つれづれぶらぶら

ワクワクしている時って、本当に胸の中で何かが踊ってるみたいな感覚あるよね。

『北極百貨店のコンシェルジュさん』

今日は有給休暇を取って、TOHOシネマズ甲府まで映画を観に行ってきました。いやホラ、年末の繁忙期が始まっちゃったらなかなかお休みも取れなくなるしね。

上映スケジュールを眺めていたら、明日から上映作品ががらっと入れ替えになるようで「本日までの上映」と記載された作品の中に、前からちょっと気になっていた作品が2つもあったのです。今日は「TOHOウェンズデイ」で映画が1本1300円で見られる日だし、せっかくだから両方とも観ることにしました。

 

まず1本目は、『北極百貨店のコンシェルジュさん』。Production I.G制作のアニメ映画です。まずは予告編をご覧くださいな。


www.youtube.com

hokkyoku-dept.com

新人コンシェルジュとして秋乃が働き始めた「北極百貨店」は、来店されるお客様が全て動物という不思議な百貨店。

一人前のコンシェルジュとなるべく、フロアマネージャーや先輩コンシェルジュに見守られながら日々奮闘する秋乃の前には、あらゆるお悩みを抱えたお客様が現れます。
中でも<絶滅種>である“V.I.A”(ベリー・インポータント・アニマル)のお客様は一癖も二癖もある個性派ぞろい。

長年連れ添う妻を喜ばせたいワライフクロウ
父親に贈るプレゼントを探すウミベミンク
恋人へのプロポーズに思い悩むニホンオオカミ・・・

自分のため、誰かのため、様々な理由で「北極百貨店」を訪れるお客様の想いに寄り添うために、秋乃は今日も元気に店内を駆け回ります。

(公式サイトより転載)

「♪な~んで~も、そ~ろ~う~♪ほっきょくひゃっかてん~♪」というテーマ曲が高らかに鳴り響く、見るからに高級感のある巨大デパート。淡いトーンで描かれた背景美術がまず目を惹きます。美しい飾り窓、広大な吹き抜けのエントランスホールには輝くシャンデリア、高く積み上げられた色とりどりの商品……。

映画の冒頭で、その美しい光景に興奮して思わず駆け出してしまった少女(幼い日の秋乃?)がいますが、私自身、幼い頃に両親に広島市内のデパートに連れていってもらった時の、あの走り出したくなるような胸の高まりを思い出しました。今では買い物っていうとテナントがいっぱい入った郊外型の大型ショッピングモールが主流ですけれども、やっぱね、デパートの思い出っていうのは格別なんですよね。食べるのがもったいないぐらいに綺麗に盛り付けられたプリン・ア・ラ・モードとか、子どもに対しても丁寧な敬語で応対してくれるコンシェルジュさんとか。

そんな「特別な空間」であるデパート、でもこの北極百貨店のお客様はなんと「動物」。しかもその多くが絶滅種あるいは絶滅危惧種なのだから、それはもう「とびっきりの特別な空間」なわけです!

物語自体は、よくある「お仕事ドラマ」の王道パターンを踏襲しており、そこ自体に目新しさはありません。やる気だけはあるが実力が伴わない新人が、とんでもない失敗をやらかして客や職場に迷惑をかけつつも周囲の助けを得て挽回し、少しずつ成長していく。周囲のメンバーも、時にはぶつかり合いながらも、新人の熱意に引っ張られるようにして次第に結束し、最終的には客に信頼される唯一無二のチームになる……という典型的なストーリーです。だもんで、この作品でも初っ端から盛大に秋乃は数々の失敗をやらかして凹みまくるのですが、結末はお約束のハッピーエンドです。ご安心ください。

でね、絵柄がとにかく可愛い。ふんわりほんわりした丸っこい人物や動物たちのタッチと、淡い色合いで描かれた背景美術との組み合わせが、なんともいえず目にも心にも優しい。癒されるゥゥ~。ここんとこ仕事が忙しくて気持ちがささくれてたから本当に癒されるゥゥゥゥ~~~( *´艸`)

コンシェルジュカウンターに持ち込まれる動物たちの相談ごとも、大切な相手に贈るためのプレゼント選びのお手伝いだったり、本の栞に残されたかすかな香りから香水を探し出すミッションだったり、プロポーズの演出だったりと、さまざま。お客様のしょんぼりする顔が見たくなくて、秋乃はついつい「お任せください!」と安請け合いしてしまって、そのたびに奔走する羽目になります。それでも、目的を達成できたお客様からの「ありがとう!」の笑顔が、いいんですよね~。

 

ところが、この映画、単なる「ほのぼの癒し系映画」に見せかけて、実のところ、その裏側には闇の部分を隠し持っているのです。

デパートとは、すなわちお客様の「物欲」を最大限に満たさんとする場所。そして、この百貨店で最大限のもてなしを受けるVIA(ベリー・インポータント・アニマル)は、その多くが、かつて人間の「物欲」によって乱獲され絶滅した種族。その絶滅種自身の物欲を満たさんと、人間がおもてなしするという、この皮肉めいた構造。

あれが欲しい、これも欲しい、あれは要らない、もっともっと欲しい……!過度に膨れ上がった欲望は、時として醜悪な一面をかいま見せます。「♪な~んで~も、そ~ろ~う~♪ほっきょくひゃっかてん~♪」という明るいテーマ曲にも矛盾が含まれています。そういった毒の部分があることで、この映画はただのほのぼの映画とは一線を画す深みを持っているのです。

 

とはいえ(イマドキあちこちで話題になっているような)、鼻につく説教くささや、過度なメッセージ性は抑えられています。観客に考える余地を残したまま、物語自体はあくまでも王道のお仕事ドラマとして、穏やかに流れていきます。そして、一時の物欲ではなく、本当の「満足」とはどういうことか、コンシェルジュたちだけでなく、スタッフも、客自身も、さまざまなトラブルを通じて、お互いの知恵を出し合って、補い合っていくのです。そんな素敵な「特別な空間」、それが北極百貨店。

 

心が癒される優しい映画です。お仕事ドラマがお好きな方、動物がお好きな方、デパートに憧れたことがある方々に特にオススメです。本日までの上映となっている映画館が多いですが、これから上映するという映画館もあるみたいですよ。なんと、我らが「岡谷スカラ座」では明日23日からの公開となっているようです!諏訪地域の皆さんも、ぜひぜひ、岡谷スカラ座に足を運んでみてくださいね!

『春画先生』

いつも、YouTubeで新作映画の予告編をあれこれ物色しているのですが、すると先日、実にヤバい感じの動画がオススメに上がってきたんです。


www.youtube.com

P音とバキューンだらけの謎の動画。そして最後にどどーんとでっかく表示される「15禁」映倫表示。そして、ここで紳士淑女が鑑賞しているのは、かの「鉄棒ぬらぬら」先生の不朽の名作、「蛸と海女」ではありませんか!

sister-akiho.hatenablog.com

そう、この映画春画先生』の題材は、タイトルそのものの春画。その春画を偏愛する「春画先生」と、春画先生に一途に想いを寄せる若い娘の、変態ぬらぬらラブコメディなのであります。

happinet-phantom.com

春画先生”と呼ばれる変わり者で有名な研究者・芳賀一郎は、妻に先立たれ世捨て人のように、一人研究に没頭していた。

退屈な日々を過ごしていた春野弓子は、芳賀から春画鑑賞を学び、その奥深い魅力に心を奪われ芳賀に恋心を抱いていく。

やがて芳賀が執筆する「春画大全」を早く完成させようと躍起になる編集者・辻村や、芳賀の亡き妻の姉・一葉の登場で大きな波乱が巻き起こる。

それは弓子の“覚醒”のはじまりだった────。

(公式サイトから引用)

 

春画かぁ。以前、芸術新潮だったか何かの雑誌の特集で見て、そのおおらかさやユーモア、多彩な技巧に驚いたことがあります。特に鈴木春信の「風流艶色真似ゑもん」シリーズが面白くてね。コロポックルみたいなちっちゃな侍・真似ゑもんが、市井の人々のエロチックな場面をこっそり覗き見ている、といった趣きの滑稽画なんですけども、男女の交わりのシーンかと思いきやよく見ると男色だったりとか、色々と驚きのある絵なんですなこれが。

というわけで、ちょっと面白そうだなーと思いまして、今日も今日とて特急あずさに飛び乗って、ちょいと東京・銀座のシネスイッチ銀座さんへ行ってまいりました。

 

で、映画の内容は────というと、まだ公開直後の映画ですし、それに何しろ15禁の映画ですから、あんまりネタバレとか具体的なお話はできないんですが、とりあえずこれから観ようかなとお考えの方にね、最初にちょっとお伝えしといたほうがいいかなーと思うことをネタバレになんない程度にちょいちょいと。

まず、「15禁」ってことで、先の予告編を観た段階では「無修正の春画が画面に出るからかな?絡みのシーンもありそうだな。でも15禁ってことは露骨な絡みでもなさそうだし、『ドライブ・マイ・カー』くらいのエロ表現かな?」と思っていましたが、見終えた感想としては────、

これ15禁どころじゃねぇやwww

こんなもん中高生に見せられへんwww

ええとね、画ヅラとしてはね、さほどヤバくはないんですよ。濡れ場はいくつかあるけど、せいぜいおっぱいとかおしりが見えるぐらいで、そんなもん今どきのスレた中高生は動揺もせんでしょ。ましてや無修正の「春画」ったって「絵」だし。

だけど、この映画のヤバさは画ヅラの問題じゃないんすよ。

展開がめちゃめちゃド変態www

映画の中の台詞で言えば、登場人物がそれぞれ性癖のリミッターを外されちゃったヒトばっかりで、しがない喫茶店のウエイトレスであった弓子さんは、あーんなこと(ピーッ!)や、こーんなこと(ピーッ!)や、さらには、そーんなこと(バキューン!!)までさせられちゃって、そのたびに怒りをぶちまけるんだけれども、弓子の怒った顔こそが春画先生の大好物だっていうんだから、もうタチが悪いったらありゃしない。

 

そんな「春画先生」こと芳賀一郎を演じるのは、現在シーズン2が絶賛放送中の『きのう何食べた?』でケンジを演じている内野聖陽さん。柔らかい雰囲気のケンジに対して、春画先生は何を考えているのか分からない浮世離れした感じで、雰囲気が全然違う。内野さんは熱血漢だったりヤクザだったり、役ごとに雰囲気がガラッと変わる技巧派の役者さんで、ホントどんな役柄を演じてもすごくハマる。さすがだなぁ。

また、春画先生の助手として、弓子さんを変態の道に引きずり込む編集者の辻村を演じるのは、『シン・仮面ライダー』で一文字隼人を演じていた柄本佑さん。本作でも軽妙洒脱な持ち味を活かして、性に奔放なバイセクシャルを演じています。あの空色のブーメランパンツのインパクトが目に焼き付いて離れないwww

さらに、弓子さんを精神的にも肉体的にも苛む、春画先生の亡き妻、そしてその双子の姉の2役を演じるのが安達祐実さん。現在放送中の『大奥』では額に青筋を立ててキレ散らかす松平定信をすごい迫力で演じていますが、本作においてもまた強烈な役どころを迫力満点に演じていらっしゃる。だけどすっごく綺麗で、黒いレースのドレス姿が猛烈にエロチック。

そんな強烈な変態たちによって、ド変態の道に引きずり込まれていくヒロイン・弓子さんを演じるのが北香那さん。大河ドラマなどでご活躍中の新進気鋭の若手女優さんだそうですが、いやはや、この「弓子」という癖の強いヒロインを見事に演じ切っておられました。もうね、この映画は彼女を見るためにあると言ってもいいんじゃないかな、それぐらいの存在感がありましたよ。

弓子さんは、パッと見は、清純でおとなしそうな若い娘さんなんだけれども、その薄皮一枚の下にはドロドロのマグマのような情念が滾っていて、感情の発露のエネルギーがすさまじい。喜怒哀楽が全部顔に出ちゃうタイプで、とりわけ怒りのパワーがものすごい。直情型で、物怖じせずに思ったことを真っすぐに口に出す。そして勘が鋭くて、春画の中に描かれた物語や感情も余さず読み取っては春画先生を感動させ、最終的には春画先生そのひと自身についても悟ってしまう。

濡れ場シーンでの北香那さんの脱ぎっぷりも良くて、あられもない声も存分に堪能することができますが、しかしながら、そのエロスだけに目を向けてしまうと、その外側にあるさまざまな物事を見逃してしまう────、そう、序盤に春画先生がレクチャーした春画の見方のとおり、その一点だけに注目してしまうのはもったいない。むしろ、どんどん偏愛の世界に引きずり込まれてしまう弓子さんの変身の過程を、その表情や仕草から読み取っていってほしい、そう思うのです。

 

ところで、この映画自体は、なんというか極めて昭和的なムード、そう、伊丹十三あたりの映画を連想させるような────、もっとズバリ言っちゃうと「日活ロマンポルノ」的なニュアンスを、かなり露骨に表現しています。って、日活ロマンポルノを観たことはないんだけどね。でも多分こんな感じなんだろうなぁ的な。あの回転ベッドとか、あのお屋敷の赤いベッドとか。何かのパロディかな?と思うシーンもちらほら。

そして、物語自体も極めて昭和的。谷崎潤一郎とか夢野久作とか、あのあたりが好きな方ならハマるかな。ぶっちゃけ、ネタバレを恐れずに言えば、この作品の大枠自体は、谷崎潤一郎の『刺青』と同じだったりするわけです。芸術に魅入られた男が、無垢な女を虜にして自分の芸術の道具にしてしまうのだけれども、その芸術が完成したとき、その女の中に秘められた魔性が覚醒して、主従関係が入れ替わる。そういう話なわけです。ただ、まぁね、そこに至るまでの道程が色々とね、現代のお話ですもんで、違うわけなんですけども。うーんスマホをおでこに貼るのはどうだろうねwww

 

なんだかんだ申し上げましたが、特定の方々にはめっちゃ面白い、人を選ぶ映画に仕上がっております。私ですか?ええ、めっちゃ面白かったです。何度も笑いましたよ。引き笑いも含めてねwww

ちなみに、春画についての細かいレクチャーは前半部分のみで、後半になると春画自体はたいして関係なくなっちゃいます。そんなわけで、「春画自体には学術的な興味があるけど、恋愛ドラマには興味ない」という方は、11月公開予定のドキュメンタリー映画『春の画  SHUNGA』をご覧になったほうがいいかもですね(ただし18禁)。

www.culture-pub.jp

『世界のはしっこ、ちいさな教室』

今日は月の初めの1日。ということは映画が安く観られる「ファーストデー」。そして、何の予定も入っていない日曜日。うん、映画を観に行くっきゃないな、と思ったものの、近隣のシネコンのラインナップにはピンとくるものがない。どうしよう。

そういえば、先々月の8月1日のファーストデーにも映画を観に行ったっけな。そうだ、塩尻市の東座(あずまざ)だ!

sister-akiho.hatenablog.com

さっそく今日のラインナップを調べてみると、とても気になるタイトルの映画が上映されていました。それが『世界のはしっこ、ちいさな教室』(2021年:フランス映画:エミリー・テロン監督)です。さっそく観に行ってきました!


www.youtube.com

hashikko-movie.com

この映画は、西アフリカ・ブルキナファソのティオカガラ村、南アジア・バングラデシュのスナムガンジ地区、ロシア連邦アムール州遊牧民キャンプという3つの辺境で、小さな子どもたちのために働く3人の女教師の姿を捉えたドキュメンタリー映画です。

 

ブルキナファソは、15歳以上の識字率が41.2%と世界最低ランク。新人教師は6年間の任期で各地の小学校に赴任することになっている。2児の母でもあるサンドリーヌの赴任地は、首都から600㎞も離れた辺境の村。電気も電話も水道も満足でなく、教室も吹きさらしの土の小屋。教師は新米のサンドリーヌただ1人、生徒は50人余り。しかも、この村では5つの言語が飛び交い、公用語のフランス語を理解できる子どもがほとんどいない。初日からの前途多難に、サンドリーヌは溜息をつく────。

 

シベリアの凍てつく雪原を、トナカイの橇でひた走る中年女性がいる。彼女は、遊牧民であるエヴェンキ族のキャンプを転々としながら、テントで移動教室を開いているスヴェトラーナ。彼女は、ロシア連邦の義務教育とともに、エヴェンキ族の伝統や言語、アイデンティティを継承しようとする。しかし大自然の中で生きる子どもたちを、勉強に集中させること自体がまず容易ではないのだ────。

 

モンスーンの影響で1年の半分が水没するバングラデシュ北部のスナムガンジ地区。ボートの上の学校で、子どもや女性の権利を守るために人道支援団体から派遣された22歳の若き教師・タスリマ。バングラデシュでは女性の結婚年齢は18歳以上と法律で定められているにもかかわらず、15歳未満の女子の約16%、18歳未満の51%が児童婚させられている。女子は高額の持参金と引き換えに結婚させられるのが常で、教育を受ける必要などないという風習に、若きタスリマは毅然と立ち向かう────。

 

都会の恵まれた環境で学校に通える子どもたちに対し、彼女たちが直面しているのはあまりにも過酷な環境。彼女たちを突き動かすのは、「子どもたちに広い世界を知ってほしい、自分たちで未来を切り開く力を身に着けてほしい」という強い想いだけ。女教師たちは子どもたちに親身になって寄り添い、子どもたちの意欲を引き出そうとします。

ブルキナファソの少年・イヴは言葉も計算もろくにできない落ちこぼれ。そんな自分が情けなくて、友達から離れてひとりポツンと座っています。そんなイヴにサンドリーヌは、自分自身も何度も間違えたが、そのつど先生が繰り返し教えてくれたのだと優しく語りかけます。その言葉に勇気を貰ったイヴは学習意欲を持ち、いつしか成績優秀な生徒として表彰されるまでに至ったのでした。

バングラデシュの女の子・ヤスミンは中学校に行きたい、そしていつかタスリマのように自立した女性になって家計を助けたいという夢を持ちます。しかし、母親からは女子に学業など不要だと猛反発を受けています。文房具を買う金もない、早く結婚させたいと主張するヤスミンの母親に、タスリマは果敢に反論し、ヤスミンの夢を必死で守ろうとします。懸命な勉強の甲斐あって、めでたく中学受験に合格したヤスミンは、中学校の制服を着た姿を母親に見せるのでした。

シベリアの少年たちは、スヴェトラーナが作ったエヴェンキ語の詩に興味を示さず、覚えようとしません。でもスヴェトラーナはへこたれません。ならば、自分たちでエヴェンキ語の詩を作ってみようと提案します。これには少年たちも面白がり、即興で一節ずつ詩を作っていきます。絵を描くことを楽しみ、トナカイと共に生きる少年たちに、スヴェトラーナは優しい視線を送りつつ、次のキャンプ地へと旅立っていくのでした。

 

この映画のテーマは、『ウィ、シェフ!』や『エンドロールのつづき』と同じもので、貧困や旧い風習による社会構造の歪みの中で子どもの自由が奪われている状況、そして、学ぶことによって子ども自身が未来を掴み取ろうとするさまを描いています。

sister-akiho.hatenablog.com

義務教育就学率99.96%の日本では「教育のありがたさ」について真剣に考える機会がほとんどありませんが、世界には教育を受けられない子どもたちが1億2100万人、教育を受けられずに読み書きができない非識学者は約7億7300万人(世界の15歳以上の7人に1人)もいるそうです。

しかし、思い返せば日本でも少し前まで、『この世界の片隅に』の遊女・リンさんのように貧困ゆえに学校に行けず、文字が読めないという人は実際に存在したわけです。教育が与えられることは決して当たり前ではなく、その社会が教育の必要性を強く認識し続けていないと、脆く失われてしまうかもしれないのですね。そして、社会に歪みが生じたときに、真っ先に犠牲になるのが子どもたちの人権なのです。私たちひとりひとりがそれを自覚していかなければ────、そんなことを考えさせてくれる素晴らしい映画でした。是非、機会があればご覧になってくださいね。