つれづれぶらぶら

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『世界のはしっこ、ちいさな教室』

今日は月の初めの1日。ということは映画が安く観られる「ファーストデー」。そして、何の予定も入っていない日曜日。うん、映画を観に行くっきゃないな、と思ったものの、近隣のシネコンのラインナップにはピンとくるものがない。どうしよう。

そういえば、先々月の8月1日のファーストデーにも映画を観に行ったっけな。そうだ、塩尻市の東座(あずまざ)だ!

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さっそく今日のラインナップを調べてみると、とても気になるタイトルの映画が上映されていました。それが『世界のはしっこ、ちいさな教室』(2021年:フランス映画:エミリー・テロン監督)です。さっそく観に行ってきました!


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hashikko-movie.com

この映画は、西アフリカ・ブルキナファソのティオカガラ村、南アジア・バングラデシュのスナムガンジ地区、ロシア連邦アムール州遊牧民キャンプという3つの辺境で、小さな子どもたちのために働く3人の女教師の姿を捉えたドキュメンタリー映画です。

 

ブルキナファソは、15歳以上の識字率が41.2%と世界最低ランク。新人教師は6年間の任期で各地の小学校に赴任することになっている。2児の母でもあるサンドリーヌの赴任地は、首都から600㎞も離れた辺境の村。電気も電話も水道も満足でなく、教室も吹きさらしの土の小屋。教師は新米のサンドリーヌただ1人、生徒は50人余り。しかも、この村では5つの言語が飛び交い、公用語のフランス語を理解できる子どもがほとんどいない。初日からの前途多難に、サンドリーヌは溜息をつく────。

 

シベリアの凍てつく雪原を、トナカイの橇でひた走る中年女性がいる。彼女は、遊牧民であるエヴェンキ族のキャンプを転々としながら、テントで移動教室を開いているスヴェトラーナ。彼女は、ロシア連邦の義務教育とともに、エヴェンキ族の伝統や言語、アイデンティティを継承しようとする。しかし大自然の中で生きる子どもたちを、勉強に集中させること自体がまず容易ではないのだ────。

 

モンスーンの影響で1年の半分が水没するバングラデシュ北部のスナムガンジ地区。ボートの上の学校で、子どもや女性の権利を守るために人道支援団体から派遣された22歳の若き教師・タスリマ。バングラデシュでは女性の結婚年齢は18歳以上と法律で定められているにもかかわらず、15歳未満の女子の約16%、18歳未満の51%が児童婚させられている。女子は高額の持参金と引き換えに結婚させられるのが常で、教育を受ける必要などないという風習に、若きタスリマは毅然と立ち向かう────。

 

都会の恵まれた環境で学校に通える子どもたちに対し、彼女たちが直面しているのはあまりにも過酷な環境。彼女たちを突き動かすのは、「子どもたちに広い世界を知ってほしい、自分たちで未来を切り開く力を身に着けてほしい」という強い想いだけ。女教師たちは子どもたちに親身になって寄り添い、子どもたちの意欲を引き出そうとします。

ブルキナファソの少年・イヴは言葉も計算もろくにできない落ちこぼれ。そんな自分が情けなくて、友達から離れてひとりポツンと座っています。そんなイヴにサンドリーヌは、自分自身も何度も間違えたが、そのつど先生が繰り返し教えてくれたのだと優しく語りかけます。その言葉に勇気を貰ったイヴは学習意欲を持ち、いつしか成績優秀な生徒として表彰されるまでに至ったのでした。

バングラデシュの女の子・ヤスミンは中学校に行きたい、そしていつかタスリマのように自立した女性になって家計を助けたいという夢を持ちます。しかし、母親からは女子に学業など不要だと猛反発を受けています。文房具を買う金もない、早く結婚させたいと主張するヤスミンの母親に、タスリマは果敢に反論し、ヤスミンの夢を必死で守ろうとします。懸命な勉強の甲斐あって、めでたく中学受験に合格したヤスミンは、中学校の制服を着た姿を母親に見せるのでした。

シベリアの少年たちは、スヴェトラーナが作ったエヴェンキ語の詩に興味を示さず、覚えようとしません。でもスヴェトラーナはへこたれません。ならば、自分たちでエヴェンキ語の詩を作ってみようと提案します。これには少年たちも面白がり、即興で一節ずつ詩を作っていきます。絵を描くことを楽しみ、トナカイと共に生きる少年たちに、スヴェトラーナは優しい視線を送りつつ、次のキャンプ地へと旅立っていくのでした。

 

この映画のテーマは、『ウィ、シェフ!』や『エンドロールのつづき』と同じもので、貧困や旧い風習による社会構造の歪みの中で子どもの自由が奪われている状況、そして、学ぶことによって子ども自身が未来を掴み取ろうとするさまを描いています。

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義務教育就学率99.96%の日本では「教育のありがたさ」について真剣に考える機会がほとんどありませんが、世界には教育を受けられない子どもたちが1億2100万人、教育を受けられずに読み書きができない非識学者は約7億7300万人(世界の15歳以上の7人に1人)もいるそうです。

しかし、思い返せば日本でも少し前まで、『この世界の片隅に』の遊女・リンさんのように貧困ゆえに学校に行けず、文字が読めないという人は実際に存在したわけです。教育が与えられることは決して当たり前ではなく、その社会が教育の必要性を強く認識し続けていないと、脆く失われてしまうかもしれないのですね。そして、社会に歪みが生じたときに、真っ先に犠牲になるのが子どもたちの人権なのです。私たちひとりひとりがそれを自覚していかなければ────、そんなことを考えさせてくれる素晴らしい映画でした。是非、機会があればご覧になってくださいね。