遅ればせながら、映画『シン・ウルトラマン』を観てきました。
最初は、観る予定はなかったんです。
そりゃあ私も昭和の人間ですから、昔、17時台とかにテレビの再放送で繰り返し放送されていたウルトラマンやセブンは観ていました。しかも年の離れた実兄が円谷特撮好きでしたから、家には関連図書もいくつかありましたし、実相寺監督のカメラアングルについてマニアックに語る兄の恍惚とした表情もぼんやり覚えています。だから、まぁ、同級生の他の女子よりは詳しかったかもしれませんけど、でも、その程度ですね。それ以上に特に関心があるというわけでもなく。
でも最近、図書館で実相寺監督の本(『ウルトラマンのできるまで』『ウルトラマンに夢見た男たち』)を見つけて、なにげなく借りてきたんです。特撮の制作現場の裏側を紹介する中学生向けの読み物で、平易な言葉で書かれたとても読みやすい本です。当時のスタッフへのインタビューあり、絵コンテの書き方や着ぐるみの着方、撮影時の苦労話など、実際に制作に携わった者だけが知り得る貴重な話がたくさん載っていて、特撮ファン必携のバイブルと言えましょう。
で、なんとなく心の中にウルトラマンが引っかかった状態になっているところへ、この三連休の最後の日、せっかくだから息子とどこか近場にでも遊びに行こうかなと誘ってみたところ、息子が「ウルトラマンの映画ってまだやってる?やってるんなら観てみたいな」と言い出したので、そんじゃ一緒に映画鑑賞に行きましょうと、TOHOシネマズ甲府まで出掛けてきたのでした。
もはや大勢の方々がネタバレを含むたくさんのレビューをお書きになっているので、あえて私のほうから何か語る必要があるのかという気もします。なので、ストーリーにはほとんど触れず、私の感想だけをちょこちょこ書いてみましょうかね。
最初に結論を書いておくと、
めっちゃ面白かった。
普通に面白かった、とでも言いましょうか。あちこちで賛否両論になっているらしいことは事前に聞いていたので、小難しい内容じゃないといいなぁ、と願いつつ見始めたのですが、ちゃんと、熟年女性も男子中学生ももれなくワクワク楽しめるエンタテインメント映画でしたね。パニック映画の要素もあり、バディもの/チームものでもあり、かすかに恋愛の香りもあり、クスッと笑える描写もあって、そしてちゃんと特撮ヒーロー映画でした。上映終了後、場内が明るくなると同時に「面白かったね」と息子と顔を見合わせたぐらいに、素直に楽しめましたよ。
しかしながら、「これはリメイクなのか?それともオマージュなのか?あるいはパロディなのか?」という思いがずっと脳裏をぐるんぐるんしていて、「これはツッコんでいいのか?あるいはツッコまれるのを待っているのか?」というシーンがいくつもありました。
まぁ、まずはアレですよね……、わざとらしいぐらいの実相寺アングルの連発。特に序盤の対策本部でのシーンなんて、西島秀俊さんが電話をかけているだけのシーンなのに、なんであんなにカメラアングルをひっきりなしに切り替える必要があるのかという!その股間からのアングルは何の意味があるんだいっ!(ツッコミ)
それから、随所に散りばめられたヲタなら分かる小ネタの数々。パゴスとネロンガとガボラは頭の形状だけが違うんですが下半身は一緒なんですよ、まるで頭部だけ差し替えたかのようですね、っていう台詞には、さすがの私も噴き出しました。そりゃ有名な話だろ、ウルトラマンの頃は予算がなくてぬいぐるみを使い回してたっていう。こんな感じの「分かる人には分かるメタ発言」がちょいちょいあったようです。同じシーンで、うちの息子は、ガボラが掘ったトンネルを何かに利用できないか、という発言もまた『空想科学読本』にあったネタだと言っておりますが、どうなんでしょうね。庵野秀明脚本だからそのへんも押さえてそうな気はするなー。
露骨な演出といえば、ちょいちょい挟まる「昭和的」なイメージも、おそらくはオリジナルの時代に対するオマージュなんでしょうね。団地。公園。砂場、ブランコ、グローブジャングル。居酒屋。昭和歌謡。東京タワー。鉄工所。がらんとした病室にベッドがひとつ、という風景もまた、どことなく昔のテレビドラマの匂いがして。
全体のお芝居も、オリジナルのウルトラマンを意識したものになっていたと思います。こういう昔の作品を現代にリメイクすると、お芝居も現代風に自然な感じで……ってやっちゃいがちだと思うんですけど、それやっちゃうとウルトラマンらしさがなくなっちゃう気がするんですよ。
ウルトラマンの台詞回しは基本的に「説明台詞」で、これまでの状況を分かりやすく、はっきりと喋るのが持ち味だと感じています。この映画でも、禍特対メンバーが随所にこれまでの戦いや現在の政治バランスなどを掛け合いで話していましたね。とりわけ、有岡大貴くん扮する物理学者の滝と、早見あかりさん扮する生物学者の船縁の2人は、物語の解説役としての立ち回りを上手に受け持っていたと思います。
あとは、おそらくみんな大好きメフィラスさん。
日本文化に馴染みまくっているメフィラスさん。こういうクセの強い役柄は山本耕史さんの独壇場だなぁ。ユーモラスな演技で観客を笑わせたかと思うと、次の瞬間に悪意を漲らせてゾクッとさせるのが上手いですね。本田博太郎さん路線とでも言いましょうか。
でも、西島秀俊さんと山本耕史さんが揃っていると、どうしても『何食べ』を連想してしまって、今にもメフィラスさんがタンクトップ姿であっさり味の煮物を作ってしまいそうな気がして、笑いをこらえるのが大変でしたわwww
長澤まさみさんをヒロインに抜擢したのは良かったと思います。ウルトラヒロインといえば、フジ隊員の桜井浩子さん、アンヌ隊員のひし美ゆり子さんが真っ先に思い浮かびますが、どちらかというと南方系のくっきりした顔立ちで、健康的な色気のある美女というイメージではないでしょうか。その点で、長澤まさみさんはまさにうってつけですね。何日もシャワー浴びていないのに……と赤面する姿は、ほんのりエロティックで可愛らしかったです。そして「例の」シーンは……めっちゃ面白かった!あはは!
今回の上映では、本編上映後に、1966年のテレビシリーズ『ウルトラマン』からメフィラス星人登場回の第33話『禁じられた言葉』が上映されました。『シン・ウルトラマン』の一部を構成するシーンの、その原作回です。さっき観たばかりの映像との違いや同じ部分を味わいつつ、興味深く鑑賞しました。意外にも、かなり多くの部分(台詞や動き方など)をそのままリメイクしていることが分かりました。
でもやっぱり、この回の一番の見どころは「例の」シーンよね。金城哲夫さんの脚本は面白い……どうしてああいう発想が生まれたんだろう、くすくす。