つれづれぶらぶら

旅行記はちょっとずつ仕上げていきます。お楽しみに~。

『ドロステのはてで僕ら』

前記事からの続き。

sister-akiho.hatenablog.com

『リバー、流れないでよ』が終わった後で、いったんシアターを出て近所の酒屋さんにビールを買いに行き、30分後に再び映画館に戻って、お次は『ドロステのはてで僕ら』を鑑賞します。こちらも「2分」という短い時間を取り扱った、時間系SFコメディ映画です。まずはトレイラーをご覧くださいな。


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とある雑居ビルの2階。カトウがギターを弾こうとしていると、テレビの中から声がする。
見ると、画面には自分の顔。しかもこちらに向かって話しかけている。
「オレは、未来のオレ。2分後のオレ」。
どうやらカトウのいる2階の部屋と1階のカフェが、2分の時差で繋がっているらしい。
“タイムテレビ”の存在を知り、テレビとテレビを向かい合わせて、もっと先の未来を知ろうと躍起になるカフェの常連たち。さらに隣人の理容師メグミや5階に事務所を構えるヤミ金業者、カフェに訪れた謎の2人組も巻き込み、「時間的ハウリング」は加速度的に事態をややこしくしていく……。
襲いかかる未来、抗えない整合性。ドロステのはてで僕らは ――。

(公式サイトより転載)

これもまた「2分間の長回し」にこだわって作られた、非常にマニアックな手触りの映画でした。

ちょうど2分ずれて時間が流れている2つのテレビ。2階の部屋で「おい、おい」とテレビの中の自分に呼ばれたカトウは、「降りてこいよ」と誘われるままに1階に降りていき、ぴったり2分後に、1階のテレビに映る自分自身に「おい、おい」と声をかける。

この「2分のズレ」を、普通だったら編集でちょちょいっとやって仕上げるところ、そこはやっぱり劇団・ヨーロッパ企画。リアルタイムで、スタッフと俳優たちが0コンマ何秒単位の時間管理で、人力で作り上げてるというのが、もうスゴイ。っていうか、そこまで行くと変態の域って言ってもいいような気がしますな(;^_^A

『リバー、流れないでよ』では、各「2分」のターンの中で、それぞれの登場人物が違う行動を取っているのが愉快だったんですが、『ドロステのはてで僕ら』では「2分前」と「2分後」で、視点を変えて、まったく同じ芝居が2回(以上)繰り返されるわけです。しかしながら、これが全然飽きない。さっき観たシーンの裏側で何が起きていたのか、まったく同じ芝居だというのに意味が大きく違ってみえたりして、面白くてたまりません!これまたシアター内は爆笑に次ぐ爆笑の連続でした!

さて、このタイトルにもなっている「ドロステ」という聞きなれない言葉は何なのかと言うと、オランダのドロステ社のココアのパッケージに描かれていたイラストに端を発する、イメージの入れ子構造のことです。そう言うと難しく聞こえますが、皆さんもきっと一度は、合わせ鏡の中で、自分の姿がずーっと遥か向こうまで無数に存在しているのを楽しんだ経験があるのではないでしょうか?ja.wikipedia.org

この作品の中では、2台のテレビがそれぞれ2分ずつずれた時間を映し出しているということに気付いた常連客が、だったら、その2台のテレビを合わせ鏡のように配置したら、ドロステ効果で2分よりもっと先の未来が分かるんじゃないか、と気づいたことにより、物語はさらに複雑な方向へ向かっていきます。そして、未来が分かったら何がしたい?と考えたときに、やっぱりお金儲けだよな——と安易に行動してしまったのが運の尽き、とんでもない事件に巻き込まれてしまうのです。

いやー、これまたホントに脚本がスゴイ。これもまた公式パンフレットにシナリオが掲載されているのですが、話が進めば進むほどに構造がややこしくなってきます。登場人物の表記が、現在の「カトウ」、過去の「Pカトウ」、未来の「Fカトウ」だけならまだしも、次第に「PPカトウ」や「FFFFカトウ」など、時間軸がものすごいことに!

とはいえ、それぞれの時間軸で展開されるのはまったく同じお芝居なので、観ているぶんにはそれほどややこしくありません。むしろ、ああ、このタイミングで8分前のあの出来事が干渉してくるのか、と伏線をひとつひとつ解いていく感覚が面白くてたまりません。序盤のくっそしょーもないやりとりが、終盤の重要なカギになってきたりするので、注意して観ていてくださいね。

ツッコミどころはないわけじゃないんですけどね……、ま、とりあえずツッコミたいのは、あのケーブルの長さはいったい何十メートルあるんだろうってことかしら(;^ω^)

配信などでも観られるようです。下北沢へはちょっと行けないかな……という方も、どうぞ配信やDVDなどでお楽しみくださいね。