つれづれぶらぶら

一気にまとめて書こうとしたけど時間が足りないので、旅行の記事はちょこっとずつ書いていきますね。

合格祝いのスパリゾートハワイアンズ&アクアマリンふくしま(上)

先週末の15日(金)の夜から17日(日)まで、家族旅行に出かけてきました。

うちは毎年お正月の休みには家族で伊豆あたりに旅行に行くのが通例だったんですけど、さすがに息子が中学3年の受験生だったもんですから、旅行に出かけている余裕なんてなかったんですよね。志望校に合格したら、春休みに家族旅行に行こうねって、ずっと前から約束してて、息子もそれを励みに頑張ってきたんです。

で、おかげさまで、めでたく合格しまして。

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予想よりも早く合格が決まったものですから、だったら春休みが始まって観光地が混み合う前に一足早く出掛けちゃおうじゃないかということで、この3月中旬の土日に決まり。

そんでもって、行き先自体は、もうずーっと前から決まっていたんですね。息子が小学生の頃からしきりに行きたい行きたいと言い続けていた、福島県スパリゾートハワイアンズアクアマリンふくしま。私にとっても福島県はまだ行ったことのない県だったので、ぜひ行きたいとは思っていたんですよ。

www.hawaiians.co.jp

とはいえ福島県は遠いよなぁ、鉄道を使うにしても自家用車で行くにしても移動が結構しんどそうだな、と思いつつ公式サイトを見てみると、なんと、宿泊客限定で、東京・新宿・さいたま・横浜・西船橋・松戸・千葉から無料送迎バスが出ているという。えっ、無料?そりゃあ随分と有難い話じゃないかと飛びついたものの、新宿便は朝9時20分に都庁前に集合とのこと。特急あずさの始発に乗っても新宿駅には朝9時11分到着だから微妙に間に合いそうにない。うーん、どうしたもんか。

すると旦那が「金曜日の夜に東京駅近くで前泊して、朝7時の【早朝出発東京便】を使うのはどう?それなら午前中にハワイアンズに着くから、ゆっくりプールで遊べるじゃない」と提案してくれました。おお。いいね、それ。

さっそく、土日のハワイアンズの宿泊と送迎バスの予約、金曜の東京駅近くのビジネスホテルの予約、特急あずさの行きの指定席などなど、さくさくと手配を進め(元・出張族なので、この手の作業には馴れているのだ)、水着やら着替えやら酔い止め薬やらの準備も済ませて、ついに約束の15日。休暇を1時間申請して早退し、家族と一緒に特急あずさで東京へ向かいました。ああ、夜の東京の街って華やかで賑やかだねぇ~。

せっかくここまで来たのだから、晩御飯は久々に【Big-Pig 神田カープ本店】で広島風お好み焼きを堪能。華の金曜日とあって店内は混雑していましたが、事前にちゃんと予約しておいたのさ、ふふっ。息子とは何度もビッグピッグに来ていましたが、旦那を連れてくるのは初めてです。カープ一色に染まる店内の様子に目を丸くしながら、お好み焼きやコウネ焼き、がんすなどの広島の味を堪能していました。

 

そして、翌朝。絶対に寝坊は許されないと、アラームを山ほどセットしておいたおかげで、朝6時には全員目が覚めました。さっさと身支度を済ませて、7時過ぎに集合場所の丸ノ内鍛冶橋駐車場へ。既にバスは来ていたので、受付を済ませて乗り込みました。

スカイツリーを横目に眺めながら、バスは北へ北へ。常磐道の守谷SAと友部SAで2回のトイレ休憩を挟み、行きのバスはとりたてて何もトラブルに遭遇せず、10時半頃にスパリゾートハワイアンズに到着しました。着いたぜー!

私たちが今日泊まるホテルはモノリスタワー】。さっそくフロントでチェックインの手続きをしますが、お部屋に入れるのは13時以降だということで、先にプールで思いっきり遊んでくることに。館内の移動に必要な入場券(チケット)を手に入れたら、水着と貴重品以外の荷物をクロークに預け、いよいよ【ウォーターパーク】に向かいます!

でっけぇ~!全天候型の巨大ドーム施設の中に足を踏み入れると、そこはもう南国。もわっと温かい空気が身体中を包み込みます。さっそくプールに飛び込みたいところですが、ふっふっふ、まずは何よりも最初に堪能しておきたいアクティビティがある!

全長283m、高低差40.5mという日本一のボディスライダー【ビッグアロハ】!これはスゴイ、めっちゃスリルがあって怖いけど楽しい、という評判を前々から耳にしていたのですよ。

……って、えっ?知らなかったんだけど、昨年9月の台風で破損して、ずっと休業していたの?で、ようやく修理が終わって、昨日(15日)から再始動したって?ええーっ、知らなかったとはいえ、こりゃラッキー!再始動ほやほやのビッグアロハを堪能してきましょ!


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20分ほど並んで、いよいよ私たちの番。息子と旦那はウェーブライン、私はスパイラルラインを選択して、いざ出発!

最初のうちは、パイプも半透明で速さもそこそこ。いやっほー、たーのしーい、なんて余裕かましていられたのも束の間、赤やオレンジのパイプの中に突入すると視覚情報が一気に奪われた感じになって、その中を勢いよくグルングルンと振り回されるもんだから、うわわわわ、ちょっ、怖っ。しかし、本当の恐怖はその先。真っ暗なパイプの中に放り込まれると、視覚を完全に奪われた上に、パイプに描かれたネオンカラーのスパイラル模様が作り出した錯覚に、脳が激しく混乱し始めます。スパイラル模様は徐々に密度を増し、実際の速度以上に、一気に加速していくような感覚に襲われます。しかも、そこからがめっちゃ長い!まだなのー?もういいよー!やだ、速い速い速い速い、怖い怖い怖い怖い、落ちる落ちる、これもう垂直じゃあああん、ずどーん(落水)。

パイプから放り出されてプールの中に沈むと、一瞬、どっちが上でどっちが下なのか、前後左右の感覚も分からなくなってしまいます。あ、ダメや、溺れる、と思った瞬間に、スタッフのお兄さんの両手がサッと私を抱え上げてくれて、水上に顔を出すことができました。ふいー。生きてたー。怖かったーッッッ。

目の前には休憩所があって、先に滑った旦那と息子が、足湯で温まりながら私を待っていました。ウェーブラインはどうだったかと聞くと、あっちはあっちで、パイプの中に描かれた波打つ模様のせいで方向感覚が完全におかしくなり、激しく揺さぶられているような感覚の中で滑り落ちていたとのこと。ううう、どっちも怖いじゃぁん……。

乗り込む前までは、スパイラルラインとウェーブラインの両方やってみたい!なんて息巻いていましたが、さすがにビッグアロハは1回で充分にお腹いっぱい。おとなしくウォーターパークに戻りましょ……。

 

でもでも、ウォーターパークの中にもスライダーはたくさんあるのよね。スライダー全4種1日乗り放題券を購入しているので、お客さんがまだ比較的空いている午前中のうちに乗りまくっちゃうぞう!

【マウナ・ブラック】は、専用の浮き輪に乗って、全長131m、高低差17.5mの真っ黒いパイプの中を滑り降りるもの。まぁ、ビッグアロハの後やけん、たいしたことはなかろ、と完全に油断していたものの、黒いパイプの中は完全な闇。何の手がかりもない暗がりの中を高速で駆け抜け、ところどころに光が差し込む場所があったと思うと、そこで大きく浮き輪がホップする仕掛けになっていたりして、こちらもまぁまぁ心臓に悪い。そして最後はやっぱりプールの中に真っ逆さまにズドーン。ぎゃあ。

これに対して【ラキ・リバー】のほうは、逆に「滑れない」という正反対の気持ちになっちゃう面白い仕掛け。こちらも専用の浮き輪にのって出発するところは一緒なんだけど、コースの傾斜が緩くて幅も広く、ところどころに流れの止まる箇所がある。そこに、浮き輪に乗って滑り降りてきたお客さんたちが滞留してしまい、まるで小川の縁に引っかかった木の葉のようにごちゃごちゃと群れておしくらまんじゅう状態。その中から、ひとり、またひとりと次のスロープへと押し出されていく……という感じ。うっかりしていると流れに乗りそびれて、ずーっとその場でくるくるくるくる、ただひたすら回り続けるだけの存在になってしまったりして、誰でもいいから押してー!って気分になります。そのぶん、ツルっと流れに乗れた瞬間の解放感は最高!私も息子も面白がって、私は3回、息子は4回もリピートしちゃいました。

その後は、もうさすがにスライダーは飽きた、のんびり泳ごうぜと旦那が言うので、レンタルの浮き輪を借りて、【流れるアクアリウムプール】でまった~り。1周130mのプールは、ゆるく一定方向に温水が流れています。中央には熱帯魚が泳ぐ水槽があって、浮き輪に身体を預けたまま、ボーッとお魚を眺めながら過ごします。

 

その後はプールサイドで昼食。そうこうしているうちに、水着が冷えて肌寒くなってきたので、男女一緒に水着で入れる屋上スパリゾートスパガーデン パレオ】へ移動します。温水プールに、ジャグジー、ドライサウナなど、さまざまな施設があります。サウナは比較的ぬるめなので、子どもと一緒に入っても安心。屋上じゅうに、楽しそうな子どもたちの歓声が響き渡ります。

その下の階は【スプリングパーク】。こちらには、男女共用の水着着用エリアと、男女別々の温泉エリアがあります。とりあえず家族で水着着用エリアをひととおり体験したら、そろそろ疲れが溜まってきたので、そろそろホテルの客室に入って休もうぜということに。更衣室で服に着替えて、再びフロントに行って客室のカギを貰い、クロークに預けた荷物を回収してから、今夜のお部屋に向かいます。

 

部屋は、広々とした洋室の奥に畳敷きの小上がりがついたタイプの和洋室で、ベッドが2つ。お布団は後でスタッフさんが敷きに来てくれるとのこと。しばらくはベッドでごろごろしてテレビなんかを見つつのんびり過ごしていましたが、せっかくスパリゾートハワイアンズに来たのだから、隅々まで見て回りたい!と思い、広大な館内を探検することにしました。館内には要所要所にゲートがありますが、最初に貰った入場券(チケット)をかざせば通行可能です。

館内には、ちょっと目立ちにくい場所にありますが、常磐炭鉱の隆盛時代とその没落、常磐ハワイアンセンターの始まり、映画『フラガール』の撮影の裏側、「フラ」と「フラダンス」などについて学べる資料館もありますよ。一見の価値ありです!

旦那は、恒例の「変な柄の男性用パンツ」を求めてあちこちのショップを覗いていましたが、水着やTシャツはたくさんあっても肌着を売っている店はなく、ちょっと残念そう(笑)

館内をうろうろ歩き回っていると、そろそろ時刻は夜。お楽しみのディナーと、ハワイアンズ名物のショーを堪能する時間がやってまいりました……というところで、この続きはまた後ほど。遊びすぎて眠いので、今夜はおやすみなさい!(笑)

劇場版『ゴールデンカムイ』

遅ればせながら『ゴールデンカムイ』の映画を観てきました。


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もちろん映画化の話はずいぶん前から聞いていたんだけど、あの漫画を実写化するのは困難だろうと思っていたもんですから、かなり不安があったんですよね。好きな漫画のイメージを壊されたらファンは悲しいじゃないですか、ねぇ(過去のあれやこれやを思い出しながら遠い目をする)

それでも、公開後の原作ファンの声は総じて高評価。意外と良かった、面白かった、キャストが神ってた、アシパさんの変顔も良かったぞ、などなどの声を聞いて、ほほう、それじゃいっちょ観に行ってくるかね、と岡谷スカラ座に向かったのでした。

 

そんでもって、総評としては、確かに面白かった、キャストが神ってた、原作のイメージどおりだった、アクションもVFXも素晴らしかった、とはいえ原作はさすがに越えられなかったかな、という感じ。

 

先にマイナス面の感想から言っておくと、やっぱりどうしても原作の持つギャグの要素はあまり表現できてませんでしたね。ギャグ要素はほとんど白石の登場場面に限られていた感じです。アシパさんの変顔とかも頑張ってたんだけどね。とはいえ、原作は、死ぬか生きるかという極限状態のシーンに大胆にギャグを放り込まれてたり、下ネタや不謹慎ネタも躊躇なく出てくるし、元ネタを知らないと「?」ってなるパロディも多かったりするんで、それをそのまんま実写で表現したらかなりお寒いノリになっちゃうと思います。

そもそも、漫画と実写では、画面から受ける印象もずいぶん変わりますしね。例えば、今回の映画だと、みたらし団子の串を頬に突き刺すシーン。あれは原作だと「鶴見さんマジやっべーwww」って感じの引き笑いを誘発されたんだけれど、それをそのまんま実写でやっちゃうとただただ痛々しい。思わず頬っぺたの筋肉がキュッッて引きつっちゃったぐらい、ちょいグロでした。そのあとの二階堂兄弟による拷問シーンも実写だとグロ味が増し増し。

というわけで、この点に関しては、まぁしゃーないという感じです。とはいえ、ギャグ要素のない金カムは金カムじゃないので、今後のWOWOW版に期待しておきましょうかね。例の「ラッコ鍋」やるのかしら観たいわ観たいわwww

 

ここからは良い評価。

やっぱ、キャストが、評判どおり良かったですね。

山﨑賢人くんは杉元を演るにしては線が細すぎるし顔が幼すぎるだろう、と思っていたのですが、観ているうちに気にならなくなってましたね。お風呂場のシーンでの鍛え上げられた筋肉にも、おお、しっかり身体を作ってきているな、と。

アシパさんは原作では12歳ぐらいの設定なので、山田杏奈さんだと大人すぎるじゃんと懸念していたのですが、これもまた観ているうちにさほど気にならなくなってました。山田杏奈さんは童顔だし、アシパさんは年齢の割に大人びている設定なので、こんな感じかなと。っていうか、ちゃんと変顔をやってくれたのが嬉しかったです。

漫画からそのまんま飛び出してきたのかと思うレベルでイメージどおりだったのは鶴見中尉と土方歳三。今回の映画は、予想以上に「鶴見VS土方」の構図をどーんと前面に押し出してきています。そして、鶴見中尉を演じた玉木宏さんも、土方歳三を演じた舘ひろしさんも、圧倒的な存在感でスクリーンを支配していました。もう今回の映画はこの2人が主役と言っても過言じゃないんじゃないかな。もちろんお2人とも大ベテランなので上手いのは当たり前なんだけど、なんつーかね、もう纏っているカリスマ性がキャラクターそのまんまで、ほんまヤバかっこいいっす。声もいいんだよねぇ。


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そのほかのキャストだと、白石を演じた矢本悠馬さんも良かったね。今回の映画のコメディ要素を一人で担っていた印象ですが、本当に飄々としたお調子者の感じがめっちゃ白石でした。格子戸からにゅるんと出てきた勢いのままでズザーッと滑ってくるのとか、もうめっちゃ楽しかった(笑)


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それはそうと、WOWOW版では例の「白石のゴールデンシャワー」やるんだろうか(笑)

 

言及している人が少ないから私が言うけど、私が「お!これこれ!」と思ったのは、マキタスポーツさんが演じた後藤竹千代ですよ。最初に金塊の話を杉元に教えた酔っ払いのおっさんね。マキタさんはこの手の「ついうっかり余計なコトをしちゃうおじさん」の役どころを演じるとめちゃくちゃハマるよね。もう初っ端から酔っぱらってて、ぼやーっとしながらベラベラ喋っちゃう。んで、目が覚めてから自分のしでかしたことの重大さに気づいて慌てて対処しようとするも、既にその時点では死亡フラグががっちり立ってしまっている。こういうキャラクターにマキタさんを抜擢したキャスティングが素晴らしいですよ、うんうん。

 

映画全体の話。

序盤にけっこうしっかり長めに二百三高地の描写があったのに驚き。アクションが得意な監督さんとは聞いていたけど、こういった「戦争」をガチめに描くのは難しかったろうと思います。誰かが「英雄」に見えてもいけないし、死は死として誤魔化さずに描かなきゃいけないし。初っ端でこういった重めの描写が長めにあったことで、全体がよりシリアスな空気をまとった気がしますね。ま、杉元の背景を描くにはどうしても二百三高地のエピソードが必要になりますし、今後のWOWOW版でもしばしば振り返ることになるであろうシーンですから、あらかじめスクリーンでしっかり見せておこうという判断だったのでしょうかね。

今回の映画は漫画の序盤部分(3巻ぐらいまでかな)なので、尾形とか谷垣とかのメインキャラクターはまだその実像を明らかにしていない段階。っていうか、序盤の尾形ってこんな感じだったっけねー。もうすっかり尾形には「病んデレヒロイン」のイメージがついちゃってるもんで、こんな普通の鶴見さんの部下だった時代があったことを忘れかけておりましたよ。谷垣も、今はまだ普通に兵隊さんだけど、この先に「ムチムチセクシー担当(主に胸毛)」になる日が来るわけで、大谷亮平さんがこの先ますます牝牛のようにムッチムチになるのかと思うと、むっふー(セクハラ的な視線を送る)

あとは、チンポ先生こと牛山辰馬も非常に原作のイメージどおりだったので、今後のアシパさんとの関係性が楽しみです。「お嬢」って呼ぶとこが好きー。牛山はぶっ飛んだ性格のキャラが多い金カムの中で数少ない常識人だし、スーツが似合うカッコイイおじさんなので、さらなる活躍を期待します。

VFXは、さすが白組が参加しているだけのことはあって、全体的に素晴らしいクオリティでしたね。レタの純白の毛が月の光を浴びているところなんか、うっとりするぐらい綺麗。


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というわけで、事前に「原作クラッシュされたらどうしよう」と考えていたのが懸念に終わったぐらい、安心して観ていられる映画でした。とはいえ、物語の本編はこれからなので、このクオリティのままWOWOW版を完走できるのかという次なる懸念もあります。ま、期待して待っていましょうかね。

……とか何とか言っているけど、私はWOWOWには加入していないのだよ(;^ω^)ま、おそらくは『殺意の道程』のときのように劇場公開版も編集してくれることと思うので、その日を楽しみにしておくことにします。とりあえずラッコ鍋は必ず見たいので、飛ばさずに実写化してください。相撲すっか!!!(笑)

広島人は何でも「つぐ」

先日の雪の夜のこと。灯油ファンヒーターの灯油が切れてしまいまして、ベランダに置いてあるポリタンクから給油しないといけなくなったんです。しかしながら、なにしろ寒くて寒くてコタツから出たくない。あと、灯油の匂いが手につくのもイヤだなぁと思いましてね、我ながらワガママだとは思ったんですけども、コタツの向かいに座っている旦那にお願いしてみたんですよ。

「ねぇ、悪いんだけど、灯油ついできてくれない?」

「へいへい」

旦那はちょっと面倒くさそうに唇を尖らせたものの、すんなり立ち上がって、寒いベランダで給油してくれたんですね。

「はいよ、灯油いれてきたよ」

「ありがとう」

ファンヒーターに点火し、暖かいお部屋の中でまたコタツを囲む私たち。すると、ふと、旦那が私の顔をまじまじと見て、こう言ったのです。

「……さっき、灯油つぐって言った?」

 

はい、「他県の方々には伝わりにくい広島(安芸)弁」シリーズの第3弾、今回のテーマは【つぐ】です。

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つぐ。漢字で書くと【注ぐ】。こう書いて【そそぐ】とも読むけど、今回のテーマはあくまでも【つぐ】のほう。

これね、ネットで調べたら、どうやら東日本などにおいては、この【つぐ】という用語は【お酒】を酒器にそそぐ際にしか使われていないようですね?ええっ?ほんまに?うそじゃろ?

「ちょ、ちょっと待ってよ、お茶は?【お茶】はさすがに【つぐ】じゃろ?」

「【お茶】も【いれる】だよ」

「うそぉ~~~ん……」

 

この【つぐ】という方言に関しては、かつてJタウンネットさんが【ご飯の盛り付け】の方言を調査してマップ化してくださっています。

j-town.net

そう、言うまでもなく、我々広島人は、【ご飯】も【つぐ】。それが当然でなかったことに、むしろ驚きを隠せない。おろおろ。ちなみに、生まれも育ちも長野県民の旦那は、やっぱり【ご飯】は【盛る】なんだけど、【よそる】もたまに使うらしい。

そういえば、このJタウンネットのマップを見ていて、ハッと気づいたことがあるんだけどさ、私の大好きな漫画でNHKのドラマにもなった『作りたい女と食べたい女』の中で、登場人物の「春日さん」が、定食屋の主人にご飯を勝手に少なめにされたことに対して「普通についでください」って主張するシーンがあるのね。このシーンは、ごくありふれた悪意なきジェンダーバイアスの一例を示す印象的なシーンなんだけどさ、いや、今ここでそれを議論したいわけじゃなくて!春日さんが!【つぐ】って!言った!

春日さんは、男尊女卑の強い封建的な実家に嫌気がさして上京してきたという設定なんだけど、作中では出身地は明らかではない(野本さんは仙台出身という設定)んだけど、この言い回しから察するに、瀬戸内海周辺ないし九州の出身なのかな?(よく見ると、春日さんの学生時代のお弁当に明太子らしきものが入っている……?)

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で、まぁ、ここまでは、ここまでだったらさ、うちの旦那にも、このブログをご覧になっている広島県民以外の方々にも、「まぁ、そういう言い回しの違いって、あるよね~。でもまぁ、なんとなくでも通じりゃいいじゃん?」って感じなんじゃないかって、そう思うんですよ。ほいじゃがのう、広島のもんはのう、こがぁなところで立ち止まったりはせんのんじゃ。まだまだ【つぐ】を何にでも使うちゃるんじゃけぇのぅ。

 

そう、冒頭に挙げた【灯油】ですよ。もちろん灯油だけじゃありませんよ、【ガソリン】だって【つぐ】んです。ですからね、広島市周辺のセルフでないガソリンスタンドで耳をそばだててごらんなさい、ほぅら、こんな声が聞こえてきますよ。

「レギュラー、満タン、ついで」

間違いないです。大袈裟じゃないです。絶対にこう言ってます。ほんまに広島市周辺の人(安芸の民)にとってガソリンは【つぐ】ものなんです。そう信じて生きてきたんです。就職して県外に出たとき、初めて知ったんです。えっ、ガソリンって、……【いれる】なの……?

 

いやいやいや、それでもまだ、ここまでは、ギリ、分かってもらえなくはないと信じている!だって、お酒もお茶もガソリンも「液体」だから、ちょっと違和感はあるけど、まだ皆さんの顔に微笑みは残っているものだと信じている。だがしかし、安芸の民は皆さんの予想を越えて、これ以上なおも【つぐ】のだった……!

 

それが何かと問われたら、【空気】!

あのね、自転車のタイヤとか、バレーボールとか、浮き輪とかをね、空気でぱんぱんに膨らませるでしょ。あの時に使う用具。そう、これ。何て呼ぶ?

空気入れ。ポンプ。……うん、そうね、そう呼ぶらしいね、全国では……。

ええ、もっちろん、広島ではこの用具のことを【空気つぎ】と呼びます!

「あんたの自転車のタイヤ、ちぃと凹んどるけぇ、ぼちぼち空気ついだほうがええよ。空気つぎ貸しちゃるけぇ、此処でついできんさい」

これは、広島市周辺の人々(安芸の民)にとっては、たいへんありふれた日常会話のひとつでございます!本当です!だって、だって、安芸の民は知らんのんじゃもん、全国的には、空気は【つぐ】ものじゃなくて【いれる】ものだってことを……。

ああ、目を瞑れば思い出す。我が母校の用務員室の入口に置いてあった「備品貸出簿」のことを。高校の備品ったって、生徒がわざわざ用務員室に借りにいくようなものは【空気つぎ】しかないわけですよ。ほいじゃけぇ、その貸出簿の貸与物品欄には、何ページにもわたって「〇年〇月〇日、〇年〇組、〇野〇夫、空気つぎ」というボールペン書きの文字がずらずらと並んでいたんですよ。誰ひとりとして【空気入れ】や【ポンプ】などとは書かなかった。じゃって、知らんかったんじゃもん、うちら安芸の国の高校生にとっては、ありゃあ【空気つぎ】ゆう名前なんじゃもん……。あれを使うて、自転車やらバレーボールやら浮き輪やらに、空気を【つぎ】よったんじゃもん……。

 

これに関してね、ついさっき、衝撃的なものを発見してしまったんですよ!

あの百均ショップ最大手のダイソー。そう、今やアジア、北米、中南米、中東、オセアニアを含む26の国と地域に海外事業を拡大し、海外に2296店舗を有するグローバル企業である、あの大創産業さんがですよ、以前、こんな名前の商品を出していたそうなんですね。

www.daiso-sangyo.co.jp

【空気つぎ式水鉄砲】という玩具。どうやらすぐに壊れてしまう欠陥商品だったらしく、上のリンク先は、公式サイトでお詫びとお知らせをしているページのようなんですが、今、ここで取り上げたいのは水鉄砲のことじゃない。その前についている【空気つぎ式】という言葉のほうだッッッ!

リンク先の写真を見れば分かるとおり、自転車のポンプによく似た形状の水鉄砲です。だったら、シリンダー型ポンプ式水鉄砲、とでも命名すればよかったじゃありませんか、ねぇ、そうでしょう?

しかし、大創産業の本社は広島県東広島市にあります。そうです、ダイソーさんはバリバリの安芸の民なのです……。だから、ついうっかり、っていうか極めてナチュラルにアレのことを【空気つぎ】って信じちゃってて、まさかそれが極めて狭い地域にしか通用しない方言だなんて思いもよらなくて、だから、……ほら、ね…………?

 


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