つれづれぶらぶら

5月の反射炉ビヤ行きますよー!酔い蛍グループの皆さんにまた会えるかな?

忍者とダムカレーと朝の5時(後編)

 前編からの続き。家族旅行の2日目。 

sister-akiho.hatenablog.com

 

というわけで、黒部ダム行き電気バスチケット争奪戦を勝ち抜くべく、早朝5時に起きてすぐに宿を発ち、扇沢駅まで車を走らせる。宿から扇沢駅は車で20分ほどと近く、5時半には到着。無料駐車場はほとんど埋まっていたものの何とか停めることができた。

そして、これが早朝5時半の扇沢駅である。

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一見すると誰もいないように見えるが、実はチケット売り場はこの建物の中央部分(写真では大きな石に隠れているあたり)であり、そこから建物の壁面に沿って、既に長蛇の列ができていたのだ。その列が折れ曲がって有料駐車場の入り口まではみ出してきたあたりが、今、我々が並んでいる場所、というわけなのだ。すなわち、我々の前にはざっと勘定しても100人以上は並んでいるというわけだ。繰り返すが、これは早朝5時半の光景である。

早朝の山は寒い。切符の販売窓口が開くのは6時50分。これから1時間半ぐらいこの寒い場所に突っ立っていなくちゃならんのか、と思うと、もういっそ黒部ダムは諦めて鹿島槍ガーデンで魚釣りでもしちゃおうかなぁ、という弱気な考えが脳裏をちらつくが、何のためにここまで来たのかと気力を奮い立たせる。そうこうしているうちにも列はどんどん伸びる。すげー人の数。

そして、朝7時過ぎ、ようやく我々はチケットを買うことができた。始発便(7時半)は無理だったが、その次の8時の便をゲットして、ホッと一安心。

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なお、現在、長野県民は住所を証明できるものを持参すれば「信州げんきっぷ」という割安切符を購入することができる。扇沢黒部ダムのおとな往復切符の場合だと、通常価格2610円のところ、520円引きの2090円で購入できるのだ(ただしクレジットカードは使用できないので注意)。 

そして電気バスは「世紀の大工事」と呼ばれた関電トンネルへと入っていき、トンネル工事最大の難所である「大破砕帯」や、長野県と富山県の県境(そういえば7か月ぶりに県境を跨いだなぁ)を通り抜けて、黒部ダムに到着!

www.kurobe-dam.com

黒部ダム駅の出口から220段の階段を上った先にある「ダム展望台」からの風景は雄大そのもので、その美しさと迫力に圧倒される。

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この日は薄曇りだったが、一瞬だけ雲の切れ間から太陽が覗いたとき、放水の上に綺麗な虹が見えた。思わずカメラを起動したけど、写真は間に合わなかった。残念。

展望台から、観光放水を観覧しながら階段を下っていく。放水に近づくにつれて音は大きくなり、水しぶきがまるで美しいレース編みのような形を描いては消えていくのに、私も息子も旦那も、時間を忘れてずっと見とれている。

新展望広場には特設会場が設けられており、黒部ダム建設までの過程や、石原裕次郎主演の映画『黒部の太陽』で使用されたトンネルのセットなどを観覧できる。

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その後、ダム堰堤の上を散策する。堰堤の上から見下ろす観光放水の迫力はまた格別で、水煙とともに細かい水の粒が堰堤の上まで舞い上がってくる。

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殉職者慰霊碑に黙祷したら、時刻は10時。お腹も空いたとこだし、お楽しみのブランチだ。黒部ダムレストハウスの名物グルメと言ったら、皆さんご存知の、

黒部ダムカレーだッッ!!!

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本格的なグリーンカレー。辛さが後から来るタイプで、けっこう辛め。

カレールーの黒部湖に浮かぶ船(カツ)、そしてライスのダム、ポテトサラダとキャベツは放水の様子を表現しているらしい。なお、レストラン併設の売店にはこのライスの「金型」も販売していた。あはは。買わんかったけど面白いね。

帰りのバスも午後の便は混雑が予想されるというので、もうちょっと見ていたかったけど、ここは先手を打って10時半の便の帰りの電気バスに乗って扇沢駅に戻る。扇沢駅売店で、旦那は「ひたすら掘る俺」「ひたすら砕く俺」という怪しさ満点のメッセージがデカデカと書かれた真っ赤なふんどしを購入して嬉しそうにしている。最近、うちの旦那は「観光地で売っている変な柄のパンツを買い集める」という妙な趣味があるのだが、ついにふんどしにまで手を出したか。ふふふ。

 

真っすぐ茅野に帰るのももったいない気がしたので、黒部ダムからの道を下った途中にある「大町エネルギー博物館」へ寄ってみることにした。

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ちょっとだけ時代に取り残された雰囲気のある、こぢんまりとした可愛い博物館である。手作り感のある実験装置がたくさん置いてある。私はこういう雰囲気の博物館が大好物なのだ。なんとも形容しがたい風情があるじゃない、ねぇ?

小さなプラネタリウムもあるようだが、コロナ禍のため現在は休止中とのことだった。

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電磁コイルを使ったゲームや、リニアモーターカーの模型、せっけん液を使った張力実験、太陽光や風力、波力などでの発電の仕組みなど、触ったり動かして楽しく学ぶ。

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そんな中にいきなり現れる大町市の昔話。泉小太郎伝説というらしい。エネルギーにはとりあえずあまり関係がないようだが、こういうモノが不用意に紛れ込んでいるのも、田舎の博物館ならではの風情というもの。うふふ。こういうのホント好き。

 

中庭には美しい花壇や樹木があり、その奥には昔の水力発電の装置の一部がそのまま展示されていた。旦那と一緒に中庭を眺めていると、その装置の前にカモシカの親子の剥製が置かれていることに気づいた。生き生きとしていて、とてもよく出来た綺麗な剥製だ。そう思って、旦那がもっと近くで見ようと一歩踏み出した瞬間、なんと、その2体の剥製がピョンと跳ねたではないか。アッと思う間もなく、そのカモシカの親子は中庭の出口から道路を突っ切って山のほうへと逃げていった。

「剥製じゃなかった。本物だった」

周囲にいた他のお客さんたちも目を丸くしている。そりゃ、この長野県じゃ猿やら鹿やら狸やら猪やら、たまに熊さえも出没するから、カモシカぐらいじゃ驚かないけど、それにしたってあまりにも堂々としていたから、てっきり剥製だと思ったんだよぅ。

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可愛い薪バス。現在は休止中だとか。

いやー、しかし今回の旅は色々となめてたところがあって、まさか観光地にこれだけ客足が戻ってきているとは完全に予想外だった。観光業の皆さんがこれまでしんどい思いをされてきたことを思えばめでたいとも思えるし、その反面でコロナ禍がまだ沈静化していないという危惧もあり、ホント難しいね今年は。

でもやっぱり旅は楽しい。今年はとりわけ、ふだん目を向けてこなかった長野県の面白いところをたくさん知ることができたのが大収穫であった。青い鳥はぼくのおうちにいたんだね。とりあえずまた大町にはいつか遊びに来たいと思う私なのでありました。