つれづれぶらぶら

栗林くんの記念Tシャツ申し込んだよん(*^^*)

『メタモルフォーゼの縁側』

自分の好きなものを、素直に「好き」と言える人は、素敵だ。

 

『メタモルフォーゼの縁側』は、女子高生とおばあちゃんが「BL漫画」を通じて友情を深めていく漫画である。 

75歳の市野井 雪(いちのい ゆき)は、夫を2年前に亡くし、娘も外国に嫁いだため、自宅で書道教室の先生をしながら、一人暮らしをしている。そんなある日、ふと立ち寄った本屋で、表紙の絵に惹かれて『君のことだけ見ていたい』というタイトルの1冊の漫画を手に取る。

 結婚したての頃 けっこう漫画 読んでたなあ

ベルサイユのばら」とか「エースをねらえ!」とか…

ふふ なつかしい

(第1話)

そんなことを考えながら、久しぶりの漫画を楽しんでいた雪だったが、その単行本の最後で主人公の少年たちがキスを交わしたことに驚き、「あらー…」と頬を染めるのだった。

さて、その本屋でアルバイトをしている女子高生の佐山 うらら(さやま うらら)は、人見知りが強く、学校でも周囲になかなか馴染めない。

いいなあ…

私も あんなふうに

好きなものの話で 盛り上がったりしたい

(第3話)

大好きなBL漫画の話をしたいと思いながら、しかし楽しそうなクラスメイトを横目で見ているだけの、うらら。

うららが本屋で働いていると、雪が『君見て』の3巻を買いに来た。聞くと、既に2巻は購入したという。同じ漫画を好きな2人は、本の注文を通じて親しくなり、喫茶店や雪の自宅で『君見て』の話をしたりBL漫画の貸し借りをする仲になった。

「あの…今日持ってきた本なんですけど…

 中には…ちょっと…その

 過激…というかそんな感じのところもあって…」

「? 過激?」

「はい なので

 もし嫌だったら 読むのやめてくださいね ……」

「了解」

(第7話)

自分の好きなBL漫画のことを誰かと話したい、この気持ちを共有したいうららだが、その気持ちが強ければ強いほど、せっかく出来た「BL友達」に嫌われてしまうのが怖い。まして相手は歳の離れたおばあさんだ。過激な性描写もあるBL漫画にどのような反応を示されるのかが気になってしまう。

しかし、うららの心配をよそに、雪はあっけらかんとしたものだ。うららに借りた性描写も含む漫画をあっという間に読んでしまい、うららが恐る恐る切り出した同人誌即売会イベントにも行ってみたいと言うのだ。

それにね うららさんに誘ってもらって…

 絶対に行こうと思ってるの

とっても うれしいのよ

(第9話)

雪のポジティブさに引っ張られるように、うららの臆病な心は、少しずつ少しずつ、今まで挑戦したことのないことへ向かっていく。雪もまた、うららによって導かれた「これまで知らなかった新しい世界」に好奇心が刺激されて、日々新鮮なときめきを覚える。

そして、ついには、うららが描いた漫画を2人で同人誌即売会で売ることまで体験してしまうのだ。受験勉強の合間に、こっそりと雪の自宅で漫画を描き進めるうらら、うららを励まし、美味しい手料理をふるまう雪。

 

この漫画は、全編に優しい空気が流れている。

雪とうららは「BL漫画を語り合う」ということだけで繋がった友人同士であり、それ以上にお互いの生活に干渉することはない。だが、それぞれに家庭の事情があり将来のことで迷っている。雪は、うららに同級生の友人が少ないことを察しており、その内気な性格についても秘かに心配しているが、だからといって説教をしたりすることもなく、2人で縁側で漫画を読みながら、そっと寄り添うだけ。

それがいいのだ。ただ好きなものを語り合うだけの淡い関係。お互いの心に深く立ち入らない繊細さ。でも、2人で手を繋げば、今まで絶対に行けないと思っていた場所にも行けるような気がする。


[Official Music Video] Perfume 「マカロニ」

ひとつの勇気が、また次の勇気への橋を架ける。誰かに助けられた記憶が、誰かを助ける力に変わる。うららは、苦手だったクラスメイトと話す。幼なじみの少年の頼みに応えて、ほんの少しだけ力を貸す。雪のために走る。

この漫画は、本当に優しい。淡く消え去りそうな儚さをどこかに抱きながらも。

この世界に好きなものがあるという喜び、その気持ちを分かち合える――相手を思い遣る気持ちが、あたたかな日だまりのように、この漫画の中に広がっている。

こちらのサイトで試し読みもできるそうです。ぜひご一読を。

comic.webnewtype.com


コミックス『メタモルフォーゼの縁側』作品PV ロングVer.