさずに実写化してください。相撲すっか!!!(笑)

映画とクラフトビールのペアリング

今回のブログのテーマは【ChatGPT】に提案してもらったものです。

 

ふと、「皆もすなるChatGPTといふものを私もしてみむとてするなり」と思い立ちまして、かなり遅きに失した感もあるけれども、ブラウザ版にアクセスしてみたんです。

でも、何を聞きゃあええんかのう。

とりあえず、「ChatGPTに愚痴を聞いてもらうと、気持ちよく褒めてくれるらしい」という噂を耳にしていたので、最初は、まぁ、仕事が多くて疲れてます、書類の提出期限を守らない人が多くて困ってます、みたいな感じで話してたんですね。そしたら本当にね、あなたはとても責任感があるのですね、よく頑張ってますね的な感じで褒めちぎってくれるんですね。しょせんはAI、これはテンプレの文章を表示しているに過ぎないんだわ、とは充分に理解しているんだけれども、そうは言っても褒められてイヤな気分にはならない。おう、なかなかやるやん、ChatGPTの兄ちゃん、のう。

愚痴を聞いてもらうのは早々に飽きてしまったので、何か違うことを尋ねてみようと思ったのでした。そういえば、ChatGPTはアイデアの提案も得意だって話だったよな。そうだそうだ、そういえば最近このブログのネタがマンネリ気味だなぁって感じてたんだった。ブログのネタ出しをやってもらおう、そうだそうだ、そうしよう。

「個人ブログの記事のテーマを提案してください」と話しかけてみると、普段あなたが興味を持っていることは何ですか、と尋ねてきたので、「いつもはだいたい、映画、プロ野球クラフトビール、料理、育児、読書、アニメ、特撮あたりについて話していることが多いです」と返してみると、たちどころに、本当に瞬く間に、5つぐらいのテーマを提案してくれたのでした。うおっ、えらい速いやんけ兄ちゃん。

そのテーマの中には、いまいちピンと来ないものや、私には書けそうもないものもあったんだけど、どれもブログのテーマとして成立していて、おお、テーマを見ただけで読んでみたくなるじゃんか、と深く感心したのでした。

とりわけ、提案されたテーマのひとつ、「映画とクラフトビールのペアリング」に強く興味をそそられました。その切り口は思いつかなかったな、やるやんけ兄ちゃん。

ゆーて、しょせんはAI、テキトーに私の挙げた単語を組み合わせただけやろ、という気もしたので、ちょっとサンプル記事を書いてみておくれ、と頼んでみたところ、これまた一瞬のうちに、サラサラッと2~3の有名な映画名を挙げて、それに合うクラフトビールのスタイルをペアリングしてみせたのでした。

とはいえ、サンプルに挙げられた映画(ハリウッド映画が多かったかな)はどれも観ていないものだったので、そこで提案されたペアリングが適切であるか否かの判断が私にはできない。疑り深い私には、まだまだChatGPTの兄ちゃんがテキトーにハッタリで喋っている可能性を捨て切れずにいるのでした。かくなるうえは、私の土俵の上に上がってきてもらおう。そう、私が生涯のベストワン映画と信じているあの名作に、ふさわしいビールを持ってきてもらおうか。話はそれからだぜ、兄ちゃん。

you

映画「第三の男」に合うクラフトビールの種類を見つくろってください。

 

ChatGPT

「第三の男」はノワールな雰囲気の映画ですね。その雰囲気に合うクラフトビールとしては、濃い口当たりのスタウトやポーターがおすすめです。黒ビールの深い味わいが映画の緊張感と相まって楽しめるでしょう。

兄ちゃん天才やな!

回答の速さもさることながら、ちゃんと『第三の男』が緊張感のあるノワール映画であることを知っていて、そのうえでノワール映画には黒ビールが合う、と判断できている。すげえな兄ちゃん。しかも、スタウトだけじゃなくてポーターもちゃんと書き添えるところが憎いじゃないか。

うーむ、確かに、『第三の男』には黒ビールが合いそうだ。ここで「ヱビス プレミアムブラック」を指定してきたならウケ狙いが過ぎるぜって感じだけどな。ちなみに「ヱビス プレミアムブラック」のビアスタイルはラガー系の黒ビールであるシュヴァルツなんだってさ。まぁ、ゆーて、ヱビスはそもそもクラフトビールじゃないしなー。

……脱線した。

というわけで、この「映画とクラフトビールのペアリング」というテーマは、ブログのお題としてなかなか良さそうだ、と思ったのですよ。っていうか、このテーマで書かれたブログを私が読みたいので「みんなのお題」に投稿しておこう、そうしよう。世の中のクラフトビールと映画をこよなく愛する人々は、お題「映画とクラフトビールのペアリング」のキーワードを付して、どしどし記事を書いてってくださいね。読みたいっすお願いしまっす。

自分の好きな映画にどのクラフトビールを合わせようか、っていう書き方でもいいし、逆に、美味しいクラフトビールを飲みながら、今どんな映画が観たいかな~って考えてみるのも楽しそうですね。そんで配信やレンタルで合いそうな映画を探して飲みながら観てみたよ、なんていうのも面白そうですね。ビールの感想と映画のレビューがいっぺんに読めるなんて最高じゃないですか。

 

さてさて、言い出しっぺとしては、自分もこのテーマに沿って書いてみるかな。

まずは『第三の男』に合うクラフトビールを、具体的な銘柄まで決めてみようっと。

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この映画の、全体的に曇った雰囲気────もちろん古いモノクロ映画だからピーカンの真っ青な空なんてのはないわけなんだけどさ、そういう意味じゃなくて、第二次世界大戦直後の占領下のウィーンの、暗くて冷え冷えとした石畳の雰囲気とか、親友の悪事がおぼろげに見え隠れする不穏な感じとかが魅力的なんですよ。そう、黒ビールは黒ビールでも、スッキリとした味わいのものじゃなくて、ちょっとクセのある感じのものがいいかな。そう、例えばちょっとスモーキーな感じとか……。

というわけで、私が『第三の男』にペアリングする一杯は、カマドブリュワリーのスモーク・ポーター、「Holy Smoke」!これでどうだッ!

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そうそう、そういえば、ChatGPTの兄ちゃんなんだけどさ、天才かと思ったんだけど、そこはやっぱりAIで、得手不得手がけっこうあるっぽい。『ドライブ・マイ・カー』をアクション映画だと言ってみたり、あと、アクション映画には何でもアメリカンIPAを合わせようとしてきたりして、兄ちゃん、まだまだ精進が足りねぇな、フッ……なんて思ってみたり(自分のことは棚に上げて)。

というわけで、『ドライブ・マイ・カー』に合うクラフトビールを自力で考えてみよう。うーん、どんなのがいいかな。

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この映画の味わいとしては、愛する人を失った・裏切られたという「苦み」が欲しいところ。でもアメリカンIPAみたいな軽くて華やかなものはちょっと違うな。どっしりとした麦芽の味わいがあって、ホップの香りは控えめで、アルコール度数は高めのほうがいいかな。色は濃い目だけど黒ビールって感じじゃなくて、もうちょっと複雑な感じ……と考えると、例えば、ヤッホーブルーイングのバレルエイジドバーレイワイン、「バレルフカミダスNO.57」なんてどうでしょう?

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最近観た映画だと、やっぱ『カラオケ行こ!』は面白かったな。

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ヤクザと中学生のカラオケ修行という「ありえへん」物語に、猥雑な大阪のアンダーグラウンドな雰囲気。そして目を閉じれば思い出す、キティの兄貴の「オレンジジュースでええか?」(笑)ときたら、これはもうあれしかないやんな。Derailler Brew WorksのミックスジュースIPA、「新世界ニューロマンサーや!

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とりあえず、サンプルとしてはこんな感じですかね。これからも何か思いついたら続きを書いてみようと思います。でも個人的には皆さんのペアリングが見たいので、ぜひぜひ、クラフトビールと映画を愛する皆様のご参加をお待ち申し上げておりまする……。

『カラオケ行こ!』ふたたび

前回の記事の続き。

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で、国立駅からまた立川駅に戻ってきたわけなんですが、そんでもって、いったい何の映画を観に来たのかというと、先月観た『カラオケ行こ!』をもういっぺん観に来たわけなんです。

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いやー、あれ以来、頭の中でずーっと『紅』が流れ続けてましてねぇ。もちろん原作漫画の『カラオケ行こ!』と続編の『ファミレス行こ。(上)』、それに映画のシナリオブックまで買って読んだんですが、そうすると原作と脚本の違い、脚本と完成した映像の違いなど、色々な部分を再検証したくなりまして、こりゃもういっぺん観るしかねぇなと。つーか、端的にもっぺん観たいなって、ええもう、早え話が観たかったんすよ。

ネット上の評判もおおむね好評ですね。Filmarksの評価点が4.1で、観た人の感想を読んでいると、まぁ熱っぽく語っている人の多いこと多いこと。何度もリピートして観てます、という完全に沼ハマっちゃった人もけっこういらっしゃるようで。都内では未だにチケット完売の回もあったりして、人気の高さが窺えますね。

とはいえ、そろそろ上映終了になる映画館も出始め、上映回数も1日1回、しかもレイトショーonlyみたいな上映館も増えてきたことから、観に行くんなら早いうちが良かろうと思いましてですね、昨日(17日)に立川シネマシティ(シネマワン)に行ったわけなんですよ。なんで立川を選んだかっていうと、タイムテーブル的に一番便利が良かったことと、さらに【極音上映】だったからです。あの『紅』を、めっちゃええ音で聴きたい、そう思ったからなのです。

 

前回の記事は、封切直後だったこともあってネタバレを極力避けて書きましたけど、今回は語りたいこと全部書きたい。あれもこれも喋らせてくれ~!ってなわけで、以下、映画『カラオケ行こ!』及び原作漫画『カラオケ行こ!』『ファミレス行こ。(上)』のネタバレ満載でございます。ネタバレを避けたい方は、このあたりでブラウザバックのほど、よろしくお願い申し上げます

もういいかな。では。

 

前回、映画を観に行った時点では原作漫画をほとんど読んでいなかった(序盤の試し読み程度)ので、どこが原作どおりでどこが映画オリジナルなのかが分かっていなかったんだけど、原作を読んでみると、予想以上に映画オリジナルの部分が多かったんですねぇ。

私が一番笑った、聡実くんの両親が「愛を与える」シーンは、原作にあると思い込んでたんですよね。だって、あのすっとぼけたテンションの低い感じ、いかにも和山やま的じゃないですか。1ページのコマ割りが容易に想像できますもんね。

聡実くんが(分からん……、愛は与えるものってなんなん……)とかモノローグで言いながら食卓でご飯を食べている。ふと、目線を上げる聡実くん。母親がぺりぺりっと剥がした焼き鮭の皮を「あげる」言いながら無造作に父親のご飯の上に載せている光景。表情はほとんど変わらずに、ほんの少しだけ目を見開く聡実くん。ご飯の上の鮭の皮のアップ、そこに(愛は……与えるもの……?)という追いモノローグ。

こんな感じの1ページがあるもんだと思ってたんですよ私は。ないんですね原作には。にもかかわらず完璧に和山ワールドだというね。野木亜紀子さんすげえ。

和山ワールドといえば、合唱部の描写のほとんども映画オリジナルなんですけど、あそこにいる女生徒たちが『女の園の星』っぽいなと思っていたら、シナリオ集に収録された野木亜紀子さんのインタビューによると、やっぱりそこは意識したんだそうで、山下監督にもそのようにイメージしてくださいと伝えてあったんだそうで。こういう細かい部分をちゃんとスタッフ間で詰めてあったから、シーンとしての違和感がなかったんですね。副部長の中川さんの「わーだー」っていう言い方とか、周りの女の子たちが「中川なにしてんの」「子守り」「えらいなー」って呆れたように見ているのとかね。

 

逆に、これは映画オリジナルだろうと思っていたら原作にあって驚いたのは、狂児の誕生日ですね。昭和55年5月5日。ああ、綾野剛さんだから「ゴー」とか仮面ライダー555(ファイズ)にひっかけてんのかな、ってキャストありきのメタ設定だと思ってたんですけどね、しっかり原作どおりでビックリしましたとも。

 

原作との違いという点で挙げるなら、合唱部の後輩の和田くんのキャラがかなり違うんですね。原作では聡実くんからは一歩引いたようなスタンスで、どちらかといえば客観的な視点で聡実くんを見ている大人びた後輩って感じ。でも映画では聡実くんへのリスペクトを相当にこじらせまくった、思春期真っ盛りの潔癖症の直情少年って感じで、全然違うんでやんの。でも映画としては、この和田くんのキャラがものすごくウザ面白かったっす。まだ精神的に幼すぎて、自分ではなんでも分かっているつもりだけど、実は何にも見えていない。この映画自体が「聡実くんが子どもから大人になっていく物語」なんだけど、和田くんの存在はその聡実くんの前身である「子ども」の投影であって、それによって物語の厚みを増しているわけなんですね。

 

原作と映画の違いを挙げていたらキリがなくて、個々の台詞は原作どおりだけど、その台詞を言っている場面が違うのとかもけっこうたくさんありました。

例えば、聡実くんが「狂児のアホ!」と怒鳴るシーンは、原作では、聡実くんが「宇宙人」に捕まって狂児に助けられた直後。何をしてもうまくいかない苛立ちや自分の未熟さにイライラして、わけもわからず狂児に当たり散らしてしまう、というシーンでした。それが映画では、合唱部のトラブルに巻き込まれて三角関係のような形になってしまっているところを狂児に見られ、青春だねとニヤニヤ言われたことに腹を立てたことに起因して怒鳴る、というシーンになっています。

比較すると、映画の聡実くんの怒りのほうが筋が通っています。逆に言うと、原作の聡実くんのほうがより不安定です。これは先ほど述べたように、聡実くんの中の「子どもっぽさ」は、映画では和田くんに半ば投影されていることによるものではないでしょうか。

では、映画において、聡実くんが「宇宙人」に捕まって狂児に助けられた直後のシーンはどうなっていたかというと、屋上で狂児と語り合うオリジナルシーンになっています。このシーンは映画の中でもとりわけ美しく、変声期によってソプラノボイスがうまく出なくなってしまったという聡実くんの苛立ちが、狂児の言葉によって救われるという内容になっています。このシーンの2人の親密さは実にいいですね。シナリオでは「刺さってもうた矢、抜いて~」という台詞はないので、あれはアドリブなんでしょうかね。このシーンすごく好きなんですけど、なんと公式が切り抜き動画をUPしてくれたっていうね。嬉しいですね。皆も好きでしょ、このシーン。ね。


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ちなみに、「あー、ひっさびさやわー、光合成」という台詞もシナリオにはありません。まぁ、これは最初に映画を観たときから、絶対アドリブやろなと思ってたんで、やっぱそうですよねという感想しかないんですけど(笑)

 

ところで、色んな方のレビューを読んでいると、「この漫画/映画は【BL】か否か」という議論も巻き起こっているようです。これね、私も迷っているところなんですよね。どちらかと言えば、原作のほうがよりBLっぽさがあります。なんせまぁ、『ファミレス行こ。』の上巻の終わり方が、まさかの聡実くんからのバックハグという衝撃的な展開だったもんで、えええええええってドキドキしちゃいましたよ。あれを見た後でもう一度『カラオケ行こ!』から読み返すと、あれもこれもBLっぽく読めてしまう。

映画のほうは、聡実くんにやたら身体をベタベタ近づけたがる狂児がね、特にあの「狂児さんの声域に合う曲リスト」を説明している聡実くんの横顔を愛おしげに見つめているところとかね、綾野剛さんの色気ダダモレでしたけれども、それでも、BLというよりは青春映画っぽいよな、と。そう思えるのは、やっぱり生身の齋藤潤くんの純粋さ、穢れのなさ、潔癖さによるものなのかなぁと解釈してみました。なんかね、性的な意味づけをすることに躊躇してしまう。まだ君はそのままでいて、オトナの視線のフィルターに歪められないで、という母親のような気持ちになってしまうっつーか。

ところで、『カラオケ行こ!』の原作では、全編を通じて聡実くんの心の声(モノローグ)が多用されているのですが、ラスト近くで、そのモノローグは、聡実くんが高校の卒業文集に書いた作文であることが判明するわけです。要するに中学3年から高校3年までの3年間、聡実くんはずっと狂児の記憶を反芻していたってことですよ。「追いかけ続けてしまいそうで怖い、記憶の中のあんたは俺の心の中で光ってるで……ピカピカや……」を3年間、ずっと。多感な時期の中高生に、それはごっつキツいで。

まぁ、こんな蛇の生殺しみたいな3年間を送っていたからこその、『ファミレス行こ。』でのあの屈折した態度になるのかもしれませんけど。『ファミレス行こ。』はモノローグがほとんどないから、聡実くんが何を考えてるのかが分かりにくいんよなー。下巻では幸せになってほしいけどなー、聡実くん。なー。

 

映画の話に戻ると、シナリオ的に上手いなと思ったのが、合唱曲とか古い映画とかにそのシーンの聡実くんの心情を託しているところですね。冒頭のシーンで合唱部が歌っている『影絵』、歌う聡実くんの顔のアップ、そこの歌詞が「戸惑いながら覚悟している」。この歌詞の意味が、その後の映画の内容に響き合ってくる仕掛けなのですね。変声期によって歌えなくなってしまうことや、やがて来る大切な誰かとの別れを、ここで予兆という形で示唆しているわけです。また、白米の上できらめく鮭の皮のクローズアップには、『心の瞳』の「愛すること/それがどんなことだか分かりかけてきた」という歌詞が被さり、これが後のげんきおまもりに繋がっていくわけなんですが。

こういう、台詞で何もかも説明してしまわないで、観客の心の中で物語を完成させるように上手く手助けをしてくれる脚本や演出が、いいなと思ったところですね。あんまり何もかもきっちり物語の中で説明されちゃうと、空想の余地がなくなっちゃうじゃないですか。観客/読者が、物語を観/読み終わった後で、ひとりひとりの心の中で、あのとき彼はなんであんな表情をしていたのかなとか、もしかしたら彼はこう考えていたのじゃないのかなとか、そんなふうに妄想を繰り広げるのが楽しい、それこそが物語の醍醐味なのであってね、この映画はその仕掛けが本当に上手だったから、これだけの人々が沼にハマり、劇場に足しげく通って何度でも物語を反芻しようとしているんじゃないかと思いますね。

 

ところで、最初に述べたとおり、今回は立川シネマシティの【極音上映】で観たわけなんですが、その威力が最大限に発揮されたのは、やっぱりエンドロールの『紅』でしたよ。


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極音上映だと、Little Glee Monsterの歌声よりも、高校生の合唱のほうが強調されて聴こえますね。特に男声パートの低音の厚みがすごかった。いい曲やなぁ、『紅』って、と胸にジーーーーンと響いてきちゃいましたよ。いやぁ、音響が良いのって、やっぱたまりませんなぁ。

 

えーと、えーと、まだまだ語りたいことはいっぱいあるんだけど、綾野剛さんのあのセクシーな低音で「……ね?」って耳元で囁かれたらそらやられるわなぁとか、さすがに映画では「女も聡実くんも乗り心地がよろしいんでしょうなぁ」の台詞はカットされてましたなぁとか、映画を見る部の栗山くんのテンション低い感じも和山テイストが上手く表現されてたよねとか、えーと、うん、ね、話し出すとキリがないんだけどね、やっぱりこの映画最大の見せ場は、聡実くんの歌う『紅』ですよ。

あのシーンは、今回もやっぱり涙腺を直撃しましたよ。あの変声期の少年にしか出せない、魂をぶつけるような歌声はたまりませんね。収録当時に中学3年生だった齋藤潤くんの、この二度と巻き戻せない「一瞬」を逃さずに映像に刻み付けた、その奇跡のような一瞬が、もうどうしようもなく尊くて、観客ひとりひとりの胸の中でいつまでも光ってるわけなんですよ、ピカピカや……。

 

というわけで、4年後ぐらいには、成長した齋藤潤くんと綾野剛さんの『ファミレス行こ。』が上映されたらいいなぁ、と切に切に祈っておるところです。やだもうあのバックハグとかどうなっちゃうのかしら。あああ。妄想の沼に落ちちゃいそう……。