いやー、焦らされました、ホントに今年は焦らされました。
うん、カープの話ね。
今季は去年ほど「圧倒的に強い」という感じではなくて、特に投手陣の不調が目立つというか、薮田とか今村とかジャクソンとか、去年の屋台骨の面々が調子を崩してしまった。
野手のほうも、丸が怪我で離脱したり、キクや広輔が打撃不振に陥って下位打線に組まれたり、色々と不安材料があった。
けど、ほんとカープは不思議なんだけど、その際に抜擢された「代役」が、必ず活躍すんの。これが本当にスゴイ。
…いやまぁ、それは言うまでもなく、首脳陣やスカウト、コーチ陣が、先々のことまで熟慮してチーム編成をしているってことに他ならないわけよ。
昔からそうだった。お金がないから、無名の選手をドラフトで拾って、ひたすらしごいて、しごいて、しごいて、一流の選手を「作っていく」。それがカープの伝統芸、“育成力”。
日本球界で唯一、ドミニカにアカデミーを持ち、経営が苦しかった時代にも、決してそれを閉じようとはしなかった。
他の球団が高額オファーでメジャーから有名選手を引き抜いている頃、カープは無名のドミニカンを練習生として連れてきて、日本人と同じようにしごいていた。
他球団に嗤われながらも、ただひたすらに種を蒔いて、ただひたすらに育て続けた。
それが、ここへきて、全部が全部、一気に開花した、そんな感じだろうか。
緒方が惚れ込み、タクローと河田と東出が手塩にかけて育てた野間が、ついに開花。
去年の怪我から復活した誠也が四番に定着。
安部の怪我による離脱の穴を、天才的バットコントロールの西川龍馬が埋めた。
マエケンを継ぐ次期エース、と期待されつつもなかなか成績が上がらなかった大瀬良くんが、ジャイアンツ菅野を圧倒する力投を見せ。
2年目のアドゥワ誠くんは1年間ずっと1軍のブルペンに立ち、目覚ましい成長を見せた。
バティスタ、メヒアなどのカープアカデミー出身者が次々と台頭し、今季昇格したフランスア投手は苦しいブルペン事情の救世主となった。
あまりにも全てが一斉に花開いたから、まるで魔法のようだ、奇跡だとつい思ってしまうんだけど、振り返ってみれば、それは奇跡でもなんでもなく、積み重ねてきたものの厚み。
そんなわけで今季は、特に誰かがスゴイというわけでもないのに、シーズン開幕からほぼ首位の座をキープし続け、交流戦とかもあんまりパッとしなかったのに、全然不安はなかった。
いやホント、ほんの5年ぐらい前までは恐怖の9連敗とか、私も毎日公園で四つ葉のクローバー摘んでお祈りするぐらい不安で不安でたまんなかったのにさ。
あー思い出すなー、ザキがクローザーに抜擢された頃のこと。9回に中﨑ってコールされただけで悲鳴が上がって、恐怖に怯えながらラジオを聴いてたこと。
それが今では遠い昔のようです。
え、5点差で負けてる?今、何回?なーんだ、まだ6回裏じゃん、じゃあまだまだ勝てるよ、まぁ黙って見とりんさい。
そんな言葉がファンの口から自然に出てくる、信頼と実績の我らがカープ。
んーーーーー、だからねーーー、優勝直前に足踏みしたって、焦らされたって、不安はなかったのよーーーー。ホントよーーーー。
私が吉祥寺で肩透かしを食わされたのが月曜日。
その次の火曜日もベイスターズに負けて、そしてスワローズはドラゴンズに逆転勝ちして、マジックは減らず。
その時点で、悟ったのよ。
一昨年は2位のジャイアンツとの直接対決の初日に、東京ドームで優勝。
去年は2位のタイガースとの直接対決の初日に、甲子園で優勝。
じゃけん、カープは結局のところ、ガチンコ対決が性分なんじゃろう。下位のチームに勝つとか、他のチームの負けを願って待つとか、そういうのが好かんのんじゃろう。
ぶちのめすんなら、直接、この手でやっちゃるわいやァ、と。
つまり、さんざん焦らされとったのは、要するに、スワローズがマツダスタジアムに来る日を待っとった、ちゅうことなんじゃな?
それを証明するかのように、昨日までは下位のドラゴンズやベイスターズにさんざん苦戦させられてた打線が、今日はめちゃめちゃ打ちまくる。
いや、全員が全員すばらしかったんだけどさ、今日はやっぱり九里くんよね。
大瀬良くんと同期入団の、ドラフト1位・2位コンビ。おっとりした性格で優等生の大瀬良くんに対して、反骨心をむき出しにした元ヤンキーの九里くん。正反対の2人なんだけど、ずっと仲良し。
でも、次期エースとして期待の高い大瀬良くんに対して、どっちかっていうと九里くんは便利屋ポジションというか、世間的には少し印象が薄くて。
その九里くんが、今日は過去最高のピッチングだったんじゃないかな。
ラジオ中継だったんだけど、ノーアウト満塁の絶体絶命のピンチで、あのバレンティンを相手に果敢にも内角をえぐってみせたピッチングには痺れたわぁー(≧▽≦)
ラジオ実況のアナウンサーさんも、今日はこのまま九里に投げさせたい、完封勝利を収めさせたい、と何度も口にしてたぐらい。私も正直そう思った。
だけど、解説の安仁屋おじいちゃんが「それはダメ。胴上げ投手は中崎にせんといけん。1年間クローザーとしてマウンドに上がった投手ですからね」と。うん、まぁ、そうか。そうだよね。
試合はカープの一方的な強さのまま進み、あ、いや、途中いくつか危ないシーンもあったんだけど、そのたびになぜかラッキーなことが起こって、運がことごとくカープに味方する。
安仁屋さん曰く「野球の神様が、そろそろ決めい、と言うとるんですよ」。
9回のマウンドはやっぱりザキ。
危なげなくぽんぽんと2アウトを取って、最後のバッターはスワローズのスーパースター“Mrトリプルスリー”山田哲人。
一昨年も去年も、最後の打球はショートゴロ。広輔がさばいて、1塁の新井さんに送って、試合終了、という流れだったけど、ザキ曰く「本当は最後は三振でしとめたかった」のだそう。
今年はそのとおり、山田哲人のバットが空を切って、三振!ゲームセット!カープ優勝!!!!!
カープにとっては、球団史上初の三連覇。
これスゴイことよ、あのコージやキヌさんの時代にも成し遂げられなかったんだもん。
っていうか、セ・リーグで過去に三連覇以上を成し遂げたのが、そもそもジャイアンツしかいないというね。その偉業を、お荷物球団と呼ばれたカープが成し遂げるという、この快感たるや。
まぁ、何はともあれ祝杯じゃい。
赤のスパークリングワインで、ひとり、静かに、乾杯。
親友のMさんはご夫婦で広島市内に繰り出してるとのことで、今から本通りで延々と続くハイタッチの列に加わってくる!号外もゲットしてくるね!と嬉しそう。
兄貴やラギさんからもお祝いメールが次々と。
父からは「カープが優勝しましたよ~」と、のんびりした口調の電話。いや父さん、そりゃこっちはとっくに知ってるってば。明日の中国新聞と広島版のデイリースポーツを買って送ってちょうだいと、おねだり。
テレビ中継は見れなかったけど、広島の民放3局が記者会見とビールかけ、選手インタビューの様子をネットで無料配信してくれるとあって、3つ同時に視聴。
もちろん今年もRCCラジオの特番は聴く。深夜に及ぶ歓喜の宴に、しばし酔いしれる。
……でもまぁ、緒方監督が言ってたように、これはあくまでも「通過点」に過ぎないんだよな。
一昨年は日本シリーズで負けて、去年は日本シリーズに進出することすらできなかった。
いつまでも「カープは短期決戦に弱い」と言われ続けるわけにゃーいかんわけで、そんなこた緒方が一番よく考えとるわけで、じゃけん、歓喜の宴に酔いしれるのは今夜だけ。
明日からはシビアな、CSと日本シリーズに向けた戦力の掬い上げ/ふるい落としという作業が続く。誰がアピールできるのか。短期決戦のラッキーボーイとなり得る選手は誰だ。
そして、新井さん。
ベンチの最前列で誰よりも大きな声でチームを鼓舞する“みんなのお兄ちゃん”と、野球をやれる日は、もう残り少ない。
だから、1日でも長く。CSなんかじゃ終われない。
日本一のフラッグを掲げて、誰よりも嬉しそうに笑っている新井さんの姿を見るまでは、まだまだ、今季のカープは終われないんだから。