つれづれぶらぶら

5月の反射炉ビヤ行きますよー!酔い蛍グループの皆さんにまた会えるかな?

劇場版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

うちの息子は『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズが好きで、数冊ずつ図書館から借り出してきては熱心に読んでいるんです。よっぽど面白いんだろうなぁと思うんだけど、なにしろ長いし、登場人物も多すぎるし、さらにそれぞれの特殊能力であるところの「スタンド」まで含めると到底覚えきれないしで、私はスルーしていたんですね。

ただ、スピンオフ作品の『岸辺露伴は動かない』なら、1話完結型の短編集で、登場人物もそんなに多くないと聞き、パラパラっと読んでみました。

いわゆる怪奇ホラーというジャンルで、超常現象に巻き込まれる人々を能力者が救うという構図は『蟲師』や『宵闇眩燈草紙』に通じるものがあるかな(絵柄や派手さは全然違うけど)と思ったわけです。

そんなわけで、昨年末にNHKで放送されたTVドラマ版『岸辺露伴は動かない』第7話と第8話を観たんですね。

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いや、実を言うと、このドラマ版が始まった3年前から、気にはなっていたんですよ。だって、脚本:小林靖子なんだもん!

そうともさ、私はいわゆる「靖子にゃん信者」。電王もオーズもタイムレンジャーもトッキュウジャーも牙狼も好きだッ!セーラームーンだって忘れてないぞッ!好きなツンデレ男子は「滝沢直人」と「アンク」だッッ!そして理想の上司は「ドン・ドルネロ」一択だッッッ!

靖子にゃんが脚本を手掛ける以上、つまらないものであるはずがない、と信者は固く信じております。そして我らが靖子にゃんは、必ずその信頼に応えてくれるのです。要するに何が言いたいのかというと、そのドラマ版がめっちゃ面白かったってことです。

ジョジョ本編とは完全に分離させて、ヘブンズドア岸辺露伴が持つ「特殊能力」ということにしてスタンドの設定を省略し、原作ではごく一部の作品にしか登場しない編集者の「泉京香」をレギュラーとして狂言回しと説明役の役割を持たせたことで、物語がずいぶんスッキリまとまっています。泉くんの無邪気な性格が重くなりがちな内容を明るくしていますしね。こういった原作改変の上手さは、さすが靖子にゃんっすわ。

で、主役の露伴先生を演じるのが高橋一生くん、というのがとてもいい。


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『スパイの妻』と『カルテット』を観て、ああ、雰囲気のある素敵な俳優さんだな、と好感を持っていたんです。ちょっと含みのある表情が上手いですよね。微笑んで飄々とした言葉を口にしているけど、その視線が微妙にずれている。何か、こう、口にする言葉と本心が違うのではないか、そんな裏表のある、ちょっとサイコパスみのある役柄を演じるとすごく光りますよね。

なので、原作とはパッと見のビジュアルは全然違うんだけど、お芝居に入るとそれは紛れもなく露伴先生そのもの。傲慢で自信家でオトナ気なくて、好奇心の塊で怪異に首を突っ込んでは大変な目に遭う、実に魅力的な露伴先生がそこにいました。

そしてTVドラマの公開直後に発表された『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の映画化決定のニュース。これはもう絶対に観たいね、と息子と話していたんです。『ルーブル』の原作は図書館になかったので、新書版が出たタイミングで買ってやりました(っていうか私が読みたかったんだもん)。

で、準備万端ぬかりなく、劇場版の公開を待っていたというわけです。ハイお待たせしました、ここからようやく今回の映画の話ですよ。


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公開2日目の朝9時半からの回は、映画の上映後に「公開記念舞台挨拶の全国同時生中継」がセットになっているのです。通常料金で舞台挨拶(の映像)が見られるなんて、とってもお得じゃあないですかッ。楽しみ楽しみ。

ワクワクしていると、映画が始まりました。内容は――っと、おっとっと、まだ公開直後の作品なので、あまり話さないほうがいいですよね。あからさまなネタバレは避けつつ、ちょっとだけ匂わせ程度に触れておきますね。

物語の大きな枠組みとしては、上の本予告をご覧いただければ分かるように、岸辺露伴がまだ漫画家の卵であった青年期にある女性と出会い、その女性から聞いた「この世で最も黒く、邪悪な絵」がパリのルーヴル美術館にあることを知り、その絵を探すために向かったルーヴルで、世にも不可解で恐ろしい出来事に巻き込まれる――という物語です。これは原作漫画どおりですね。

ただ、原作漫画は比較的短い作品なので、映画化に当たっては何らかのエピソードを追加する必要があるだろうとは思っていました。まぁ、ゆーて靖子にゃんですからね、当然そのへんは抜かりありません。今回の作品のキーアイテムとなる【黒い絵】が、この映画では「2つ」存在します。なぜ2つ存在するのか、そのカラクリを解き明かすサスペンスミステリの部分が、今回の映画で追加された部分。前半部分はけっこうオリジナル要素が多いので、原作をお読みになった方にも「んッ?」と気になる部分があるかも。

そして、気になる露伴先生の過去。青年期の、まだ初々しく傷つきやすい「露伴くん」を長尾謙杜くんが瑞々しく演じています。この内気で不安げな長尾露伴くんが、どのような道筋を経たら、ジャンケン小僧を打ち負かして傲岸不遜に高笑いする高橋露伴に成長するのでしょうwww

その露伴くんの前に現れる女性・奈々瀬を演じるのが木村文乃さん。謎めいた表情や言葉で、露伴くんをさんざん惑わせます。要するに初恋の相手ということなんですが、実は――おっと、ここから先は劇場でお確かめくださいね。

物語終盤には、原作では明確に語られていなかった部分が丁寧に描かれます。そもそもの悲劇の始まりは何だったのか。黒い絵とはそもそも何なのか――。

映像がとても綺麗で、ロケーションも全て素晴らしいです。TVドラマでお馴染みの露伴邸の洒落た内観や、緑の樹々に囲まれた古めかしい日本旅館なども美しく、まぁ、何よりも一番素晴らしいのはやっぱり本物のルーヴル美術館ですよね。撮影は2日にわたって行われた(休館日1日+閉館後から朝まで)のだそうですが、モナ・リザサモトラケのニケなどの教科書で見た美術品もさることながら、その建物自体が既に巨大な芸術品である、というのはやっぱ圧巻です。よく撮影許可が取れたなぁという。

衣装が、今回は「黒」がテーマということで、モノトーンを基調としたデザインになっていたのがシックでかっこよかったです。そんな中で、露伴くんの白いシャツブラウスがまだ何にも染まっていない青年の心を表現していて良かったですね。

音楽もハマっていました。サスペンスだけに強めの音が多くて、美術館の地下に潜っていくときの強いピアノの音にはちょっとドキドキしました。メインテーマのアリアの、綺麗なんだけど少し不安になるようなメロディも効果的でした。

 

んーっと、本当はまだ色々と言いたいことがあるんだけど、何を言ってもネタバレになっちゃいそうだから、とりあえずここまで。総評としては、あまりジョジョシリーズに馴染みのない私も面白かったですし、ジョジョ好きの息子も面白かったと言っていました。原作を読んでなくても充分に楽しめると思います。

細かいことを言えばちょっと分かりづらいかなってところもいくつかあったんですけど、まぁ、靖子にゃんですし、よく観ればどこかにヒントが隠されているんでしょう。何回か観れば新しい発見があるのやもしれません。

 

上映後のお楽しみの舞台挨拶については、こちらの記事を参照してください。渡辺監督がチラッとネタバレっぽい言葉を口にしてしまって慌てたりする一幕もありましたよ~www

natalie.mu

それにしても高橋一生くんの声は本当にいいですね。あの低い声で、時々ふと言葉を選ぶように視線を斜め上に投げる仕草なんかもセクシーでたまんねぇっす。あと、まりえちゃんの着ていた黒のミニドレスが素敵でした~。

ジョジョ好きの方も、全然ジョジョ知らないっていう方も、怪奇ホラー好きの方も、年上の綺麗なお姉さんに振り回されたい方も、美術品大好きな方にもオススメです。ぜひ、劇場に足を運んでみてくださいね。