このブログではこれまでに「YouTubeの再生リストをカセットテープ仕様で作ってみた」というコンセプトでいくつかのYouTubeの再生リストを作ってきましたが、今回はちょっと趣向を変えてお届けします。
というのも、普段作っている再生リストは、最近ハマってるアーティストや、何らかのテーマに沿った音楽で、原則として「動画」としての見応えがあるもの、そして「日本の音楽」に限定してチョイスしているんですね。さらに、恒例のややこしい2つのマイルール(①カセットテープ仕様で作る、②無料の公式MVしか使えない)があるという。けっこう縛りがあれこれ厳しいのねん。
でも、今回の再生リストは、YouTubeMusicで作業用BGMとして使用する場面を想定して、それらの縛りを撤廃します。そして、私の幼少期からこれまでの人生を彩り、影響を与えてくれた、本当に思い入れのある文句なしの「名曲」だけを揃えたガチの再生リストを作ろう、そういうコンセプトです。
再生リストのタイトルは「My ingredients Ⅰ」。直訳すると「私の成分」。
縛りを撤廃したとは言っても、違法アップロードされたものを公然と使うわけにはいきませんのでね、今回はYouTubeMusicが提供している「アートトラック」を主に使用しました。
動画はありません。洋楽も邦楽もワールドミュージックも、プログレもテクノもアニソンもごっちゃ混ぜで、皆さんからすれば、まぁなんと一貫性のない再生リストだと思われるかもしれませんが、私にとっては柱の傷にも似た成長記録そのものでございます。
とりあえず説明は後回しにして、今回のリストのラインナップをご覧くださいまし。
【My ingredients Ⅰ】総時間数57分04秒
yes「Roundabout」
Moving Hearts「Downtown」
四人囃子「一触即発」
XTC「Garden Of Earthly Delights」
Michael Nyman「Angelfish Decay」
Dimitri From Paris「Neko Mimi Mode」
dip in the pool「On Retinae (West Version) 」
りんけんバンド「ふなやれ」
戸田恵子「コスモスに君と」
うーん、一貫性がない。まぁ、私以外の人が見ればそうでしょうとも。
ただ、いくつかの曲については過去のブログでもちょいちょい言及しているので、もしかしたら覚えておいでの方もいらっしゃるかも。公式MVがないので過去の再生リストには入れられなかったんだけど、アートトラックを選択したことでようやく再生リストに入れることができた、めでたしめでたし、という話なのであります。
そんでね、この再生リストの内容について語ろうとすれば、それはもう1曲だけで記事が1こ書けてしまいそうなぐらい、本当に思い入れのある曲ばかりなんですよ。言うて、ごく平凡などっかのオバサンの自分語りなんぞ誰も読みたくはないでしょうから、ここではサラッと、うん、サラッとね、これらの選曲の背景にあるものをかいつまんでお話ししますね。
私には年の離れた兄がおりまして、私が物心ついた頃には既に兄の部屋に日がな一日入り浸って、ひたすら兄の名盤レコードコレクションを浴びるように聴いていたわけです。当時の兄は、ビートルズを先導とするブリティッシュロック&ポップにハマっておりまして、中でもとりわけジョージ・ハリスンがお気に入り。兄の証言によると、幼い私が最初に歌ったのはジョージのソロ「イット・イズ・ヒー(ジェイ・スリ・クリシュナ)」だったそうで(ちなみに今でもサビだけなら歌える)、回らぬ舌で可愛らしく「♪じぇーくぃしゅなー♪じぇーくぃしゅなーくぃしゅなー♪」と歌っていた秋歩ちゃん。う、うん、まぁ、なんつーか、濃ゆい音楽人生を送っておったことでございますな、我ながら。
ゆえに私の音楽的嗜好は、ひとえに兄の音楽的嗜好の劣化コピーであった、と言っても過言ではないわけですよ。兄がキング・クリムゾンを中心とするプログレッシヴ・ロックに夢中になると、私もそれを好きになる。なんせ子どもですから、曲のタイトルも時代背景もメッセージも何も分かりません。ただただ兄の部屋のスピーカーから流れてくる音を浴びるように吸収していたわけです。
そんなわけで、私の音楽的嗜好の一番下にある基盤は、ブリティッシュ・ロック&ポップ、その中でもとりわけ「ひねくれているもの」に惹かれがち、というものなのでした。兄がポール・マッカートニー方面に走っていかなかったことが、私にとっての最初の分岐点であったやもしれません。
以前にもお話ししましたが、その後、兄はケルト・ミュージック~ワールド・ミュージックの方向へと舵を切ります。このときは同時に、姉もアジア方面のワールド・ミュージックにハマっていたところで、我が家はアイルランドやらハンガリーやらインドネシアやらモンゴルやら、それはもうあちこちの国の音楽で溢れかえっておりました。また、その少し前から、志村けんが「ハイサイおじさん」を替え歌にした「変なおじさん」を流行らせたこともあって、日本の音楽シーンでも喜納昌吉やりんけんバンドを中心とした琉球音楽ブームがありました。アイルランドに目を向けると、エンヤの「オリノコ・フロウ」などが日本国内でも大ヒットしました。
ちなみにその後、あれほど「わしゃ洋楽ロックしか認めん!日本のロックは軟弱で好かん!」と豪語していた頑固者の兄は、その後、アルバイト先のイベントで早見優を目撃してしまったことで、いともあっけなくコロッと方向性を180度転換し、一気にアイドルの方向に駆け出していってしまったのでありました。おーいお兄ちゃーん、帰ってこーい。呆れる私をよそ目にして「”新田恵利音階“は実に味があってええのぉ」などと鼻の下を伸ばす始末。お兄ちゃん、それ音階じゃなくてただの音chiじゃないん………?
かくして、私は兄の部屋から離脱し、自分自身の手で好きな音楽を見つけ出そうとするのでした(その数年後に自分自身もアイドル好きになるとはこの時はつゆほども思っていなかった)。そんな私が、ある日、偶然手に取ったCD、それが佐久間正英さんの『創造の庭で/in a garden』でした。ここから私の音楽的嗜好は新たな分岐点を迎えることになります。
とは言っても、実はこの『in a garden』にも、兄の影響は残っています。というのも、その少し前に兄の部屋で「dip in the pool」の音楽を聴いていて、CDの帯の参加アーティストにその名があったことが手に取るきっかけになったからです。
その後、兄の助けも借りながら佐久間正英さんが手がけた音楽を追いかけ、その過程で、日本プログレ界の代表的バンド「四人囃子」や、テクノポップバンドの「プラスチックス」などを聴くようになりました(一触即発には佐久間さんは関わっていないけど、やっぱ四人囃子といったらこれでしょ)。
テクノミュージック自体は、兄や姉がYMOを聴いていたことや、日本のテクノポップ歌謡ブームもあって、まぁそれなりには親しみを感じていましたが、その当時はまだハマってはいませんでした。私のテクノポップへの傾斜は、そこからさらに時間を経て、ある日NHKから不意に流れ出したPerfumeの「ポリリズム」からです(今回は中田ヤスタカ関連の楽曲は入れていないんだけど、そっちはカセットテープ仕様の再生リストにさんざん組み込んじゃったから今回はスルーしました)。
ただし、テクノにハマる要因の、その隠された伏線として、ミニマルミュージックがあったかな、とは思うのです。私は映画音楽としてマイケル・ナイマンを知ることになったのだけれども、それよりも前に、姉の影響で現代音楽のいくつかのジャンルに少し接していたのですね。ごく細かいフレーズをしつこく繰り返し、その変奏で音楽を展開していくのが面白いなと思っていたのです。この経験が、中田ヤスタカや石野卓球(電気グルーヴ)へと私を導いたような気がします。まぁ、でも、それがなかったとしても、遅かれ早かれどこかの分岐点でテクノ方面に進むことにはなったのでしょうが(YMOはやはり偉大でしたよ、ねぇ……)。
私の背景をサラッと説明すると、こんな感じですかね。本当はこのそれぞれの行間に色んなアーティストや楽曲や映画やイベントが挟まってくるわけなんですが、それを言い出したら終わんなくなっちゃうしね。
あ、アニソンについては、前にさんざん語りつくしちゃったんで、今回は省略。
長くなったので今回はこのへんで。次回はおそらくまたカセットテープ仕様に戻ります。「My ingredients」シリーズのⅡ以降が作られるかどうかは現時点では未定ですが、まぁ、どうしよっかな。また気が向いたらってことで。
こんな感じの「一貫性のない」再生リストではありますが、もしお気に召したなら、ちょこっとでも結構ですので、聴いてみてやってくださいね~。