つれづれぶらぶら

ネットフリックスに『カラオケ行こ!』が入ってる~!今度のお休みの日にでもゆっくり観よ。うふ。

『作りたい女と食べたい女』ドラマ版

NHK夜ドラ『作りたい女と食べたい女』全話視聴いたしました~~~。

www.nhk.jp

めちゃくちゃ良かった………(ノД`)・゜・。

やっぱりね、『ここは今から倫理です。』の時も思ったけど、こういったデリケートなテーマを扱った原作のドラマ化はNHKかテレ東に任せたいっすよ。すっごく丁寧に作ってくれるもん。

sister-akiho.hatenablog.com

 

今回のドラマでは、女性が女性を好きになることや、女性を取り巻く旧い価値観に基づく固定観念からの脱却など、非常にセンシティブなテーマを扱う漫画を原作とするだけに、それらのテーマを扱った経験のある脚本家を起用し、さらにジェンダーセクシュアリティ考証スタッフを配置するなど、企画当初から特に注意深く作り上げられていたようです。そのあたりの裏話がこちらの記事に詳しく掲載されていましたので、どうぞご覧ください。www.nhk.jp

ゆざき 実は以前から映像化に関しては、いくつかお声がけをいただいていました。そのなかには「同性愛を強調しない形で映像化したい」という企画書もあったのですが、ガールズラブであることとフェミニズムの要素は外せないので、お話は見送っていました。その後にNHKから真摯な企画書をいただいたので嬉しかったです。決め手となったのは、レズビアンの女性がNHKで描かれることが自分のなかで大きいと感じたからです。(上の記事より抜粋)

この部分を読んで、やっぱりそうだったんだな、と思いました。

テレビ東京が手がけた『きのう何食べた?』がヒットしたことで、「食とパートナー」を描く物語、要するに二匹目の『何食べ』が求められていたところへ、この漫画はちょうどぴったり当てはまりますもんね。ただ、原作の持つ取扱いが難しい部分、すなわち同性愛とフェミニズムの問題は、これまであまりTVドラマで扱われていない部分であり、お茶の間からの反発も予想されるテーマだけに、そこを曖昧にぼやかして、女性2人が美味しいご飯を囲んでキャッキャウフフする愉快なコメディに仕上げよう、そういう作り手側の意向も、確かに理解できるところではあります。

ただ、それだったら、多分、私は見なかった。それだったら、オリジナルの作品でやってほしい。この原作を巻き込まないでほしい。そう思ったでしょう。

この漫画は、これまで透明な存在にされてきた「女性たちのグラデーション」を描く漫画です。お料理を作るのが好き、食べるのが好き、作りたくない、食べたくない。生理が軽い、生理が重い。男性が好き、女性が好き、恋愛に興味がない、触れ合いたい、触れ合いたくない、自分がどんな指向を持っているのかまだ分からない。この漫画の登場人物は、それぞれ個性は違っているのに、周囲から「女性はかくあるべし」という思い込みを押し付けられている女性たちです。まるで、クッキーの型で形を揃えられようとするように。

だからこそ、全国津々浦々、都会も田舎も地域で格差をつけることなく同じ情報を提供できるNHKでこのテーマを真正面から描き切ることに意義があったわけですよ。

そりゃ反発はあるでしょう。少し前に、ある政治家が「生産性」がどうとか言ってセクシャルマイノリティを非難したことがありましたね。そういう考え方は決して少数派ではないわけですよ。でも、そことの対立を避けて物事を曖昧にぼやかしていたら、女性たちはいつまでたっても「クッキー型」から抜け出せないわけですよ。いや、もちろんそれは「女性」に限定した話でもなく。

 

それはさておき、ドラマの話ですよ。

なんたってキャスティングが絶妙でしたよね!特に西野恵未さん演じる「春日さん」は、もう本当に漫画の中からあのまんま飛び出してきたかのよう!初めて見る女優さんだなと思っていたら、実は西野さんは女優さんではなくミュージシャン。今回の撮影のために肉体改造と演技のトレーニングに励んで挑まれたとのことですが、いやー、もうねー、ホントにねー、春日さんそのものって感じで……可愛い……好き………( *´艸`)

最初は仏頂面が多かったのが、次第に表情が柔らかくなって、笑顔もこぼれだすのが愛らしくてたまらないのよね。実家では満足に食べさせてもらえなかったから、野本さんが大盛飯を自分へと差し出してくれたときの「食べていいんですか」が、本人にとってはある種の奇跡なわけなんだけど、そこの言い方がいいなぁと思ったり。あと、シュトーレンをお代わりしたいときや、ローストビーフ丼に卵を乗っけてもらったときのお目目の静かなキラキラが、あああ、可愛いのなんのって!

もちろん、野本さんを演じた比嘉愛未さんも、NHKの朝の連ドラも務めた経験豊富な女優さんだけあって、完璧に野本さんでしたっ。野本さんは難しい役どころなんだよね、自分のセクシャリティを少しずつ自覚していくという、心の変化を演技で伝えることが要求される繊細なキャラクター。そこんところがもうバッチリ!特に、8話ラストで鍋焼きうどんを食べながら「私は女の人を、春日さんを好きでいいんだ」と自覚するシーンなどはきっぱりとした意志が感じられる表情で、すごく良かったです。9話のバスを降りたシーンでの、自らの恋を自認して晴れやかな気持ちになっているところも良かったですね。

それから、ドラマオリジナルキャラクターである、野本さんの同僚の佐山さん。野本さんの恋愛の相談相手は、原作ではレズビアンの矢子さんの役目なんだけど、ドラマでは矢子さんや南雲さんは登場しなくて(シーズン2があったら彼女たちも是非出してほしいっ!)、その代わりに佐山さんが野本さんの恋バナを聞く立場になっています。

ここのところの改変は、今回のドラマ化に関しては、大成功だったなって私は思うんですよね。

佐山さんは男性が好きな(シスヘテロ)女性で、おそらく多数の視聴者と同じ属性。だけど、佐山さん自身はすごくフラットな物の考え方ができる人物で、他人の恋バナを聞く場合も、まず異性愛を前提としていない。野本さんが誰かに恋をしているらしい、どうやら初めての恋らしい、素敵だな、っていう思いが先にあって、その相手が女性なんですと聞いても、そうなんですねーって感じで、逆に野本さんをびっくりさせてしまうほど。また、職場のウザい男性社員のあしらいがさりげなかったり、野本さんが病気っぽいことにいち早く気づいてくれたり、あーこういう人が職場にいてくれたらホント最高なのになーって思うぐらいの素敵な同僚さんなのです。そういうキャラクターが「自分と同じ属性」であることで、ああ、私もこういうふうにふるまいたい、こんなふうに考えることができたらいいなって、多くの視聴者に柔らかいメッセージを伝えてくれているんですよね。

これが原作どおりに矢子さんだったら、もちろん原作ファンとしては嬉しいけれど、ドラマを初めて観た人にとっては、ああ、セクシャルマイノリティの気持ちはセクシャルマイノリティにしか分からないのよね、っていう感じになっちゃってたと思います。「自分ごと」として受け止められないというか。そういう点で、佐山さんというキャラクターが多くの視聴者に支持されたのはドラマスタッフの工夫の賜物ということでしょう。

 

お料理も全部美味しそうでしたよね。やっぱ食べたいのは「はらこ飯」。鮭の炊き込みご飯にいくらをどっさりだなんて、もうどうやったって美味しいに決まってるじゃないかー!食べたいーっ!味噌焼きおにぎりも是非やってみたい。原作ではバケツプリンを作る話だったのが、ファーマーズマーケットの話の流れからのカボチャ丸ごとプリンに変更されたのも、画面映えも含めて最高でした。春日さんの「野本さん、天才ですか……?」っていう言い方も最高でさぁ、なんだろね春日さんホント可愛いよね可愛い可愛い可愛い。

あと、最終回で例の食堂が再登場するかなって思ってたら、やっぱり再登場してくれて嬉しかったです。ほんの少しだけ世界が優しくなっていく。春日さんに気づいた大将が、ペコリと頭を下げる仕草も良かったです。いい話だなー。

 

年末あたりに一挙再放送やってくんないですかね。

女性だけじゃなくて、男性にも優しいドラマだと思うのよ。男性だってクッキー型で抜かれているという点では同じですからね。あのウザい男性社員だって、最初は「彼女にお弁当作ってほしい」だったのが、終盤では「自分でお弁当作ってきたんだ、モテたくて」に変わったじゃないですか。モテたくて、っていう動機はどうかなって苦笑するけど、でも少なくとも彼は自分を変化させようとしているわけでしょう。もしかしたらそこから「お弁当作るの楽しいな!」になるかもしれないし。でもその時に、周囲から「男が弁当を作るなんておかしい」って言われるかもしれない。誰かからの一方的な「規範」に押しつぶされそうになっちゃうかもしれない。誰が作った規範。誰のための規範。何のための規範。「普通」って何?

 

いやー、本当にいいドラマでした!

ドラマからこの作品を知ったという方は、ぜひぜひ原作もお手に取ってみてくださいねー。真夜中にフルーツサンドを作る2人も可愛いのよー。見て見てー。