つれづれぶらぶら

「予告先発」という単語を見て胸がトゥンク。ついに始まるのね……!

別の意味で「奇祭」になりそうな今年の御柱祭

今年開催される、諏訪大社御柱祭の開催方法について、ついに最終的な決定が下されたようです。

御柱祭が中止されるわけじゃないからね。4月の「山出し」のハイライトとなる「木落し」や「川越し」という見せ場を中止して、御柱はトレーラーで曳く、ということです。御柱祭自体は絶対に延期も中止もしません。そういう「決まり」なんです。

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写真映えする見せ場もなく、人力ではなくトレーラーが曳くということで、観光客自体はがくんと減少するでしょう。諏訪地域にとっての最大の観光資源であることからすれば、延期したらいーじゃん、という考えは至極当然と思われます。でも、それはできない。だってそれが「決まり」だから。観光客が落とすカネよりも、1200年も続く神事を遂行することのほうがずっと大事。そりゃあ苦渋の決断でしょう。諏訪地域にとっちゃめちゃくちゃ痛手ですよ、これ。

でも、それが「決まり」だから。そして、それを守るのが「諏訪の民」だから。

このへんの感覚は、おそらく諏訪以外の人々には理解されないんじゃないかと思います。私だってまだ諏訪に嫁いできて15年程度しか経っていないから、まだまだ「よそもん」ですが、このブログでも何度もご紹介したとおり、諏訪の人々の信仰心は他に比類するものがないというか、どんなちっぽけな祠にも必ず御柱が立てられ、何かがお供えされている光景を日常的に眺めていると、本当に、諏訪の人々がどれほど神々との約束を大切に守ってきているかということがよく分かります。だからこその苦渋の決断なわけです。それを他所の人にやいのやいの言われたくはないな、というのが正直な気持ちです。

「山出し」は4月だから、それまでにコロナが沈静化したらいいんじゃないの?とも思われそうですが(私もちょっと思った)、ニュース記事にもあるとおり、じゃあコロナが沈静化したからって、明日にでも御柱が曳けるか、急坂を滑り降りたり、冷たい川の中を渡ったりできるかっていうと、そういうわけにもいかないんですね。この時点で練習が出来ていない、今から練習しても間に合わない。ただでさえ危険な祭りと言われているのに、練習不足の状況で臨んだりしたらどれだけ事故が起こるか分かったもんじゃないっていう話なんですね。それもそうかー。いや、単に道を曳いて歩くだけでも、電線と並走したり、高架下を抜けたり、民家の密集する細い道をめどでこ揺らしながら通ったりするんですもん。確かにあれはしっかり練習しておかないと無理だなー。

とはいえ、5月の「里曳き」はまだどうするか未定って話ですからね。それまでには何とか光が見えてくるといいですね。

あと、これも諏訪以外の人々にはあまり知られていない話ですが、「御柱祭」は諏訪大社だけのお祭りじゃないですからね。それぞれの地区の神社(小宮)にもそれぞれの御柱祭があって、また、人によってはそれぞれの氏ごとの氏神(祝神)の御柱祭もある。多い人はこの1年の間に4回ぐらい御柱祭をやんなきゃいけなかったりもする。小宮の御柱祭は観光客が来ないぶん、その町内の大人や子供が和気あいあいと柱を曳いてて、とてものどかな光景です。そういう小さな御柱祭が、今年はあっちこっちで山ほど開かれます。今ごろ、それぞれの地区の実行委員さんたちはさぞや頭が痛いことでございましょう。何事もなくやれたらいいけどねー。

 

目下の私の興味は、諏訪のケーブルテレビ局「LCV」が、今年はどんなふうに御柱祭の映像を組むのかということです。ええ、あの「LCVはおんばしらのためにある」とまで言われる地元ケーブルテレビ局ですよ。

sister-akiho.hatenablog.com

なんせ、昭和55年からの御柱祭の記録映像をまとめた「御柱祭スペシャルDVDBOX」、樅の木箱入り特装版プレミアム特典付きという豪華パッケージが、現在絶賛予約受付中なわけです。毎日LCVでばんばんCM流してるっていうのに、令和4年分の記録映像の尺は足りるんだろうか。別に私がDVDBOX購入するわけじゃないけど、なんとなく気になる気になる……(;^_^A

www.lcv.jp

 

ところで、諏訪市公式YouTubeチャンネルで公開されている「御柱と諏訪信仰」シリーズの最終回となる「世界の柱祭り、日本の柱祭り」がとっても興味深い内容だったので、御柱祭に興味がある方はぜひ観ていただきたいのですよ。


www.youtube.com

講師の北村皆雄さんは、私が諏訪信仰について学ぶにあたって教科書のように読んでいる「日本原初考シリーズ」の著者のひとりでもありますね。

タイトルのとおり、日本中や世界中にある「柱」の祭を比較して紹介してくれていて、知っているものもあれば初めて見たものもありました。ヨーロッパの各地で立てられる「メイポール」は、映画『ミッドサマー』で観たという人もいるはず。いや、私はミッドサマー観てないけど。観る気もないけど。がくがくぶるぶる。

とりわけ、この動画の34分ぐらいから紹介されている「ヒマラヤの御柱」の記録映像はぜひ見ていただきたいところです。特に諏訪の人に見てほしいかな。だって、すっごく「御柱祭」に似ているんだもの。山から木を切り倒してきて、紐をかけて、掛け声や歌とともに、人々が力を合わせて曳き、坂を落とし、水場を越えて、王宮の庭に高く立てる。司会の方が言う「おんばしらでしょ?」という感想はまさしくそのとおり。生き神としてのクマリと大祝(おおほうり)にも繋がりを感じますね。

実は、諏訪の御柱祭についても、それがいったい何を意味しているのかは未だよく分かっていないのだそうで、とにかく大昔から途切れずに続いているということしか分かっていないという謎のお祭りなのであります。こうやって世界の風習との関連性で見ていくと、これは単に諏訪だけの祭ではなくて、もっともっと根の深い、人類の記憶に結び付いたものなのかなという感じもしますね。

 

今回の御柱祭がどんなふうになるのか、それは分かりませんが、1200年の歴史の中でも極めて特殊な回になるわけで、諏訪の人々にとってはこれこそが奇祭になるのかなと思ったりもするのですが、まぁ、何はともあれ、無事に取り行われることを心より祈念しております。

あ、個人的な話をすると、今年はもうウチは「お宿」やんないっすー。御柱祭のお宿をやることに熱心だった舅ももういないしね。そもそも今年の御柱祭で飲食をふるまう「お宿」をやってよいのかどうかすらよく分からないし、そもそも私は過去2回のお宿を経験してそのあまりのハードワークに辟易してしまったし。今年はおとなしくLCVを見ることにしまーす(;^_^A