東映特撮YouTube公式チャンネルでは、過去に放映された仮面ライダーや戦隊ものの作品を定期的に数話ずつ無料公開してくれるんだけど、今ちょうど『仮面ライダーディケイド』の第31話(最終回)が公開されてるのね。
平成仮面ライダーファンの皆さんならよくご存じの話なんだけど、この最終回は仮面ライダー史上でもかなりの問題作で、2009年8月30日の放送終了後に苦情が殺到したというシロモノ。
なぜかというと、
最終回なのに、物語が終わらなかった(;゚Д゚)
そして、
「続きは劇場版で!」って(;゚Д゚)
うっそおおおおおおん(;゚Д゚)
ちなみに、東映の白倉プロデューサー曰く、「続きは劇場版で」と言ったつもりはなくて、たまたま最終回の最後に映画のCMが流れちゃっただけだよ、そして、ディケイドの物語はちゃんとあれで終わっていて、第1話に戻る円環構造なんだよ、という説明をしていらっしゃるのだけれど、いやいやいやいやいやいや、あの時点でそんなふうに感じるのは無理っすよ白倉さん。少なくとも私と旦那の開いた口は塞がらなかったわ(;゚Д゚)
そもそも『仮面ライダーディケイド』という作品そのものが、仮面ライダーシリーズの中では不憫な異色な作品であったのだ。
それまで、仮面ライダーと戦隊シリーズはともに毎年2月に始まり翌年1月に終わるという1年間(4クール50話前後)の放送スケジュールで動いていたものを、玩具販促側の都合で半年ずらすことになり、そのために『ディケイド』は8か月(31話)という他より短い作品になってしまった。
また、ゲームセンターなどで稼働するカードゲーム筐体『仮面ライダーバトル ガンバライド』の販促を目的とした企画でもあったことから、ディケイドは過去の平成ライダーの世界を旅する仮面ライダーで、それら全てのライダーに変身できるという能力を持つこととなった。
だから、予告を聞いた時はすっごく喜んだよね。「過去の全ての仮面ライダーが登場するの?タケルくんやヒロくんやオダジョーも出るの?」とワクテカしたもんだけど、実際には過去のオリジナルキャストはほんの一部しか出演せず、それぞれの仮面ライダーの世界もオリジナルとは異なるオルタナティブ世界だったりした。がっかり。
ただ、そんな不憫な作品であったにもかかわらず、ディケイド自体は愛すべき作品であったのだよ。少なくとも私はめっちゃ好き。
何が可愛いって、第1話の
井上正大くんの演技がめっちゃ下手くそだった(;^ω^)
いやいやいやいやいやいや、ディスってないディスってない。新人俳優の登竜門と呼ばれる仮面ライダーにおいて、だいたい第1話の主役俳優は演技が下手。最初から演技できてたのは電王の佐藤健くんぐらいのもんで、カブトの水嶋ヒロくんも第1話はとっても微笑ましい演技をしていたものよ( *´艸`)
だから、そこがいいんだよね。演技もろくにできてない俳優を東映の鬼監督陣が1年間みっちりしごきにしごき上げて、だんだん演技が上手くなっていく過程を眺めるにも東映特撮の醍醐味なんである。
今では牙狼シリーズやテニミュなどで精力的に活躍している井上正大くんだけれども(YouTubeの銀岩塩チャンネルも面白いよ)、この頃の「トオリスガリノ、仮面らいだーダ」というガチガチの棒読み台詞が初々しくてたまらなく愛おしい。
で、ディケイドは「平成仮面ライダーの世界を破壊する」という宿命を持ち、彼が通りすがっていった世界は消滅してぺんぺん草も生えないという仮面ライダー界の疫病神、すなわちトリックスター的な存在なわけで、それがゆえに他の仮面ライダーから忌み嫌われ、全ての仮面ライダーが殺し合う「仮面ライダー大戦」を引き起こす原因になってしまうわけなんだけど。
ただ、実際には30話までの物語でディケイドこと門矢士(かどやつかさ)はそれぞれの仮面ライダーの世界を救いつつ旅を続けていて、平穏に物語が終わりそうな雰囲気の中での、さて皆さん、やってきましたよ、問題の最終回が。
せっかく頑張って全ての世界を救ってきて、ラスボスのアポロガイストも倒したっつーのに、最後の戦いを終えたとたんに全ての世界が消滅していく。あっけにとられる士の前にいきなり紅渡(くれないわたる:仮面ライダーキバ:なおオリジナルキャスト本人の瀬戸康史)が現れて「あなたが悪いんですよ、あなたがそれぞれの世界をちゃんと破壊してこなかったせいで」みたいなクレームめいたバッドエンド宣告。
はァ?(;゚Д゚)
おい渡、お前さん第1話で「すべての世界を救ってください」って頼んできた張本人じゃねぇか。そんときにちゃんと「世界を救う=破壊する」って言ったか?(第1話も無料配信中なので確認)…………言ってねぇよ、曖昧な言い方しかしてねぇよ、おい。
で、その言葉と同時にいきなり始まるライダー大戦。過去の平成ライダーに襲われまくるディケイド(そしてなぜかただうろちょろしているだけのカブト)。そして仲間であるはずのクウガやディエンドまでもが敵に。
絶望的な光景の中、ヒロインの悲痛な叫びが響く。
「ディケイドーっっっ!」
終
「ライダー大戦は劇場へ――!」
…………え? (;゚Д゚)
ポカーンって、なるじゃろ?なるよね?少なくともあの時、テレビの前に座っていた全てのおともだちは(;゚Д゚)の顔になってたと思うのだ。
そんでもってだ、実はまだこの話は続くのだ。
じゃあ今やってる夏の劇場版『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』が最終回の続きなのかなと思って、映画館に行くじゃん?
そしたらさ、
全然関係ない話なんだ、これが(;゚Д゚)
で、本当の完結編は、それからさらに4か月後のお正月映画『仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド MOVIE大戦2010』を待たなければならなかったというね……。
ただ、『MOVIE大戦2010』は、仮面ライダーWのビギンズナイト編に出てきた仮面ライダースカル役の吉川晃司がはちゃめちゃにカッコ良かったので、もうそっちしか目に入らなかったっていうか……(;´・ω・)
ところが、こんなにも不憫なディケイドは、その後もちょくちょく仮面ライダーの劇場版などに登場しては、敵か味方か分からないというトリックスター的なポジションで物語を引っかき回してくれる存在として愛され続けた。
そしてディケイドからちょうど10代後の『仮面ライダージオウ』が、『仮面ライダーディケイド』と同じように「平成仮面ライダー全てに変身できる」という話で、そしてあの時に期待して実らなかった「過去作のオリジナルキャストを可能な限りそのまま出す」ということをやってくれたのです(出れなかった人もいっぱいいたけどね……ヒロくん見たかったなぁ……)!
そして、『ジオウ』において、ディケイド=門矢士はジオウの敵か味方か分からないポジションで物語を引っかき回し、最後まで主人公たちと行動を共にするキーパーソンとして大活躍したのでした!
もちろん、井上正大くんの演技は「10年分の先輩」にふさわしい堂々としたもので、飄々とした態度で主人公や敵たちを翻弄しては視聴者を楽しませてくれるのでした(*^▽^*)
だもんで、私の中では『ディケイド』の物語は『ジオウ』でようやく完結したと思っているんだけどね。10年かかったよ。長い旅だったな、士!( ̄▽ ̄;)