つれづれぶらぶら

旅行記はちょっとずつ仕上げていきます。お楽しみに~。

400円のパラダイス

コロナ禍に伴うあれこれが3~4か月続いたせいで、すっかり体重が元に戻ってしまった。

こないだまではダイエットも生活習慣の管理も上手くいってて、3月上旬あたりなんて「もうちょい頑張ったら産前の体重に戻れるんじゃない?それに毎日の寝つきも良くなったし!」って感じで、すこぶる快調だったというのに。

私の場合、通勤に伴う平日の1日当たりの歩数は9千~1万歩。それが在宅勤務と外出自粛でほぼゼロに。

さらに、毎日テレビから垂れ流される不安を煽るような報道(一部のワイドショーの報道姿勢は害悪だと思うよ)にちびちびと精神を削られ、それに加えて不気味な地震やら、身内の死と葬式も重なり、最近はまた寝つきも悪くなってきた。

気晴らししたくても野球もない。映画館にも行けない。ふと思い立って気軽に旅行に行くこともできない。なんとか自宅で楽しめるものを探してはきたが、閉塞感は消えるはずもなく。

そんでもって、何しろしんどかったのが、公共機関がのきなみ休館になってしまったことである。図書館など、ぎりぎりまで手を尽くして頑張ってくれた施設もあるけれども、今までどれだけ公共機関のお世話になっていたかと改めて感じた次第である。

その中で、私がとにかく早く再開してくれと祈っていたのが、市営温泉。

茅野市内には市営の日帰り温泉が6施設あり、茅野市民なら1回400円(大人:なお茅野市民以外の利用は600円)で利用できる。天然温泉があり、施設によってはプールがあったり、八ヶ岳を一望できる露天風呂があったりする。

そして、サウナがある。

最近はサウナブームと言われ、芸能人や著名人もサウナ好きを公言する人が多いけれど、その火付け役となったのは、おそらくタナカカツキ氏の『サ道』だろう。去年ドラマ化もされたからご存知の方も多いんじゃないかしらん。

www.moae.jp

私もこれを読むまで、サウナの入り方がよく分かっていなかった。温泉施設にサウナ室があればとりあえず入ってはみるものの、やたら熱いばかりで不快、水風呂も意味不明で、とにかく何をどうやったらいいのかと疑問に思っていた。

ところが、サウナはきちんと理にかなった方法で利用すれば、極めてお手軽にリフレッシュできて、エステやマッサージよりも安上がりなものだと理解できたのだ。

詳しくは上のリンクに貼った『サ道』を読んでほしいのだが、サクッと説明すると、サウナの基本的な入り方は、サウナ室⇒水風呂⇒休憩のサイクルを何度か繰り返すものである。これにより、全身の血行を良くし、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスをととのえて、深いリラックス状態を作り出す。『サ道』が脚光を浴びたのは、このディープ・リラックスの状態を「ととのった」という言葉で表現したことにある。

ま、私はこの漫画のような「ととのった━━━━°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°━━━━!!」というトランス状態は未だ体験していないのだが、「別にととのわなくったってい~や~~、じゅ~ぶん気持ちい~から~~(*´ω`*)」というくらいにはリラックスできている。

人それぞれに入り方は違い、最初は試行錯誤で色々と試してみたものの、最近ようやく落ち着いた私なりの入り方は、「サウナ9~10分、水風呂45秒~1分、休憩は適当」を1セットとして、これを3~5セット繰り返すやり方である。それぞれの時間は厳密ではなく、室温や体調などに応じて臨機応変に変える。要するに自分の身体が「あ、気持ちいい、でもそろそろ次に行こう」って言ったら動く。

したがって、サウナ中は静かにしていたい。ただひたすら自分の身体の中から発するシグナルに感覚を研ぎ澄ませていたい。自分の身体とだけ対話していたい。サウナ室の中でじっと座っていると、足の裏やふくらはぎあたりから「ね、ここちょっと揉んで」という声が聞こえてくる。「ここ少し張ってるのよ」「そうそこ、押し流すようにさすってほしいの」と私の身体が口々に私を呼ぶ。その声にただ黙って従う。

私は汗が出にくい(冷え症・代謝が悪い・むくみやすい)体質なのだが、3セット目あたりで全身の毛穴から汗が噴き出してくる瞬間がある。これが気持ちいい。身体の中に溜まった水分と一緒に、澱んだ老廃物やら不快な感情なんかもドバっと排出されるような気がする。

熱くほてった身体を水風呂で急速に冷やす瞬間も、何とも言えず気持ちいいのだ。身体の表面を覆う熱の羽衣。「気持ちいい、けどこれ以上は冷え過ぎる」という身体の声を聞いたら上がる。タオルで身体を拭いて、他人様の邪魔にならない場所で少し休む。

高温と低温という2つの極端な環境下で張りつめていた交感神経の優位が、この休憩のタイミングで副交感神経にバトンタッチする。手足に心地よいしびれを感じ、ぐんにゃりと重力に引きずられる感覚がある。これは、布団に入って眠りに落ちる寸前の感覚によく似ている。おそらくは、このタイミングで「世界の真実が わかる」人が「ととのった」人ということになるのだろう。

まぁ、ととのう/ととのわないはどうでもいいのだ。私はこの休憩中に、自分の心臓の音に耳を澄ますのが好きだ。一時的に上がった心拍数が、少しずつゆっくりと落ち着いてくる。身体中が心拍に合わせてわずかに揺れている。どくん・どくん。

そういえば独身時代に、鹿児島県の山川の砂蒸し温泉に行ったことがあるが、身体中すっぽり熱い砂に覆われた時、「ぎゅっ・ぎゅっ」という大きな音に包まれて、何の音かと係員さんに尋ねたところ、あなた自身の血流音ですよ、と。あれには驚いたなぁ。

 

こんな感じで、私にとってサウナは定期的に行う身体と自律神経のメンテナンス場所なのだ。だからこそ、このコロナ禍で澱んだこの身体を早くリフレッシュしたい、サウナ行きたい、ああサウナ行きてェェェェと祈っていたのだった。

それで、念願かなって、ようやく7月10日から茅野市の公営温泉施設でもサウナ再開と相成ったのであった。もう矢も楯もたまらず、土曜と日曜、さっそく行ってきた。ただしサウナは入場制限を行うとのことで、本当はお気に入りの温泉があるのだが、そこのサウナは狭くて常連のおばさま方でいつも混み合っているので、サウナ室が比較的広くて空いている施設を選んで行ってきた。常連のおばさま方の絶えまないお喋りに悩まされることもなく、静かに自分の身体と向き合ってきた。おかげさまで今夜はよく寝られそうな気がする。うふふふ。やっぱサウナいいわぁ。来週も行こうっと。