つれづれぶらぶら

たびにでてます。

『三丁目が戦争です』

こないだ、息子が図書館で借りてきた本を読みながら「えーっ?」「ちょっとちょっと!」「なんでそんなことになっちゃうの!」などと、しきりに驚いていたので、いったい何を読んでいるのかと思って覗き込んでみたら、筒井康隆だった。

おお、ついにうちの息子が筒井康隆と出会ったか。よきかなよきかな。

 

私はといえば、子供の頃、兄の部屋の本棚に筒井康隆の本がたくさんあったので、たまに読んでいた。とはいえ、兄とは歳が離れていたので、兄の蔵書は当然ながら大人向けのものが多く、青少年向けの『時をかける少女』あたりはまぁいいとしても、その他の作品の中にはエロ・グロ・ナンセンスてんこもりのものがたくさんあった。姉は『七瀬』シリーズが好きだったが、あれも子供が読むにはキツめの描写があったような気がする。

私は『経理課長の放送』が好きだった。ラジオ局でストライキが起きてアナウンサーがいなくなったために、急きょ放送を任された経理課長がしっちゃかめっちゃかのアナウンスをしてしまうスラップスティック・コメディの短編。

あと、『筒井康隆漫画全集』もあったっけな。漫画の内容はほとんど覚えていなくて朧げな記憶だが「ニカッと笑えば九蓮宝燈(チューレンポートー)」という1頁があったような気がする。笑った顔の絵で、その歯が麻雀牌になってんの。あれで九蓮宝燈という麻雀役を覚えましたよ。くだらねぇ(;^ω^)

大人になってから読んだ『残像に口紅を』は面白かった。『驚愕の曠野』は難解だった。『パプリカ』はアニメ映画は面白かったが、原作はいまいち。

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話を戻すと、そのとき息子が読んでいたのは、このSFジュブナイルセレクションに収められていた『三丁目が戦争です』だった。子供向けに平易な言葉で書かれたおはなし。

(以下、ネタバレを含みます)

小学生のシンスケくんが、小学1年生の女の子だがいつも公園で我が物顔で乱暴を繰り返す「山田月子」に立ち向かおうと決意したことを発端として、他愛ない子供のケンカのはずが、次第に親世代を巻き込んで話が大きくなり、最終的には「住宅地VS団地」の壮絶な戦争に発展してしまい、シンスケくん以外全員死んでしまう……という過激な寓話。物語の最後には作者自身が登場し、なぜこの戦争は起こってしまったのかを、読者の子供たちに問いかけるのだ。

それよりも、戦争をおこさないほうが、ほんとはいいのです。だけど、戦争というのは、もとはといえば、ほんとうにつまらない、ちっぽけなことがきっかけになって、おこってしまうのです。

おまけに、戦争をすきな人がいて、こういう人が、どうもこまりますね。

戦争のきらいな人だって、ときには、シンスケくんのように、かっこいいなどとおもうことがあるくらいなんですからね。

みなさんも、すこしぐらいは、そうおもってるんでしょう。

こまるんですよ、そういうのが。

ほんとに、こまるんですよ。

(最終ページより引用)

ああ、そうね、本当に。と、昨今のニュース映像を見ながら思う。どうしてこうなったんだろう、何ページからやり直せば良かったんだろう、と。

そんなことを思いながら、息子とともに岡谷市図書館に向かった。息子が「筒井康隆の本、もっと読んでみよっかな」と言ったので、ほほぅ、中学2年生だからもうエロもグロもイケるやんな、と思い、前に岡谷市図書館で借りたことのある『ビアンカ・オーバースタディ』を勧めてみた。エロいぞ、グロいぞ、バカバカしいぞ、と但し書きをつけて。すると息子が「読む読む」と鼻息を荒くして食いついてきたので、んっふっふっふっ、おぬしも好きじゃのぅ、とかなんとか言いながら連れていったのだ。

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息子が窓口で『ビアンカ・オーバースタディ』を閉架から出してもらっている間、他には何があるかな、と本棚をうろうろ眺めていると、児童書コーナーに大判の『三丁目が戦争です』の絵本があった。しかも「画:永井豪」とあるではないか!

ぱらぱらとめくってみると、丸っこくて可愛らしい二頭身キャラクターの絵が添えられている。でも、まぎれもなく永井豪の絵。もちろんすぐに借り出してきた。こんなエロ・グロ・ナンセンスの巨匠同士のタッグだなんて、読まずにおらりょうか。

調べてみると、元々この話は、筒井康隆永井豪による絵本として1971年に講談社から出版され、その講談社版は絶版となってから古本業界でもレア品として高値で取引されていたのだとか。そして、この洋泉社版は2004年に復刻された新装版。表紙は違うけれども、中のイラストは講談社版と同じみたい。

この残酷なエンディング、誰もいない荒野に銃とヘルメットだけが打ち捨てられている絵は、もちろん子供向けの絵本だから、死体こそ描かれていないものの、『ハレンチ学園』のラストの「ハレンチ大戦争」や『デビルマン』、『バイオレンスジャック』を読んだ者にとっては、その何もない荒野の中に累々と横たわる無残な人々の姿を思い浮かべてしまう。むろん、それに至る前に何が繰り広げられていたのか、も。

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ところで、息子はというと、ソファの上でごろごろしながら『ビアンカ・オーバースタディ』を読んでいるのだが、しきりに「下品。下品。ああ下品。」と呟いておる。「あら、下品すぎてお気に召さなかった?読むのやめてもいいのよ?」と呼びかけると、ニヤッと唇の端を持ち上げて「……下品だけど、おもろい」と言う。ぐふふ。おぬしも好きじゃのぅ。