つれづれぶらぶら

楽しい楽しいお出かけしてきます。お土産話たくさん持って帰るね。しばしお待ちを!

「お嬢さんを僕にください」のその前に

早いもので、私と旦那の結婚生活も16年が経過しまして、ここまであっという間だったような、なんか色々あったような気もしますが、とりたてて大きな事件も事故もなく、仲良しヲタ友夫婦の関係を保っていられるのは幸せなことだなぁとしみじみ思うところです。

でも、今のこの幸せは決して自分たちのチカラだけで作り上げたものではなく、数えきれないほどのたくさんの人々のチカラに支えられてきたのだということに、感謝の気持ちでいっぱいです。

そんなわけで、今回の特別お題キャンペーンが「 #あの店員さんがすごい」だと知った時に、私の脳内の釜爺の引き出しがスゥッと開いて、あるおばちゃんの姿が脳裏をよぎったのでした。そうとも、うちの姉貴とあのおばちゃんの助けがなかったら、そもそも結婚すら危うかったかもしれないっていう話なんですよ。

 

というわけで、話は17年前に遡ります。

私と旦那とは、単なるチャット友達を含めると通算7年ぐらいの付き合いだったんですが、色々あって、やっぱ結婚しましょうという合意のもとに、では結婚に向けてのあれやこれやの手順を進めていきましょう、と。まぁ、何はともあれ、「お嬢さんを僕にください」っていうアレをやらんことには話が始まらん、ということで。

実際のところ、うちの両親は、この結婚にはやや反対の姿勢だったわけです。自分で言うのもなんですが溺愛されて育った末娘で、広島を出て遥か遠くの長野県に嫁いでいくのはなんだかなぁという気持ちもあったと思います。まぁ、それ以外にも仕事のキャリアのこととか色々ありましてね、親の立場から見たら勿体ないっていうところもあったんでしょう。当時は余計なお世話じゃと反発していましたが、今になって思うと、親が心配する気持ちも分からんでもないですね。

ま、そんなわけで、この「アレ」が重要な局面だということは双方自覚してたんです。身だしなみを整えて、うちの両親に好印象を与えて安心させねばならぬ。だがしかし、うちの旦那はまだまだ駆け出しの職人で、衣服を買うのはワークマン一択で、スーツなんて全く縁がなかったんですね。しかも、自由になるお金も潤沢にあるわけじゃないから、広島までの旅費と手土産代に加えてスーツ一式を買うとなると、ご予算的にかなり厳しい。うーん。どうしたもんか。

こんなときは、私ひとりでうんうん悩んでたって仕方ない。誰か軍師になってくれそうな人はいないか、と考えると、それはもう姉貴を置いて他にない。年の離れた実姉は元デパート勤務で紳士服の基本的な知識があることと、既婚者ゆえ「アレ」を既に経験済みであることから、うちの両親の攻略法も分かっているということで。さらに言うと姉貴には割と早い段階から結婚について相談していて、私の味方についてくれていたのでね。

姉貴に対して、両親に挨拶に来ることになったけど、何しろスーツ選びのセンスが旦那にも私にもないこと、予算がかなり限られていることなどの事情を説明してSOSを出したところ、それなら挨拶の前日に広島市内のショッピングセンター(いわゆる大型スーパー)でスーツ一式を見立ててあげるから連れておいで、ということになりました。

で、スーツ選び当日(すなわち挨拶の前日)。広島駅まで旦那を迎えに行き、その足で指定されたショッピングセンターの紳士服売り場へ。そこで姉貴と合流し、本日はお世話になりますという挨拶もそこそこに、さっそくスーツ選びが始まりました。

姉貴が、まず助っ人を手配。そこの紳士服売り場のベテランの販売員さんに声をかけ、実は妹の婚約者が明日うちの両親に結婚の挨拶をするんだけど……と簡単に事情を説明して、協力してもらうことにしました。

この販売員さんというのが、この紳士服売り場でもう何十年もお客様のスーツを選び続けてきたのよというオーラを放っている超ベテランのおばちゃんで、実際、このおばちゃんがすごかったんです……!!!

事情を理解し、旦那から予算額を聞くや否や、おばちゃんは自分の首に回していた巻尺をシュルッと手に取り、すごい速さで旦那の身体のあちこちを採寸し始めました。すると、うちの旦那は、全体的にずんぐりむっくりで、とりわけ肩から二の腕にかけての肉がぶ厚く、さらに撫で肩であることが分かりました。「うーん、そうなるとサイズ的には〇〇の〇〇しかないけど、在庫の種類があんまりないんよねぇ」なんて言いながら、広大な売り場のあちこちからそれに見合う上着を素早く集めてきて並べ、姉貴と「こっちじゃとフォーマル過ぎて硬いけん、結婚のご挨拶程度じゃったらこのへんかね」「ほうよね、そっちのほうが後々まで使い勝手が良さそうじゃね」なんて話し合っていました。旦那と私は会話に入れず、ただ成り行きを見守っているだけ。

で、スーツが決まって試着し、おばちゃんがズボンの裾に待ち針を打ちながら「裾上げはすぐにしたげるけぇ、買い物が終わったら食事でもして待ちよりんさい」なんて旦那に言い、それが終わると次はカッターシャツ選び。私はシンプルな白のシャツがいいんじゃないかと思っていたんですが、姉貴とおばちゃんに「新入社員の面接じゃないんじゃけん」と一言のもとに却下。姉貴とおばちゃんは旦那の前に何枚ものシャツを代わる代わるあてがい、うっすら青みがかった柔らかめの素材のものが印象が良いと決定。

続いてはネクタイ。さすがにネクタイぐらいは婚約者として私が決めようと思い、紺色の落ち着いた感じのネクタイをサッと差し出してみたのですが、これもまた「そんなんジジくさいわ」という短い一言で却下。うう。もう横から口を出すのはやめよう。あ、ちなみに当の旦那は、最初のスーツ選びの段階で既に「俺は多分、何も口出ししないほうがいいんだろうな」と、ずんぐりむっくり着せ替え人形となることを覚悟していたそうです(;^ω^)

その後も、デパガ&スパガのおばちゃんタッグは阿吽の呼吸であれこれチョイスを進め、ずんぐりむっくり着せ替え人形は黙ってその指示に従うだけ。「お兄さんこっち来んさい」と、おばちゃんに紳士靴売り場に連れていかれ、足のサイズを測って「これか、これか、これ」と提示された靴を履いてみたり、その間に姉貴がベルトとハンカチと靴下をショッピングカートに放り込んでいったりなんかして、気がついたらあっという間にスーツ選びが完了していたのでした!

ちなみにその間、私は売り場の端っこで甥っ子と「最近、学校で何のゲームが流行っとるん?」「遊戯王~」なんて会話をしておりましたとさ(^▽^;)ヤルコトナインダモン

お会計を済ませ、ショッピングセンターのフードコートで食事をし、本屋で甥っ子の欲しがっていた本を買ってやったりしている間に、ズボンの裾直しも無事に完了。お姉ちゃんホントにありがとう~~~~!!!助かったよ~~~~~!!!!

その晩は旦那は広島市内のホテルに泊まり、私は実家に戻って翌日の顔合わせの準備。翌日は兄貴が車で旦那を迎えに行ってくれて、全員揃っての顔合わせ。きちんと髪を整え、真新しいスーツ一式に身を包んだ旦那は、最初はちょっと緊張していたけど、きちんと結婚の挨拶をすることができて、うちの両親もさすがにもう心が決まっていたのか「どうぞよろしく」という感じで、和やかに終わったのでした。良かった良かった。

 

……ということを「 #あの店員さんがすごい」というお題を見ながら、しみじみと思い出していたわけなんです。

あの時のおばちゃんとうちの姉貴の決断の速さといったら、ホントに感動したもんね。おばちゃんは迷わない。曖昧なことは言わない。おべんちゃらも言わない。ダメなものはダメときっぱり言う。でも、ちゃんと正解を持ってくる。ご予算内にきっちり収めてくる。これぞプロ、これぞおばちゃんパワー。

あの時の販売員さん、本当にありがとうございました。あなたのプロの仕事のおかげで、無事に結婚することができて、可愛い一人息子にも恵まれて、今こんなに平穏に暮らしておりますよ。ありがとう。