つれづれぶらぶら

5月の反射炉ビヤ行きますよー!酔い蛍グループの皆さんにまた会えるかな?

ビール造りを見学してみた

今日は祝日。天皇陛下お誕生日おめでとうございます。

週の半ばの木曜日が休日だと嬉しいですね。昨日の晩、さーて明日は何をして過ごそうかな、なんて考えていると、息子が「明日は友達と遊ぶから昼飯いらない。マック行くんだ」と言う。もちろん、旦那には尋ねるまでもない、仕事に決まってる。

ほーん、そうなると私ひとりかぁ。じゃあ私もどっか食べ行こっと。やっぱビール飲みたいな。中央東線沿いでランチ営業しているビールパブはないかしら。なんてことを考えながら、ネット検索をしていたところ、「OUTSIDER BREWING」さんが運営するブルーパブ「Hops&Herbs」が甲府の商店街の中にあると知ったんですね。

outsiderbrewing.com

ブルーパブとは、醸造所が併設されているビールパブのこと。つまり、Hops&HerbsはOUTSIDER BREWINGさんの醸造所に併設されていて、作りたてのフレッシュなビールを頂くことができるということ。おっ。ええやんええやん。

しかも、OUTSIDER BREWINGさんのFacebookを覗いてみたところ、「2月23日~25日は11周年記念イベントを開催します!3種のAnniversary BEERに加え、23日と25日の昼間の時間帯には公開仕込みをします!クラフトビールがどのように作られているのか、普段なかなか見れない仕込み風景をお楽しみください!」と書いてあるではありませんか。うわー見たい見たい見たいッッッ!

 

そんなわけで、今朝、旦那と息子を送り出してから、私も鈍行列車に乗って甲府へ。甲府の商店街を歩くのは久しぶりだなぁ。『偶然と想像』をシアターセントラルBe館に観に来て以来かなぁ。あれっ、岡島百貨店が閉店してる、マジで?と思ったら、すぐ隣のココリの建物の中に移転するんですって。へー、甲府の街も変わっていくんだねぇ。

そんなふうに景色を眺めているうちに、到着しました。

建物の1階が醸造所で、2階がブルーパブになっているようです。

開店時刻の12時に到着すると、既に醸造所の中では準備が始まっていました。私が覗き込んでいると、振り返って気さくに「こんにちは!」と笑顔を向けてくれたのは、このブルワリーの醸造長・小林桃子さん。

クラフトビールの勉強をしています、初めて醸造を見学します、とご挨拶し、写真をブログに載せてもいいですか、とお尋ねしたところ、「いいですよ!むしろ載せちゃってください!」とのお返事を頂きましたので、ばんばん写真を載せてしまいましょう。

今日仕込むビールは「Bouquet Belgian WIT(ブーケ ベルジャンウィット)」というウィートエール(小麦ビール)です。原材料も展示してありました。エルダーフラワーやカモミールなどの甘く優しい香りがアクセントとなるビールのようです。

気温が上がらなくて少し肌寒かったので、上のパブで「牛すじと大根の塩煮込み」を買って、下に持って降りて、食べながら見学しました。とろとろに煮込んだ牛すじと、お出汁がしっかり芯まで浸み込んだ分厚い大根が絶品です。厚揚げと煮卵も入ってるよー。

ビール造りは、もっと大勢の人数でやるのかなと想像していたのですが、実際には小林さんお1人でやります。大きな抽出鍋に大量のひきわり麦芽を、どんどんどんどん入れていきます。今回使う麦芽は120キログラム、お湯は300リットルだそう(ごめんなさい、メモを取りそびれたので数字は間違っているかもしれません)。小林さんは写真で見てのとおり、細身の若い女性ですが、何食わぬ顔でひょいひょいと作業を進めていきます。

麦芽が全部鍋に入ったら、大きな櫂でしっかりと攪拌します。ここで小林さんから「やってみませんか?」と言われたので、ちょっとビビりながら鍋に向かいます。

鍋の中には、大量の麦のおかゆ(マッシュ)。小林さんが何食わぬ顔でぐるぐる混ぜていたから、私も真似をして……と思ったら、う、う、うおお、重い。なんだこれ、櫂がピクリとも動かないぞ。めちゃくちゃ重くてこりゃダメだー!ギブアップ!

どうやら腕の力だけではダメで、梃子の原理を利用しないと上手くいかないみたいですね。やっぱりプロはすごいや。攪拌が終わったら、小林さんは鍋の中にカルシウムの粉末を投入。なぜかというと、日本の水は軟水で、日本でよく飲まれているピルスナーには向いているんだけれども、今回作るビールには硬水のほうが向いている。そういうわけで、水質を調節するためにミネラルを追加するのだそうです。化学の世界だ。

 

その後は、60~65度ぐらいの温度で90分間ことこと煮ます。というわけで、作業はここでいったん休憩。見学者も小林さんたちスタッフさんも、上のパブに移動して飲食を楽しみます。

さあさあ、お楽しみのドリンクタイムだ。何にしようかなぁ。今日お目見えの3種のAnniversary BEERも気になるけど、定番ビールの飲み比べができるとのことだったので、そのうちの4種類を選んでみました。

左から、「HELLES BELLS(ヘレス ベルス)」、「BOUQUET BELGIAN WIT」、「THE COUNTIES PALE ALE(ザ カウンティーペールエール)」、「DRUNK MONK TRIPEL(ドランク マンク トリペル)」。ヘレスというのはラガービールの一種だそうです。お料理はカシューナッツとピザを頼みました。お酒に弱いんですと打ち明けると、お水も持ってきてくれました。

色も違えば味も全然違う。これがクラフトビールの面白いところですよね。

ヘレスはキリッとした感じで、我々が想像するビールの基本形といった感じ。ウィートエールはカモミールなどの優しい香りが心地よい。ペールエールはしっかり苦みもあってガツンと骨太の印象。トリペルはすっごくいい香りがして、まろやかでとっても美味しい!

すぐ近くのテーブルで小林さんたちスタッフさんが飲んだり写真撮影をしたりされていたので、トリペルめっちゃ美味しいです、と伝えたところ、山梨県産の桃の実から取れた酵母を使用しているんだとか。

酵母の話が出たところで、ラカンセア酵母について質問してみました。すると、こちらで作っているサワー(SOUR GRAPES)もラカンセア酵母で作っていますよとのこと。今日はタップには繋がっていないとのことですが、瓶はあるので、帰りに1本買って帰ることにします。

ラカンセア酵母はここ2~3年で日本に入ってきた酵母で、従来のケトルサワー方式だと麦汁に乳酸菌を加えて発酵させた後、煮沸して乳酸菌を殺菌するという手間がかかるのだけれど、ラカンセア酵母だとその手間がかからず、発酵樽の中でアルコールと乳酸を同時に作り出すことができるので、大幅に時間短縮になるのだとか。

ちなみに、ケトルサワー方式で投入する乳酸菌もけっこう高価なのだそうで、それを惜しむブルワーはヨーグルトを投入するんだとか。ただ、それだと品質にちょっと問題が出てしまうんですよねー、なんて面白い話も聞かせてもらったり。

それと、なぜサワーは冬場はあまり作られないの?という質問を投げかけてみたところ、やっぱり暑い時期のほうが好まれるからということと、乳酸菌発酵は比較的低めの温度で長時間発酵させなければならないので冬場は温度管理が難しいからということだそうです。なるほどねー。

 

隣の席で飲んでいる常連さんが、Anniversary BEERの「Cherry Boy」が桜餅の香りがして面白いよ!と勧めてくれました。えーっ、桜餅の香りのするビール?飲んでみたい!

「Cherry Boy」はとっても綺麗な黄金のエールです。

でも、ホントだ!グラスに鼻を近づけてみただけでも、ふわ~んと桜餅の香りがする!味わい自体はけっこう苦みもあってしっかりビールなんですが、でも飲んでいる間もずっと鼻に抜けていくのは桜餅の香り。なんで桜餅の香りがするかというと、桜餅に使われている塩漬けの桜の葉を漬け込んで作ったビールだからなんだそう。面白ーい!

どうやってビールのレシピを考えているんですか、と質問したところ、他社のビールを飲んでいるときに閃いたりするんだとか。まず、どういったビールにしたいかという完成形のイメージがまずあって、そこから逆算するような形でレシピを組み立てていくんだそうです。アドリブのようにあれこれ足してみたりすることもあるんですって。「ほとんどお料理みたいなものですよ」と小林さんは笑っておっしゃいました。でも、こうやって「ものづくり」に携わっている人というのはホントにカッコイイなぁ、と思います。今こうやって皆に飲まれているビールは、この人の頭と手で作り上げたものなんだ。すごいよなぁ。

 

そうこうしているうちに、作業再開です。再び1階に下りてみると、抽出鍋からは湯気がもうもうと上がり、水の流れる音がします。鍋の中の水分を、下に落としてはまた上から注ぐ作業です(ロータリング)。こうすることで、水分の中の濁りが沈殿した麦芽の滓などに漉し取られて、少しずつ透明に近づいていくのだそうです。

ちなみに、この最初から鍋の中にあった水分のことを「一番麦汁」と言います。一番麦汁を抜いた後、さらに上からお湯をかけて、麦芽の滓に残ったエキスを取ります。こちらを「二番麦汁」と言います。いわゆる「一番搾り」というのはこの一番麦汁だけを使ったビールということなのですね。

その一番麦汁を、ちょっぴり飲ませてもらいました。ほっかほかの麦汁の味は、果たして──────めっちゃ甘ーいッッッ!ものすっごく甘いんだけど!

麦芽の中のデンプンが、酵素の働きでしっかりと糖に変わった証拠です。この糖を酵母が食べてアルコールを作るんだもんね。そりゃ甘いはずですわな。甘酒のようなもったりとした懐かしい感じの甘さです。そういえば子どもの頃に「麦芽あめ」って食べたことがあったような気がするなぁ。

 

麦汁を抜いた後の麦芽の滓は、取り除いて袋に詰めます。これは豚の飼料となるそうです。ちなみに、豚はだいたい何でも喜んで食べますが、牛は意外とデリケート。群れの中の1頭の牛がいったん「この餌はイヤ」と判断したら、全部の牛がその後はまるっきり見向きもしなくなっちゃうのですって。意外と偏食家なのね、牛さん……。

麦汁は、その隣にある煮沸鍋に移され、その過程でホップなどを追加します。煮沸が終了すると今度は急速に冷やし、酵母が活動できる温度になったら奥にある発酵樽に移されます。この先の作業も気にはなるところですが、そろそろ帰りの列車の時刻になったので、小林さんにお礼を言って、────忘れずにサワービールも買って────、見学を終えました。

 

ビール造りの一部分の見学ではありましたが、でも実際にその現場を体験できたことは、すっごく勉強になりました!予想以上にたくさんのお話も聞けて、スタッフさんたちも皆さん朗らかで親切で、めちゃめちゃ面白かったです!

ところで、今回の見学は急きょ決めたものだったので、OUTSIDER BREWINGさんについてはほとんど知識のない状態でお邪魔したんですね。でも、なんとなくうっすらとどこかで聞いたような気がするなーっていう感覚があって、帰りの列車の中で調べてみました。すると、先代のOUTSIDER BREWINGの醸造長の丹羽智さんはブルワー業界のレジェンドと呼ばれる方で、数多くのブルワーを志す人々に研修をしていたのだとか。そんなわけで、全国にはOUTSIDER BREWINGでビール醸造を教わったというブルワーがたくさんいる(例えば、このブログではもうお馴染みのうちゅうブルーイングさんも)のだそうです。

uchubrewing.com

現在の醸造長である小林さんは、元々このブルーパブのアルバイトだったのが、そのレジェンドの下で醸造を手伝っているうちにその技術の全てを受け継ぎ、認められて醸造長を引き継ぐことになったのですって。うわー、ホントにカッコイイなぁ。

 

そんなわけで、とっても素敵な体験ができた祝日の1日となりました!私としては、甲府に遊びに行く目的がまたひとつ増えて、次はいつ行こうかなぁなんてもう気が逸っております!(笑)

公開仕込みは25日の昼にも行われます。クラフトビール造りに興味のある方は、ぜひ甲府に足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?