つれづれぶらぶら

5月の反射炉ビヤ行きますよー!酔い蛍グループの皆さんにまた会えるかな?

御無礼こかせていただきます

最近、毎週木曜日の夜7時からBS12で『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』のVシネマを放映している。

むこうぶち』は竹書房の「近代麻雀」で今もなお連載中のロングラン麻雀漫画。あれ本当に長いよな、いつから連載してるんだろ、と思って今ウィキで確認してみたら1999年から連載してるんですってよ。もう20年以上御無礼やってんのか傀さん。

私が原作の『むこうぶち』を知ったのは、私がまだ実家にいた頃、年の離れた姉がたまに買ってきていた『近代麻雀』を読んだのがきっかけ。姉貴も私も全然麻雀やらないし役も点数の数え方もろくに分かってない。せいぜい暇つぶしにゲーセンで『スーチーパイ』をちょっとやったぐらいのド素人。でも麻雀漫画ってわけ分かんなくても面白いのよ。私は伊藤誠先生の『兎――野生の闘牌――』にどっぷりハマって(旦那にも布教した)、他にも『カイジ』の福本伸行先生の『アカギ』とか(嗚呼ワシズ様!)、片山まさゆき先生の『打姫オバカミーコ』とか、大和田秀樹先生の『ムダヅモ無き改革』とか、とにかく面白い漫画がいっぱい載ってた中に、『むこうぶち』もあった。

 

むこうぶち』は、バブル景気に沸く1980年代の東京を舞台に、いわゆる「マンション麻雀」などと呼ばれる非合法の高レート裏麻雀において、さまざまな人物が伝説の雀士"傀(かい)"と戦い、そして完膚なきまでに叩きのめされ、金もプライドも全て失う、という「敗者の物語」である。

「傀」はいつもクールで、とにかく麻雀がめちゃくちゃ強い、ということ以外は何も分かっていない謎の男。序盤はわざと負けて相手(カモ)の様子をじっくり探り、途中でレートアップを持ちかけ、調子に乗ったカモが安易にこれに応じたが最後、魔物じみた強さでばんばん勝ちまくる。そしてとどめの一撃をぶち込む際に「御無礼」という決め台詞を静かに呟く。傀の「御無礼」を聞いてしまった時には、もはや有り金はびた一文残っていないのだ。


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Vシネマで傀を演じるのは袴田吉彦さん。二枚目で真面目そうな風貌ながら、ちょっと陰のある雰囲気が、少し硬くはあるけど、まずまず合ってるかなとは思う。「御無礼」はもうちょっとイヤらしい感じで言ってくれてもいいとは思うけどね。

 

で、木曜日の夜7時というと、私は『プレバト!!』を観ると決めている。で、『プレバト!!』が終わってから、特に観たいものがなければBS12にチャンネルを変える。

すると、『むこうぶち』はちょうどドラマが始まって1時間が経過したところで、既に高レートのマンション麻雀が始まっている。そして、その時点では、たいてい「カモ」がぼろ勝ちしている真っ最中で、傀たちに泳がされているともつゆ知らず、調子に乗りまくっているところだ。

(へっへ、傀さんとやら、噂ほどにもねぇや、てんで弱いじゃねぇか。それに比べて今日の俺ときたら、どうだ?絶好調だぜ!今日の俺はツイてる!よぉーし、今日はたんまり稼がせてもらうぜ!)なんて、カモの心の声がナレーションで流れているところ。

すると、そのタイミングでたいてい、傀が「ビンタを上げませんか」と持ち掛けてくる。ビンタっていうのは私もよく知らないけど、裏麻雀のローカルルールのひとつで、通常の点数による掛け金に上乗せして、別に支払われる掛け金のことらしい。要するに、ただでさえヤクザな違法賭博のレートをさらに倍倍プッシュしましょうよ、という悪魔のお誘いなわけなんだけど、ここまでの流れで「今日の俺はツイてるぜ!」と錯覚したカモは目先の欲に目がくらんで「いいですね!やりましょう!」と乗ってきちゃう。これが死刑宣告だとはまだ気づきもしないで。

 

この流れを、息子と一緒に観ているわけですよ。もう息子ももうじき中学2年生だしね、こういう毒のある世界もかいま見せておかないと、渡る世間の鬼と戦っていけないじゃないですか。いつまでも純粋培養だとコロッと騙されてしまうからねぇ。

で、この「ビンタを上げませんか」の傀の言葉が「死亡フラグ」であることを、うちの息子も悟るわけですよ。だもんで、「いいですね!」というカモの笑顔に、母子で「おいおいおい」とか「あーあ」とか言いながら観ているわけです。そしてその直後から始まる、それはもう吹きすさぶ暴風雨のような「御無礼」の嵐に、母子とも半笑いで「だから言わんこっちゃない」「バカだねぇ」と言い合うわけです。そして、有り金を全て失ったカモが雀卓に突っ伏している姿を見て、ああ、悪い人たちはこうやって人を追い込むのだね、自分がカモにされてるとも知らず調子に乗ったら痛い目に遭うのだね、と母子で感想を言い合って、やっぱり賭博はいけないと思いました、マル。これが最近の我が家の「裏・道徳の授業」なのでございます。『むこうぶち』はVシネにしてはお色気や暴力が少ないからその点は安心して観れるんだよなぁ。

あと、麻雀ドラマって基本的にワン・シチュエーション・ドラマだなぁと気づいた今日この頃。卓を囲んで、時々チラチラとお互いの表情を見るだけだから、お芝居としては変化に乏しくてツマンナイのかなと思いきや、そのわずかな表情で「あ、今、仕掛けた」とか色々と気づけるので面白い。カモがどんどん余裕をなくして、最後あたりはツモる手も震えてたりするのが楽しいね。

 

全然関係ないけど、最近、アニメ『おしりたんてい』の映画のCMがテレビなどでよく流れてるんだけど、今回の映画にはシリアーティ教授役の声優として福山雅治さんが出演してるのね。で、おしりたんていの決め台詞「失礼こかせていただきます」に対抗して、福山雅治ボイスで「無礼こかせていただこう」って言うのね。


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もう、これを聞いたら、福山雅治さんの傀も見てみたいって思っちゃうじゃないのー。袴田さんもいいけど、福山さんも合うと思うんだよ、傀のキャラクター。ってか、むしろ原作のイメージに近いかもしんない。ニヤ~リといやらしく笑いながら、あのねちっこいイケボで「御無礼」と役満アガる福山雅治さんの姿を見てみたいと思うのは、私だけではあるまいよ、ね?ね?