つれづれぶらぶら

あっ7月4日のベイスターズVSスワローズの試合、NHK-BSで「ゆるふか」やるんだ!わーい。ハマスタの裏側を観てみたーい。

私はいったいどこの言葉を喋っているのか

広島生まれで広島育ち、両親は出雲出身、独身時代は東京やら大阪やら岡山やら下関やらあちらこちらを転々とし、そして諏訪に嫁いできて17年。これが私のプロフィール。

こういうバックボーンを持っておりますと、たまーに困るのが、自分の使っている言葉が相手に通じないという状況に陥ることです。それが普段ナチュラルに使っている言葉であればあるほど、なぜ通じないのかが分からなくなる。「空気つぎ」なんてその最たるものです。広島の人はあれを方言じゃと認識しとらんのじゃけぇ。

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なんでこんな話をしているのかというと、今日もそういう事態に陥ったからです。

後輩のYくんに頼んでおいたちょっと面倒な仕事が、予想よりも早く、しかも綺麗な仕上がりで戻ってきたので、これは褒めてやらねばと思って、こう呼びかけたのです。

「うわぁ、Yくん、ありがとうね!こんなに早く完成させてくれるとは思わなかった!【手が切れる】わ~!」

「は、……はぁ、ありがとうござい……ます?」

困惑した表情のYくん。褒められているのだとは分かっている様子なんだけど、何か違和感があったのかしら。あれ?もしかして、もしかすると、【手が切れる】が、通じていないのか……?!

Yくんに聞いてみると、やっぱり「はぁ、書類で手を切ったのかと……」という返事。うわっ。待って待って待って。こちとら褒めたつもりだったのに、なんか物騒な意味に受け取られちゃってるゥ!

ここでいう【手が切れる】は【仕事が早くて有能だ】という意味なんですけど。

Yくん以外に聞いてみても、みんなポカーンとするばかり。ううっ、さては、この言い回しは広島弁なのか?と思って、あれこれネットで広島弁一覧などを検索してみるもヒットせず、国語辞書に掲載されている【縁が切れる】や【手を鋭利な物体などで傷つける】という意味しか出てきませんでした。もちろんウチの旦那にも通じなーい(´;ω;`)

こういうときは広島の人に聞いてみよう、とMachiko♫さんにメールを送って、「仕事が早くて有能なことを【手が切れる】って言うよね?」聞いてみると、あっさり「言うよ」と言い、さらに「旦那にも聞いてみたけど、普通に言うよー!だって」と。やっぱり!広島ではそういう意味で使うじゃん!ほいじゃあ、やっぱり広島弁なんじゃろか?

これね、おそらく【切れる】自体に【有能である】の意味があって、全国的にも【キレ者】とか【頭が切れる】とかの言い回しは普通に使われているところから考えたら、広島では、仕事をするんは【】じゃけぇという意味で、そういう言い回しになっちゃったんじゃないのかしら。だとすると、この言い回しは広島限定なのか、それとももっと広範囲に使われている言葉なのか、謎。うーん。

 

ま、こんな感じでですね、たまーに自分自身で、自分がいったいどこの言葉を喋っているのかが分からなくなってしまうことがあるんですね。

 

私がたまに使う言葉に【てのこもち】というのがあって、これを私は【手悪さ】とか【むやみにいじくり回す】という意味で使っているんだけれども、これもまったく通じたことがなくて。

以前、職場の慰安で諏訪湖のワカサギ釣りに行ったときに、まだ幼かった私の息子と同僚の息子さんが、あまりに釣れなくて退屈になって、たった1匹だけ釣れていたワカサギを執拗にいじくり回してボロボロにしてしまったことがあったんです。それで、私が「いいかげんにしなさい。そんなにワカサギを【てのこもち】にして可哀相に」と注意したんだけど、子どもたちはもちろんのこと同僚たちにも理解されなかったことがありましてね。そのときもネットで調べてみたんですが、お餅屋さんのサイトに繋がるばかりで、まったく答えにたどり着かず。

つい最近、それがようやく出雲弁であることが確認されました。要するに、私自身が両親から言われていた言葉だったのね、【てのこもち】。

www7a.biglobe.ne.jp

ちなみに、出雲弁といえば、松本清張の『砂の器』でも紹介されていましたが、中国地方5県の中で唯一のズーズー弁で、同じ島根県でも西部の石見地方とはまったく言葉が異なるという面白いお国言葉です。東北の言葉や鹿児島の言葉にも似て、どこかフランス語の響きにも近しいものを感じます。ドジョスクィマンジューゥ。

出雲の言葉は、響きが柔らかくて、言葉遣いも丁寧なので、耳にとても心地よいです。

手伝う】ことを、島根でも広島でも【てご(てごう)】と言いますが、手伝ってほしいときに広島弁だと「てごうしてくれぇや」とか「てごうしちゃってぇや」とか言うんですが、出雲弁だと「てごしてごせ」って言うんですよ。この「ごせ」(~してください)の響きが好き。しかも、さらに丁寧に言うと「ごしなはい」になって、もうねぇ、出雲の人におっとりとした口調で「あだ~ん、仕事が終わらんだけ~ん、てごしてごしなはい~」なんて言われちゃった日には、そりゃもう残業でも何でもお付き合いしますっ!って気分にさせられちゃいますよ、ええもう。

 

これに対して、喧嘩をするときには岡山弁の響きが良いですな。広島弁によく似ているけど、もうちょっと響きが硬めというか。広島弁が相手に絡んでいく感じの響きだとすると、岡山弁は相手を突き放す感じのイメージ。てなわけで、私は「もうコイツには関わりたくない。放っておこう」と思ったときには、最後通牒として【好きにせられ】という言い回しを使います。この【せられ】は岡山弁の【しなさい】。これが広島弁だと【せぇや】とか【しんちゃい】になっちゃって、攻撃的ではあるけれどちょっとばかし人懐っこい響きを帯びてしまう。ここはやっぱり【せられ】という硬い響きの言葉で冷たく突き放したいところ。あ、いや、別に岡山の人が冷たいと言っているのではないですよ。奉還町商店街は大好きです。久しぶりに金福菓子舗の「ピーチョコもなか」が食べたいです。ありゃあ旨いねぇ。

tabelog.com

 

そんでもって、諏訪に住んで17年、私もちょっとずつ諏訪の言葉を覚えてきました。諏訪の言葉は、お隣の山梨県の「甲州」の影響をかなり受けていて、甲州弁で有名な【持ちに行く】という言葉、これは【取りに行く】という意味なんですが、諏訪でも普通に使いますね。嫁いできた当初は何のことやら分からなくてキョトンとしたものです。

それ以外にも意味が分からなかった言葉がいくつかあって、その最たるものが、【よくじゃん】という言葉。これねぇ、諏訪のおジジ・おババたち、しょっちゅう言ってるのね。子どもがテストで良い点を取ったら「よくじゃん」と頭を撫で、親戚の誰それがまだ若いのに一軒家を建てたと聞くと「へぇ~っ、よくじゃん!」と感嘆し、悪天候の中でのスポーツ中継を見ながら「こんな雨の中、よくじゃん」と心配そうに呟く。なんなんだこれは。「よく頑張ったじゃん」とか「よくお金を貯め込んだじゃん」とか「よくもまぁこんな天気の中で試合をやるものじゃん」とか言いたいんだろうな、というニュアンスは通じるものの、その中身の部分がぜーんぶすっぽ抜けてて、頭と尻だけの【よくじゃん】。

なんなんだこれは、と思っていたら、甲州弁を紹介する本の中に「甲州のおばちゃんたちがよく使う言葉」として取り上げられていまして、ああ、なるほど、これは甲州から諏訪にかけてのご当地ことばであったかと納得したのでした。

でもね、使い慣れると便利よ、【よくじゃん】。誰かが(主に自慢話を)喋っているときに相槌として使うと本当に便利。年配の人しか使わない言葉かなと思ってたら、こないだ電車の中で若い人が「よくじゃないですかぁ~」と言っていて、ほほう、こういう使い方もあるのねと感心した次第なのでありました。よくじゃん。