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ピースナイター2022

毎年、カープには「ピースナイター」と冠する試合があります。

www.hiroshima.coop

世界最初の原子爆弾の被災地である広島から、多くの人たちに向けて平和をアピールするイベントとして開催されています。もちろん試合自体は普通の試合ですけど、試合前やイニング間に平和を考える催し物が行われたりして、とても意義深い試合なのです。 

このピースナイターが始まるきっかけとなったのは、当時カープに所属していたある選手のブログでした。現在は東北楽天ゴールデンイーグルスのスカウト部で働いている、栗原健太さんです。現役時代はパワフルな長距離砲として、「コング」の愛称で親しまれていました。

栗原選手は山形県天童市の出身(実家は焼肉屋)ですが、カープでホームランガールをしていた女性と結婚し、彼女が被爆三世であること、そして自分たちの子供が被爆四世に当たることから、原爆のことを深く考えるようになりました。

それまで、カープは8月6日には遠征に出ており、広島で試合が行われることはありませんでした。栗原選手は、なぜカープの選手は原爆の日に広島で追悼行事に参加できないのだろうと不思議に思い、それを自身のブログにしたためていました。

カープ原爆の日に遠征に出ていた理由は、多くの市民にとって、原爆の日は亡くなった人々の鎮魂の日であり、静かに故人を偲びたいという思いがあったからです。以前の広島市民球場平和記念公園原爆ドームの真正面に建っていましたから、多くの人々が静かに追悼しているその前で野球に熱狂するのは不謹慎だと思われたのでしょう。

しかし、オーナーは栗原選手の気持ちを知り、8月6日に広島で試合ができるよう日程を調整してくれました。そして、その試合を鎮魂の日にふさわしい内容にすべく、多くの人々が話し合って、鳴り物応援を自粛したり、平和について考える内容を盛り込むなどの工夫をしました。それが現在のピースナイターの形となったのです。

初めて8月6日に広島で試合を行った栗原選手は、試合後にこんなブログをしたためました。

ameblo.jp

 

2014年7月30日のピースナイターでは、バリントン投手が8勝目を挙げ、菊池選手が逆転スリーランホームランを打つなどの大活躍をし、試合後には2人でヒーローインタビューのお立ち台に立ちました。

akinomono.jp

もちろん勝利も嬉しかったんですが、私の印象に強く残ったのは、その数日後、中国新聞に掲載された、ある子どもの作文でした。平和について考える小学生の作文コンクールか何かの優秀作で、内容ははっきりとは覚えていないんですが、この日のカープナイターのことを題材にしていました。

その作文の中で、「アメリカ人のバリントン投手と日本人の菊池選手が、並んでヒーローインタビューを受けました」というような一節があり、私の心を強く打ちました。この作文を書いた子どもの目には、あのお立ち台の映像が「平和の象徴」として映っていたわけです。原爆を落としたアメリカ人と、原爆を落とされた日本人。そのアメリカ人と日本人が、今、お立ち台の上で肩を組んで笑い合っている。ファンも嬉しそうに笑っている。「野球」のことで、勝ったの負けたのと騒いでいられる、この日常がどんなに幸せなことなのかを、この作文を書いた広島の小学生は理解しているのだ、と。

それこそがピースナイターを続ける意義じゃないでしょうか。被爆者の方々はもちろんとして、戦後に生まれた人々、戦争を知らない子どもたち、広島の人、広島以外の人、世界中の人々へ、野球というスポーツを通じて、平和を訴えかけていくことの重要性。

 

今日、2022年8月6日のマツダスタジアム、ピースナイターとして開催されたカープ対タイガースの試合。

カープは7連敗中で、今日も劣勢。9回裏が始まった時点で2対5。最近の貧打ぶりを見るに、こりゃあ今日も3点ビハインドは重すぎるのぅ、と諦めそうになりながら、カーチカチアプリの試合中継を見ていました。

すると、小園、會澤の連続ヒット、続く上本の内野安打の間に、相手のエラーが絡んで1点を返し、1アウトを挟んで、菊池の内野ゴロにまたもや相手のエラーが絡んで2者生還で同点に。この局面でバッターボックスに立ったのは、我らの期待の星、秋山翔吾ですよ!なんかもう打席の顔つきが「何かやってくれそう!」な感じでしたもんね。しかも球場の雰囲気も押せ押せムードで異様なボルテージ。

さぁ、お膳立ては揃った!お・ま・え・が・きめろ!あっきやまー!!(声に出さず心の中でチャンテを歌う)

その願いが通じたか、秋山の打球はライト前に鋭く飛んで落ち、2塁にいた菊池が快足を飛ばしてホームイン!カープ逆転!サヨナラ勝利、連敗ストップじゃー!!ヾ(*´∀`*)ノコイホー!!

試合後のヒーローインタビューはもちろん秋山選手。ピースナイターについて問われ、「広島の皆さんにとっては大切な日というか、忘れられない日だと思いますし、僕も外から来た人間ですけど、やはり野球が出来ていること、応援してもらえることを、これからも心に秘めて、皆さんと共にこの日を忘れずにやっていきたいなと思います」と答えました。その謙虚で誠実な応対ぶりに、ああ、やっぱり秋山選手、カープに来てくれてありがとおおおおおお……!!と嬉しゅうて嬉しゅうてなりませんですよ。

 

野球はいいね。白いボールを追いかけて、勝ったの負けたのって大騒ぎして、明日もまた野球の試合を楽しみに待つことができる。ラジオから聴こえるのは打球音と球場の歓声。ビール飲んでうどん食べて、ああ、なんて幸せなんだろう。

弾丸に追われる日々は嫌だ。爆撃音と人々の泣き叫ぶ声しか聞こえない日々はぞっとする。食べるものもなく、心を癒すものもなく。そしてそれは77年前のことではなく、今、この瞬間にも、世界のどこかで起きていること。

ああ、全ての爆弾が野球のボールになればいいのに。民族も国籍もなく、世界中の人々がスポーツで無心に楽しめる日がくればいいのに。そして試合後は肩を組んで、ともに笑い合える日がくればいいのに。そんなの無理だって?ありえないって?いいえ、それでも諦めない。平和への祈りは今日も明日も、ずっと続く。諦めない。諦めないよ。


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