つれづれぶらぶら

さんれんきゅーさんれんきゅーヤッホーヤッホー♪

3か月前の謎を解きに行く

富士見パノラマリゾート(入笠山)に行ってきた。今年4回目の訪問になる。

「8月から始まった諏訪6市町村・山梨県在住者向けゴンドラ乗車無料サービスがついに明日の15日で終了になるから」という理由もあるが、それ以外にも、私には「どうしても確かめておきたいこと」があったのだ。 

sister-akiho.hatenablog.com

話は、この最初の訪問時に遡る。

この時、入笠湿原から入笠花畑へ向かう道すがら、私は「変なもの」を目にしていたのだ。

樹々の枝に、変なものが引っかかっている………???

その変なものは、まるで、ぼろぼろになった薄緑色のレース布のようにも見えた。細い糸状のもじゃもじゃしたものが、立ち枯れた白樺の樹の枝から長く垂れ下がっている。どこかから飛んできた枯草か何かが、樹に引っかかってしまったのだろうか。それにしても見渡す限りあちこちの樹にまとわりついている。薄気味悪いなぁ。昼間だからいいが、これを夜に目にしたら幽霊か何かだと思うかもしれないなぁ。

何だろう?と疑問に思いながらも、その時の私は入笠花畑に咲き乱れる美しい草花のほうに心惹かれていて、その気味の悪いものにカメラを向けようという気にはならなかったのである。

 

ところが、ひょんなことから、その疑問の答えがもたらされたのだ。

図書館で、何気なく手に取った『地衣類のふしぎ コケでないコケとはどういうこと?道ばたで見かけるあの“植物”の正体とは? (サイエンス・アイ新書)』という本に、その「変なもの」の写真がまさしく載っていたのである(118ページ)。しかもその写真の撮影場所は【長野県、入笠山】とあるのだ。間違いない。あれだ。

その写真には「フジサルオガセ」という名前が記載されていた。へぇ、そんな名前だったんだ。いやしかし、まずはそもそも「地衣類」とは何なのかを知らねばなるまい。

地衣類は菌類のなかまで、緑藻やシアノバクテリア藍藻)と永続的な共生関係を維持しながら生活する。地衣類は共生の結果、“地衣体”と呼ばれる安定した植物体をつくって生きている。菌類は地衣体の中で安定した生活の場と水や無機物を藻類に与え、代わりに藻類が光合成でつくる栄養(炭水化物)を得ている。(同書10ページより引用)

へ、へぇ。植物じゃないのか。でも、まだイマイチよく分かってなくて、私の言葉じゃ上手く説明できそうもない。ここは「#おうちでかはく」の力をお借りしよう。


身近に観察できる地衣類を紹介!(植物研究部 大村嘉人)

そうそう。古いコンクリートの塀とかに奇妙なまだら模様がついてたりするよね。あれは何なんだろうって思ってたのよね。コケかな、シダかな、それとも単なる汚れか落書きかなって思っていたけど、地衣類の可能性もあるってことなのね(なお、変生体(粘菌)の可能性もある。そちらはただいま勉強中……)

で、皆の意外と近くにたくさん生息している「地衣類」には、大きさも形もさまざまなものがあって、例えば先日の『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』の番組で、イモトアヤコさんが長野県の北相木村で、崖に生えている高級食材「イワタケ」を採取して食べるというコーナーがあったが、あのキクラゲのような見た目のイワタケも地衣類の一種だそうだ。

www.ntv.co.jp

他にも、理科の実験などで誰もが一度は使ったことがある「リトマス試験紙」だが、これは地衣類のリトマスゴケやウメノキゴケから採った染料を使って作られるそうだ。

 

さて、あの変なものの正体が分かったところで、もう一度ちゃんと見ておきたいと思った私は、息子を連れて富士見パノラマリゾートに向かったのだ。

無料サービスの終了直前であり、天気も良く絶好のトレイルラン日和でもあったことから、たくさんのお客さんが詰めかけていた。マウンテンバイクを抱えた人、どこかの少年スポーツチームの団体、赤ちゃんを連れた家族連れ、熊よけの鈴をつけた登山家たち。

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山頂には既に雪が積もっていて驚いたが、これは人工雪。来るべきスキーシーズンの準備であろうか。

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入笠湿原には、もはや草はほとんど生えておらず、山焼きをしたのか、ところどころ黒く焦げている。その湿原の地面すれすれに、蜘蛛の糸が平たく広範囲に広がっていることを、うちの息子が発見した。歩いていると見えないが、確かに、かがみ込んで湿原の地面を斜め横から見てみると、地べたいっぱいに広がった極細の糸が光を浴びてキラキラ輝いている。こんなに低い位置に蜘蛛が糸を張るだなんて知らなかった。どのような蜘蛛がどのようにハンティングするのか、それもまた知りたいところではあるが、今日は手掛かりなし。記憶の隅に留めておこうっと。

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入笠湿原から花畑方面へと足を進める。天気が良くて気持ちがいい。

と、少し歩いた先に、ああ、あったあった。これだ。

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樹々の枝や幹からぶらーんと垂れ下がった巨大な糸くずのようなもの。

これがサルオガセ(猿尾枷)である。別名は「霧藻」。前に見た時は不気味だなぁと思っていたけれども、こうして正体が分かってしまえば恐ろしくもない。もうちょっと近付いて観察してみよう。

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ふわふわした見た目に反して、触ってみた感触は意外にもごわごわとして硬かった。

『地衣類のふしぎ』によると、「サルオガセがつくと木が枯れる」と言われているらしい。しかしながら、著者の柏谷博之先生によるとそれは誤りで、地衣類の菌糸は樹皮の表面近くに留まり内部まで侵食することはなく、樹から栄養分を吸い上げてはいないそうだ。

サルオガセのついている樹には、他にも複数の地衣類がくっついて、樹の幹に複雑な模様を描いていた。よくよく目を凝らしてみれば、それぞれの地衣類は面白い形をしている。 こうした、ふだん気にも留めないようなものに目を向けてみると、そこには美しい世界が広がっているのかもしれない。まだまだ知らない世界がたくさんあるんだなぁ。

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余談だが、エアープランツとして園芸品店などで売られている「スパニッシュモス」は、和名を「サルオガセモドキ」と言って、見た目はよく似ているが、こちらはパイナップル科ハナアナナス属の「植物」であり、地衣類のサルオガセとは全く別のものだとか。モドキには赤紫色の綺麗な花が咲くらしい。へぇー。