つれづれぶらぶら

デニムリュック買えなかった。トグルボタンニットは買えたよ。わーい。

映画とおカネの関係がよく分からない

いやー、『RRR』、ホンマ良かったわー。

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『バーフバリ』もだけど、最新のCGを駆使した豪華絢爛なビジュアルの迫力といい、群衆などのスケール感もハンパないのよねぇ。さすがはインド映画史上最高額97億円の制作費をかけただけのことはあるわぁ、と感心しつつ、ふと、いや、映画の善し悪しと制作費の額って関係あるのか?と素朴な疑問を抱いてしまった私なのである。

結論から言えば、もちろん関係はあると思う。一流のスタッフやキャストをたくさん集められるし、セットとかCGとかもしっかり組めるし、そりゃおカネがないよりはあったほうがいいに決まってる。そんなこた分かってる。

でも、はたして「お金」と「クオリティ」が正比例を描いているかというと、うーーーーーーん。必ずしもそうとは言えない、のが現実だと思う。

 

よく言われるのが、ハリウッドは日本映画の10倍以上の制作費をかけているっていう話。日本で大作って銘打った映画でも、その予算規模だとハリウッドではインディーズか?と言われるレベルだ、とかなんとか。

ま、その点に関しては、私はよく分からないし興味もない。人口も違うし、映画文化の浸透度も違うんだし。そもそもアメリカさんは、メジャーリーガーの選手の年俸からして、日本球界とは桁が違いますけんね。黒田博樹に20億円超えのオファーが出せるチームに対して、必死で金庫からおカネを集めてもせいぜい4億円のオファーしか出せないチームが戦いを挑んだところで、勝ち目なんかないでしょうが普通。ええ、普通はね。ありゃ黒田じゃったけんね、特別なことじゃったんよ。他の選手もあがいな選択をする思うたらいけんのんよ、……って、何の話だったっけ?

ああそうそう、映画の話。

だから『RRR』みたいに、制作費と完成度がちゃんと釣り合っているのは健全な映画ですわな。インドとかハリウッドとかはそのへんのバランスがちゃんと機能しているんだと思う。……思う、っていうのは、インド映画にもハリウッドにもあまり知識がないから、多分そうなんだろうなぁ的な。

だけど、日本映画に関しては、このバランスがあんまり機能していないのじゃないかしらん。なぜそう思うのかというと、世界的にも高い評価を受けた『ドライブ・マイ・カー』や『この世界の片隅に』などが、ご存知の方も多いと思いますが、いずれも低予算で作られた映画だということ。

えーと、『ドライブ・マイ・カー』が1億5千万円程度、『この世界の片隅に』は2億5千万円程度、か。どちらも、邦画の予算規模から見ても、どちらかといえば低予算なほう。片渕監督が食費を削ってまで映画作りに自費をつぎ込んでいたのは、なかなかに壮絶なエピソード。

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貯金の残高が4万5,000円になると、さすがにおののきますね。貯金がその額になったころから、家族で1日、1食100円にしましょうということになりました。一人ではなく一家4人で100円です。100円でもいけるんですよ。

そうした生活をしていて「ああ、今やっているのが、すずさんだな」と思っていました。大根を食べたら、大根の皮は干して……とかやっていましたから。雑草を抜いてくるまではやりませんでしたけど。家族で「なんとかなるもんだね」と話をしていました。(上記記事より引用)

こんなにまで制作者が身を削らねばならない状況というのは、素人の私から見たって、やっぱりちょっと健全ではないなと思う。『この世界の片隅に』に関しては、クラウドファンディングで製作費を募って成功した、という事実が、あたかも美談のように語られているけれど、それは本来は美談にしちゃいけない話だと思うよ。

 

ただ、まぁ、ずばり言ってしまうと、映画の制作費っていうのは、制作に要する実費を指して言う言葉ではなくて、ぶっちゃけその大半が宣伝費だっていうのは周知の事実なのだな。だからこそ、売れそうな映画にはテレビ局や大手企業がスポンサーについて、ばんばんCMを流したり、イベントを催したり、賞レースのためにアピール活動をしまくったり、そういうことをするわけでしょう。そりゃおカネもかかるわな。

だからこそ、『ドライブ・マイ・カー』が米国アカデミー賞にノミネートされた時、ほとんどプロモーションをやっていないのに賞が取れるわけがない、といった論調の意見があったのも頷ける。

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『ドライブ・マイ・カー』は、作品賞候補10作品の中で最も控えめなキャンペーン予算で戦った映画だろう。LAにおける映画宣伝の定番のビルボード看板を目にしたこともないし、業界誌の表紙を飾ったわけでもない。パーティーやディナーも開催されなかった。その代わりに、熱狂的サポーターを増やす戦略が取られた。その結果、全米に数十ある批評家賞で多くの賞を受賞し、毎日のようにDrive My CarとRyusuke Hamaguchiの名前が業界誌のヘッドラインに並んだ。(上記記事より引用)

要するに、「中身」で勝負を挑んだわけだ。観ていただけたら分かります、と。それはアートの世界においては至極もっともな正攻法の戦略だとは思うが、現実的な商業世界においてそれをやるには、相当の自信がないとやっていけないと思うよ。

でも、結果的には、濱口監督も片渕監督もその戦いに勝ったわけで、それはもう本当にすごい、どんだけでもスタンディングオベーションしていられるぐらいに素晴らしいことだと思うけど、でも、それにしたってもうちょっと何とかならんかったんか、才能のある人がここまで苦しめられねばならんというのはどうなんだ、とも思う。

ま、『この世界の片隅に』に関しては、主役キャストの「問題」もあって、そもそもNHK以外みんな知らんぷりを決め込んでいた、という芸能界の醜い歪みも絡んでいたんだけどな。ちなみにこの「問題」は当該キャスト自身から発する問題ではなくて、取り巻く環境に内在する問題なんだけどな。ああいやだいやだ。

 

そんで、なんでいきなりそんな話をし始めたのかっていうと、最初に書いたとおり、『RRR』が素晴らしかったからっていうのもあるんだけど、今年観た映画の中では『MONDAYS』もなかなか良かったなー、って思っていて。

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『MONDAYS』は、どれぐらいの制作費で撮られたのかは分からないけれど、どう考えてもかなりの低予算で撮られているのだろう。インディーズ映画って言っていいの?いまいち映画界のメジャーとインディーズの違いがよく分かってないんだけど。

監督や脚本家も新進気鋭の若手だし、キャストもあまりよく知られていない人が多いし、基本的にはワンシチュエーションで大掛かりなセットもなし。そんでもって宣伝もほとんどされていなくて、私はたまたまYouTubeで予告編を見たから気づいたけど、それがなかったらおそらく気づくことすらなかったんじゃないかな。

ただ、「中身」は面白い。いや、そりゃもちろん、粗はたくさんあったよ、後半の展開があまりにも唐突だったなぁとか、あの大手広告代理店の人たちは画面に出さないほうが面白かったんじゃないのかなぁとか、主人公の恋人の話が途中ぐらいからほったらかされちゃってたなぁとか、オチのつけかたがそれまでの流れに比べてちょっと弱かったなぁとか、そういうね、クオリティ自体はそんなに高い映画じゃなかったと思うんだ、ぶっちゃけ。

でも、面白かったんだもん。それってもう、おカネの問題じゃないでしょ。優れたアイディアがあって、創意工夫があって、脚本が良くて、演出にこだわりがあって、キャストやスタッフがノッていれば、それはもうどうやったって面白い映画になっちゃうでしょ。それは観れば分かるでしょ。ジャッジするのは観客でしょ。そんなわけで、『MONDAYS』は口コミでじわじわ評価が拡がっているようで、「第二の『カメラを止めるな!』になり得る映画」とも言われているらしい。

個人的には、『キサラギ』を思い出したけどね。2007年公開の映画。主演は小栗旬。脚本が古沢良太。とあるビルの一室で繰り広げられる、男5人の会話劇。笑いあり驚きありのどんでん返しミステリーコメディ。

多分だけど、これも制作費はかなり安かったんじゃないかと思う。キャストは豪華だけど、セットとかの費用はたいしてかかってなさそうだもんね。宣伝はどれぐらい打ったんだろう?制作委員会にテレビ東京が入ってるからCMぐらいは流したんだろうか?ちなみに私は、新婚旅行(青森・岩手)の途中で立ち寄ったコインランドリーに貼ってあったフライヤーで知ったんだけどさ。

これは元々は舞台劇だそうで、とにかく古沢良太の切れ味抜群の脚本が光る光る。多すぎる伏線、意外すぎる展開、真実がひとつ明らかになるごとに男たちは悲鳴を上げる(色んな意味で)。もう本当にめちゃくちゃ面白いからビデオ借りてきてでも観て観て。ひとつだけ文句を言うならエピローグが蛇足。エンディングのダンスでキレイに終わってほしかった……。

 

うん、なんかとりとめのない記事になってしまったんだけれども、結局、何が言いたいかって言うと、過去の実績にとらわれず、才能あるクリエイターにはちゃんとおカネを出してあげてよ、っていう話。

それと、なんぼ面白い映画が公開されていても、過去に実績があって大企業のバックアップもある、いわゆる「売れ筋の超大作」が公開されるや否やどんどんそっちに上映館が喰われてしまう現状をどうにかしてほしい、という話。もっとズバッと言っちゃうと、『RRR』と『MONDAYS』が面白かったから皆も観てね、と言おうとしたとたんに上映館がバタバタっと減ってしまったことが非常に悔しくてならんのですよ。どこのシネコンもおんなじような顔ぶればっかでさぁ、まったく…………ブツブツ……。