つれづれぶらぶら

旅行記はちょっとずつ仕上げていきます。お楽しみに~。

冬の蓼科高原バラクライングリッシュガーデン

行きつけの市営温泉の掲示板に、蓼科高原にある英国式庭園「ラクライングリッシュガーデン」のポスターが貼ってあったんですよ。

barakura.co.jp

まぁ、そのポスターはいつも貼られているものなんですけど、ふと気がついたら、そのポスターの上からさらに小さな紙が重ねて貼ってあったんですね。その紙には「冬の長野県民入園無料デー」と書かれていて、会期が「12月10日まで」と。え、今日までじゃん。

 


あー、バラクラなぁー。もう10年ぐらい、行ってないなぁー。

 


私がバラクライングリッシュガーデンを頻繁に訪問していたのは、広島から茅野に嫁いできたばかりの16年前から、出産を経て、息子が保育園に通っていた間ぐらいまで。息子が小学校に上がって、私も本格的に仕事復帰するようになってからは、足が遠のいていたのでした。懐かしいなぁ。せっかくだから、久しぶりに寄ってみようかな。

茅野市街地からは、御座石神社交差点を蓼科高原方面に曲がり、県道192号線(通称:ビーナスライン)をひたすら走っていけば、車なら10分ちょっとで到着するという近さ。周囲は蓼科湖にもほど近い保養地で、夏になれば別荘族や観光客で賑わうあたり。

駐車場に車を停めて、受付で「ポスターを見て来たんですけど」と言うと、住所地を確認するものの提示を求められ(免許証を見せました)、確認が終わると丸いシールを左胸のあたりに貼るように指示されます。これが入園証の代わりになるわけです。指示されたとおりにシールを貼って、ゲートをくぐります。

わー、ホンマに久しぶりやなー。

園内にはクリスマスの飾り付けが随所に施されています。カフェの前には大きなクリスマスツリーがあり、フードコートには英国式のクリスマスケーキやジンジャークッキーなどが並んでいます。ガーデンセンターではクリスマスローズなどの苗木や、輸入品のおしゃれな植木鉢や庭園用の置物などのガーデニンググッズ、クリスマスカードやガーデニングに関する洋書などが販売されています。寄せ植えのワークショップやクリスマスコンサートなどを楽しむ人々もいます。なお、この物販エリアまでは入場料がかからないので、単にお買い物や飲食を楽しみたいだけの人はいつでも無料で入園できます。

物販エリアを抜けると、庭園への入口があります。ここからが(本来は)有料のエリアですね。その先には、蓼科高原の四季を映し出す英国式庭園が広がっています。

ぶっちゃけると、今の季節はこの庭園が最も地味な色調になる時期です。広葉樹はほとんどが落葉しきっていますし、花はクリスマスローズぐらいしか咲いていません。

このガーデンが最も華やぐのは、夏。色とりどりのオールドローズが咲き誇る6月頃から、色鮮やかなダリアが咲き乱れる9月頃までは、蓼科高原を訪れる別荘族や観光客でたいへん賑わいます。その鮮やかな季節が終わると、蓼科高原には寒々とした冬がやってきます。樹木は色を失い、やがて一面の雪景色に変わっていくのです。

そんな寂しいオフ・シーズンですが、まぁね、だからこそ地元民を無料招待してくれるわけでしょうし、私自身は案外この景色が気に入っていたりします。そういえば、16年前もオフ・シーズンによく来ていたっけなぁ。観光客がいない静かな庭園を、赤ちゃんを抱っこしながら、枯葉を踏んでゆっくりと歩くのが好きでした。

広島から茅野に嫁いできた頃は、どこかに行きたいと思っても土地勘がなく、親しい友達もおらず、ましてや妊娠中だったり赤ん坊を抱えていたりで、どこにでも自由に出歩けるというわけではなかったのですよ。そんな中、たまたまこの庭園を訪れ、草花を見ながらゆったりと歩いたり、のんびりと珈琲を飲んだりして、そういう時間が私にとっての癒しであったのでしょうね。年間パスポートを買っておけば何回でも入園できるし、自宅からは車ですぐに来ることができるし、赤ん坊がぐずったって広い庭園だから周囲の人目を気にする必要がないし。そういう意味で都合の良い場所であったのだと思います。だからこそ、観光客で賑わう夏場よりも、むしろ静かな秋冬のほうが好ましかったということでしょう。


さてと、無料招待して頂いたからには、多少のお金は落としていかねばね。カフェでティータイムとしゃれ込みましょう。ラム酒漬けのドライフルーツと飴がけのナッツがたっぷり入った「ヴィクトリアンケーキ」は私の大好きなケーキです。

あの頃も、このカフェにはちょくちょく来て、ケーキセットなどを楽しんでいました。あまりにも頻繁に来ていたので、しまいには調理人と仲良くなって、ビスコッティの割れて売り物にならなくなったのなんかを、こっそり息子にくれたこともあったなぁ。夏にはバラの香りのソフトクリームなども売られていて、保育園児の息子におねだりされて、一緒に花盛りの庭園を眺めながら食べたりもしました。懐かしいなぁ。

そんなことを思い出しながら、久しぶりのティータイムを楽しみました。ご馳走様でした。本日はお招きありがとうございました。また来ますね。

 

***

 

ここまで書いてて、ふいに思い出した「いかにも蓼科っぽい」エピソードをおまけにひとつ。

あれは、私が妊娠中の冬のこと。私がこのカフェで1人でお茶を飲んでいると、お上品なマダムが後から1人で入ってこられて、私のすぐ近くの席に腰を下ろしたんですね。しばらくは窓の外の冬景色を眺めたりしながら、それぞれ静かにお茶を飲んでいたんだけれども、ふと、そのマダムが私のほうを向いて、「蓼科、良いところねぇ」と声をかけてこられたんですね。

私が「ええ、そうですね」って返事をしたら、そのマダムは続いてこう仰ったんです。

「失敗しちゃったわ。先にナスを買ってしまったの。こっちにすればよかったわ。ねぇアナタ、このあたりって、ツボ、いくら?

「…………はい????」

なんなんだろうこのオバサン。なんでいきなり「茄子」やら「」やらの話なんか私をにしてくるんだろう。それとも私が茄子の壺漬けを売る漬物屋にでも見えたのかしら?

「……さぁ、よく分かりませんね」と答えたら、そのマダムは「ならいいわ」と微笑んで先にカフェを出ていかれたんだけれども、マダムがいなくなってしばらく経ってから、ようやくさっきの言葉の意味に思い当たったわけですよ。

「茄子」じゃなくて「那須」。「壺」じゃなくて「」か。

要するに、あのお金持ちのマダムは、栃木県那須市の高級別荘地を買った人で「蓼科の別荘地の坪単価はいくらなの」って私に尋ねていたわけだ。はあ。私が蓼科の別荘族のマダムに見えたわけだ。はあ。私が着ているマタニティーウェアが西松屋ブランドであることにお気づきにはならなかったのだな。はあ(笑)